ビリー・グリーン Baby, Come Back Loveswept #661 あらすじ
経済学の新進教授デイビッドがキャサリンの大学卒業を待って結婚したのは
29歳のとき。ふたりは苦しくなるほど幸せ一杯で、、
中央アメリカでの国際会議に一週間の出張に出たのが32歳のとき。
10ヶ月になる息子ベンがいて、、

クーデター勃発、内戦、人質にとられた後の惨い監禁、暴行。
人質全員が死んだと報告されたのがそれから2年後。。
血まみれで顔がめちゃめちゃになった人質の死体の山の写真も報道される。
だが、彼は生き延び、惨く傷ついた顔は整形手術で別の顔になり、
さらに4年後、もはや惰性のように、暴力と隷従の状態が続く。
見張りの必要もないほど痛めつけられた状態の彼だったが、
這うようにして脱出した。。一目、妻と子供に会いたいと願いながら・・

こうしてデイビッドは顔も変わり、声帯をつぶされて擦れた声になり、
暴行のフラッシュバックに、夜な夜な起こる悪夢に苦しみながらも
故郷をめざす。。だが、ようやくたどりついた故郷で彼が見たものは、
事業を成功させ自信に満ちた美しい妻の姿だった。

頼りなげで守ってやりたくなるような6年前の妻の姿はそこには無い。

自分が不在のあいだに、必死に生き延びた妻もまた、大きく変わって
人間として女として成長していた・・
人から必要とされることを、妻や子から必要とされることをどれほど望んでいたか、
あの監禁のときに身も心もこれ以上傷つかないと思うほど傷ついたと思っていたが、
そうではなかった、
まだ自分を深く傷つけるものがあった。。。
立ち去ろうとする彼を呼び止めるヒロイン、ケイト。
そう、キャサリンのことをキャシーと呼んでいたデイビッドだったが、
彼女は4年前に事業を始めたとき、通称をケイトとしたのだった。
そのほうがしっかりした強い女性に聞こえるからと。

ちょうど家屋の修理などをしてくれる人を斡旋業者に頼んでいたため、
その応募者がやってきたと思い込んだケイト。
ケイトに、愛以上に憎しみすら感じてしまうデイビッドは
マッキンジー・スミスと名乗り、そのまま家の修繕をひき受ける。。

ケイトを傷つけてやりたい。
とりすましたサクセスウーマンの鎧をつけたケイトの心のすきまに
つきささるような言葉を遠慮なくぶつけ、動揺する姿を見ることに
喜びを感じる屈折した怒り。

だが、正義感あふれ、素直で快活な息子ベンが、すぐにマックと名乗る自分に
なつき、彼のすむガレージの2階に来ては色々な打ち明け話をしていく。
なんていい子に育っているんだ。。息子を誇らしく思うデイビッド。
愛情あふれる母親としてのケイトを認めざる得なくなる。
そして、仕事の疲労と不安を抱えながらも勇敢に生きているケイトを
求めている自分に気づく・・

不思議な電気のような感覚。胸をしめつけられる想い。
彼女の成長を受け入れ、再び恋におちる予感。
ベンとの交流も泣ける。
デイビッドに心をひらくベンは、母親をとても愛しているが
彼女のボーイフレンドたちが嫌いでしかたない。
デイビッドに、ボーイフレンド撃退法を相談するベン。

家族同然の家政婦に「わざと鈍いイマイチのボーイフレンドばかり
つくっているじゃないか」といわれているヒロインだが、
そう、デイビッドとの間にあった愛のようなものは二度と出会えない、
あんな愛をまた失う苦痛を考えただけで耐えられない、
ケイトはとても強く見えるけれど、失った愛をいつもいつも
思い返している傷つきやすい心を隠している。そして、
この、自分のことをほとんどしゃべらない、苦痛に満ちた瞳の
マックに惹かれてゆく。

ベンの野球の試合を応援にいったとき、
相手チームの嫌われ者が、マックの腕の傷跡についてベンにひどいことを言い、
けんかが始まる。
割って入り、ベンにけんかの理由をきくマック。
「ソニーが、マックの腕の傷のことをかたわものみたいだって言ったんだ。
だから僕はお前の顔はおおばかくそったれのようだって言ったんだ。」
「それでけんかが始まったのかい?」
「違うよ、ソニーが、一体どうやったらあんな傷がつくんだよ、って言ったんで
おおばかくそったれのオツムをちょんぎった時さ、って言ったら
殴ってきたんだ・・」
。。。
「ソニーのところに行って、『おおばかくそったれと言って悪かった』と
謝ってくるんだ」
「だって、マック・」
「だって、は、無しだ。
お前はこれをしなくてはいけない。なぜなら
お前は素晴らしい子で、強い子だからだ。
タフなこともなんとかやれるほど強い子だからだ。
ソニーが卑しい奴なのはわかってる。だが、そんなことは関係ないんだよ。
わかるかい?ベン
お前は、ソニーが悪い事をすることをやめさせることはできない。
お前ができるのは、ただ、自分は正しい事をする、だけなんだ。
分かるかい?」

ネクストバッターボックスで待っているとき、
バッターの手からバットが飛んできて、ベンの頭にぶつかってしまう。
病院にかけつけたケイトは、マックと診察を待つ間に、自分の思いに気づく。
自分がどれほど彼を慰めてあげたいと思っているか、
どれほど彼の抱えている傷を癒してやりたいと思っているか、
どれほど彼を必要としているか、、

美しく成長した妻、勇敢で正直な息子、
何も心配することはない。
自分の居場所はここには無いのだ。。。
野球の試合の翌日から、マックは、来た当初のような
距離を置いた、寄せ付けない態度をとりだし、出て行く日が近いことを
におわせる。。。


「どうしてここから出ていくの?なんで出て行かなくちゃならないの?」
「ベン、離れていても僕らはずっと親友だよ。
電話で話すこともできるし、手紙を出す事だってできるさ。」
「でもマック。。」
「しなければならないことなんだ。物事はいつも自分の願うようになるわけじゃない。
折り合いをつけて変わっていかなければならないこともあるんだよ。
ベン、永遠というのはお前が思っているほど長くないんだ」

新婚当時に埋めた「永遠の約束」のコルク栓を、かしの木のうろから取り出すマック。
なぜなの、なぜ彼はあの「うろ」を知っているの。。
なぜ、出て行くようなことを言うの。。
母屋の2階から裏庭を見ていたケイトは動揺する・・
昨晩交わした愛は、あれは、あれは、、
あなたはわたしを試したのね!わたしがどんな女になっているか、
確かめてから戻るか戻らないか決めようとしたのね!

ここからラスト8ページぐらいの爆発と癒しがいいんですよ〜。
直訳するには長すぎて、もー、ごめんなさい、読んでくれ、としか
いえないわ。
デイビッドの心の痛みとケイトによる癒しが、読者の胸にしみこんできて、
ベンの明るい笑い声に心地よく物語は終わるんです。

彼女の作品はいつも、ヒロインが愛を失うまいとがんばります。
去ろうとするヒーローに、いつもヒロインががんばるんです。
それがいいんですよねぇ。