死の蔵書
ハードボイルドと古書好きとが不思議とマッチしている。 古書の掘り出し物をめぐる人々の欲望にもせつないものがある。 価値のわかる人にしか価値がないという物。たいていの コレクターやマニアは、そういうものなのだが、特に本には 特別なはかなさがある。燃えてしまう、ぬれてしまう、 汚れてしまう。 謎解きの部分も悪くないが、古書界の男性群の面白さに比べ 女性像が全体にいまいち。 謎めいたリタも肩透かしだし、キャロルもピンキーもバーバラも 思ったより簡単に片付けられてしまった。。 ==============================
古書店めぐりは夫婦で
本好きの夫婦が誕生日のプレゼントのために本を 探したことから始まるとっても素敵な古書入門本。 古書や稀書についての知識を二人が得てゆく過程も 上質のユーモアと深い洞察と愛情あるやり取りの中で描かれる。 読んで絶対損のない、お勧め本。 ==============================
遠きに目ありて
やや昔の推理小説である。トリックも素直で人間関係もすれていない。 テレビリモコンがなかった時代がそんなに昔でもないはずなのに、 世の中が変わってしまった事を痛感した。 ちかごろのサイコキラーに慣れてしまった自分がいる。 社会をまっすぐに捉えているところがすがすがしく、また車椅子探偵に 寄せる思いが暖かい。 ==============================
狙った獣
1955年の作品なのだ。 何がうまいって、ピンとはりつめた緊張感と人間描写の巧みなこと。 それでいて文章は詩的で美しい。 時代を感じさせる部分もあり、それもそれなりに興味深い。 ==============================
旅に出ても古書店めぐり
上に書いてある「古書店めぐりは夫婦で」の続編。 これもとっても面白い。 古書についての蘊蓄に加えて博物館や図書館、古書店に働く人々の 活き活きした描写が楽しく、本を愛する人々の心に触れる部分でもある。 インターネット時代についても言及があり、納得できる意見である。 個人的にはストーカー(付け回す奴じゃなくて、ドラキュラの作者ね)の くだりがとても興味深い。稀覯本収集博物館がこれほど面白いものだとは この本を読むまで全然知らなかった。日本の博物館でもローゼンバッハ博物館の ようにわくわくするエピソード満載の案内をしてくれる所があるのだろうか。
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