綾戸 智恵というシンガー

ジャズなんて全然知らない。ジャズボーカルのCDも今まで一枚しか買ったことが
ない。バックミュージックとして聞いているぶんには悪くないが、とりわけ好きと
いうわけじゃない。だからジャズシンガーのコンサートというのは初めてだった。

「ようこそ先輩」というNHKの番組で彼女がジャズを歌ったものを息子が見て
感動したという。「お母さん、知ってる?」と聞かれ、不思議な気がした。なぜなら私も、
ワイドショーで彼女を見たばかりだったから。
つまり、彼女は時の人だったのだ(やっぱ、ミーハー、汗)。
40歳をすぎてからのデビューで、ジャズでは驚異的なCD売り上げ。
天然関西弁トーク、大阪のおばちゃん!という人柄。ピアノを引き始めたとたん
引き込まれるハスキーなボーカル。
結婚、離婚、乳がん、さまざまな事があっただろうが、彼女から発せられるオーラは
なにか力強く優しい。

そういうわけで、大阪フェスティバルホールまで息子と二人で行ってみた。
満員の客、客層はヤング層以外って感じか。中学生の息子はちょっとめずらしい。
女性が圧倒的に多い。

カーテンが上がるとのっけから、
「まいどー!」
<爆笑>
「コンサートは初めが肝腎、よそではリラックスしてもらおと気ぃつかうんやけど
大阪やと緊張してもらわなあかんねぇ」
早くも綾戸ペースになり、話術の上手い事に感心する。話術じゃないのか、
これはもう関西人の特技というか、生まれ持ってのもの?(笑)

”子供たちも成人したぐらいの夫婦が何十年ぶりかでパーティに行くんですわ。
お化粧かて何十年もしたことないわ、口紅どこしもおたかいな、
あ、かびはえてんのとちゃうか、ぼきっ、あ、折れてしもうたわ。
きれいだよ、ちえ、ありがと、キアヌ。”

まるで吉本の舞台でも見てるような一人舞台(見た事ないけど)。

”帰ってきたら疲れて大いびきをかいて眠ってしまうお父チャン。
でも、夢の中で、照れくさくて言えなかった言葉を言ってるんですね。”
you are a wonderful woman♪

歌詞は英語で意味なんて分からないのに、なぜか心に染みてくる。

笑わせて泣かせて、いつまでも彼女の歌を聴いていたい。この時間がずっと
続く事を願ってしまう。そういうコンサートだった。
「藤山寛美に似てるって言う人がいるんですわ。」というと、客席から
「ミヤコ蝶々!」という声がかかった。
確かに分かる!
寛美も蝶々さんも生で見た事ないけれど、きっとこういう感じなんだね。
芸を見てるのか、その人を見てるのか、良く分からないけど
すべてをひっくるめて全部を見ていたい、聴いていたい、接していたい。
そういう芸人なんだと思った。

”お母ちゃん、なんで僕お母チャンの子なん?
ホイットニーヒューストンの方が似てるで。
なんでやろねえ。お母ちゃんにもわからへん。
お母ちゃんにわかるんは、ずぅっとずぅっと歩き続けてきたから
くじけんと歩いてきたからイサ(息子さんの名前)に出会えたって
ことだけやね”

舞台中央のグランドピアノをひき続け歌い続ける。
小柄な体からは想像もできないほどパワー溢れる声がでる。
アンコールではゴスペルで「オー・ハッピイ・デー」「レットイットビー」
と続き、最後は弾き語りで「夜空のムコウ」


ふぅぅ、、心の栄養ドリンク、飲ませてもらいました。


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