死の蔵書

ハードボイルドと古書好きとが不思議とマッチしている。
古書の掘り出し物をめぐる人々の欲望にもせつないものがある。
価値のわかる人にしか価値がないという物。たいていの
コレクターやマニアは、そういうものなのだが、特に本には
特別なはかなさがある。燃えてしまう、ぬれてしまう、
汚れてしまう。
謎解きの部分も悪くないが、古書界の男性群の面白さに比べ
女性像が全体にいまいち。
謎めいたリタも肩透かしだし、キャロルもピンキーもバーバラも
思ったより簡単に片付けられてしまった。。

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古書店めぐりは夫婦で

本好きの夫婦が誕生日のプレゼントのために本を
探したことから始まるとっても素敵な古書入門本。
古書や稀書についての知識を二人が得てゆく過程も
上質のユーモアと深い洞察と愛情あるやり取りの中で描かれる。
読んで絶対損のない、お勧め本。

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遠きに目ありて

やや昔の推理小説である。トリックも素直で人間関係もすれていない。
テレビリモコンがなかった時代がそんなに昔でもないはずなのに、
世の中が変わってしまった事を痛感した。
ちかごろのサイコキラーに慣れてしまった自分がいる。
社会をまっすぐに捉えているところがすがすがしく、また車椅子探偵に
寄せる思いが暖かい。

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狙った獣

1955年の作品なのだ。
何がうまいって、ピンとはりつめた緊張感と人間描写の巧みなこと。
それでいて文章は詩的で美しい。
時代を感じさせる部分もあり、それもそれなりに興味深い。

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旅に出ても古書店めぐり

上に書いてある「古書店めぐりは夫婦で」の続編。
これもとっても面白い。
古書についての蘊蓄に加えて博物館や図書館、古書店に働く人々の
活き活きした描写が楽しく、本を愛する人々の心に触れる部分でもある。
インターネット時代についても言及があり、納得できる意見である。

個人的にはストーカー(付け回す奴じゃなくて、ドラキュラの作者ね)の
くだりがとても興味深い。稀覯本収集博物館がこれほど面白いものだとは
この本を読むまで全然知らなかった。日本の博物館でもローゼンバッハ博物館の
ようにわくわくするエピソード満載の案内をしてくれる所があるのだろうか。


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