昼と夜の長さ


秋になるとなんとなく気が重いような、気が滅入るような、落ち込むことはないだろうか。
晴れやかな空をみても、しのぎやすくなった日差しの中に立っても
どこか悲しい気分になったり、はかない命のことを考えてしまったり、
自分の人生のむなしさを感じてしまったり。

高緯度のヨーロッパなどでは短日が原因の鬱症が早くから知られていたそうだ。
日本でも10年ほど前に東京女子医大の医者が調査をしていると新聞が取り上げていて、
どうやら季節性愁訴は女性に多いと言う。

昼と夜の長さ、これが生物に与える影響はとても大きいのだが、
心の状態まで影響されているのは気づきにくい。
人間はつい傲慢になってしまい、そんなものに体が
支配されていると意識しにくいからなのだろう。
しかし、昆虫などでは羽化や交尾はこの明暗のリズムに完全に同調している。

はじめて体内時計の話をきいたのは、大学の講義だ。
人工の明状態12時間と暗状態12時間の繰り返しの中でゴキブリを飼う。
ゴキブリは暗いときにごそごそ活動する。このゴキブリを真っ暗な箱に移すと
いつまで昼夜のリズムを保てるか。
昼夜の順序が逆の箱を二つ(AとB)用意してゴキブリBの体に、ゴキブリAの頭を
つなげるとどうなるか。

サーカディアンリズム、体内時計は光のサイクルに同調して24時間のリズムを
うっている。光は脳の一部で受容されている。

植物には脳はないが、光はすべての細胞のフィトクロームで信号に変換される。
植物に対する光の影響は動物よりも分かりやすい。
たぶん京都に限らずどこでも、夏休みに入る前に小学校から子供が朝顔の鉢を
持ってかえると思う。つぎつぎと花を咲かせたおたくもあるだろうが、葉ばかり茂って
いっこうに花が咲かなかったというおたくもあるだろう。

あさがおの花芽形成ホルモンは一定時間の暗状態がないと、分泌されない。
マンションの階段の踊り場や、玄関先に置かれた朝顔の鉢は、蛍光燈の灯りや
闇をちょくちょく破られることで暗状態が続かず、ホルモンができないのだ。
10月か11月号になると「趣味の園芸」では定番のポインセチアとシャコバサボテンも、
この手の奴だ。短日(暗状態が長いこと)を一定期間続けないと、ポインセチアの葉は
赤くならないし、シャコバサボテンのつぼみはつかない。

さて、もとに戻って、鬱状態であるが、この治療には光療法が知られている。
とっても眩しい強い光を数時間浴びると良いのだそうだ。
もちろん目はアイマスクで保護してる。
ということは、光を感じているのは目ではない。おでこの真ん中?
海外に行くと時差ぼけに悩む人が多いが、この症状も同様の強い光をあびる処置を受けると
体内時計はリセットされて、すぐに順応するそうだ。

強い光を浴びることはなかなかできないが、滅入った時はせいぜいおでこを太陽の方に
向けてみるのがいいのかもしれない。

私に限って言えば、みーはー気分は完璧に日長と関連している。
これまでのところ、熱があがるのはいつも冬から春にかけてである。
春先になると気持ちが高ぶるとは、とっても分かりやすい(苦笑)。
のぼせ上がりは長日性である。

夏の日の恋が秋になると醒めやすいというのは、意外と生物的真実なのかもしれない。

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