クライム・ゼロ

本の感想はあとで述べるとして、今回意外な発見がありました。 googleでクライム・ゼロの検索をして、ふと立ち寄ったHPの 日記のような個所を読んでいたら、ややっ、なんとここはこの本の訳者のHPだわ! SF好きのお兄さんのHPだと思ってました(^^;; ふふ、クライム・ゼロに関して私もそう感じた事など書いてあり、なかなか 面白かったのですが、そのまま続けてHPを読んでいると、稲本の文字が!! へえぇ。。サッカー好きなんだぁ・・・ チャンピオンズリーグに初出場した時のことが書いてありました。 さて、クライム・ゼロですが、 これはなかなか面白いです。アイデアは昔から綿々と受け継がれたものなんですが、 現在の遺伝子工学と組み合わせて最後まで緊迫したエンターティメントに 仕上がってます。 ウイルスをベクターとして人の遺伝子を改変する計画、そこにうずまく陰謀、 迫り来る危機、芽生えた愛情、、、って話ですが、(^^;; 遺伝子ってけっこうルーズなんですよね。 色々な動物に外来性の遺伝子がいかに多いかを知るとショックを受けるんですが、 なぜだかはわからないけれど系統の離れた生き物が共通の遺伝子を 持っていたりするんですよね。 これはホリゾンタルトランスファー(水平移動)とよばれているんですが、原因はさっぱり。 で、何が言いたいかというと、進化ももしかしたらこういうトランスファーが 原因だったのかもしれないし、 遺伝子をうまく設計して、外からいれて改変させるのも夢じゃないし、 現在の先端医療は遺伝子治療の方向に進んでいる事も間違いないし、で かなり真にせまってはらはらするんです。 特にこの本がナイスなのは、全身の細胞が改変しなくても十分効果のある変化を 人に起こさせる点です。 つまりホルモンレベルを恒常的に高くしたり、低くしたりして、人間の性格を 変えてしまう。 表題のとおり、ヒトの攻撃性を司るホルモン群を強制的に調節して 犯罪(クライム)をゼロにする計画なのです。 (興奮してもアドレナリンが増えないって奴ね、いや、そもそも興奮することが無い?) たとえすべての細胞じゃなくても多くの細胞にウイルスが感染すればよい。 感染した細胞でホルモン産生遺伝子の活性調節が改変され、 すごく増えたり減ったりすればそれで十分な効果がでる。 おおっ!なるほど!と思わせる展開。 空気感染するウイルスを使えば、空港にしかけたウイルスはあっという間に 世界に広がる。 (余談だが、12モンキーズもこれも元をただせばジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの 素晴らしい短編「エイン博士の最後の飛行」だが、エイン博士・・をしのぐ美しさはないなぁ) 最後の最後まではらはらさせるが、わたしとしてはラストの部分は不満で 面白味が損なわれた気がしました。 更に言えばエピソードは全く不要に思えました。 余韻を残した終り方にした方が、、と思ったのですが、この作者は読めばわかるように 結構全部説明したがるタイプなのです。 でも図書館で借りて読んで損はないです。 買っても損はない、と言いたいところですが、ハードカバーだし。。 文庫になったら買っても損はないです(^^;;
イエスの遺伝子 この本が書かれた時点では近未来だったヒトゲノムの解読も、今では終了し、 ゲノムからヒトという種の情報を読み、さらに個人の情報もみつけようとしている現代です。 この本では、個人のゲノムから病気の確率や目の色、背格好まで類推できる解析プログラムが 登場しますが、そう遠い未来でもないでしょう。 この作者の上手いのは現実にのっとって、ちょっと先を面白く想像する点です。 天才遺伝学者のトムは余命一年もないとわかった我が子のために(娘の染色体を調べると ガン遺伝子として知られている欠陥を複数もっているのです)、自然治癒の遺伝子を 探そうとする。 手のつけられないほどの状況から自然治癒する人は現実社会でも確かに存在する。 そこには何か原因があるはずだ。奇跡とか神のみわざとかではない、科学的な原因を 求め、手かざしなど自然治癒力がある、といわれた人たちの遺伝子データを探し、 究極の自然治癒力をもったヒト、、、そう、イエスキリストの秘蹟から遺伝子を 抽出しようと試みる。 これにキリストの復活を信じる秘密結社が絡み物語はスリリングに進みます。 結末も面白いです。 究極の癒し遺伝子は、すべての人から病気をなくすとしたら、世界はどうなるのか。 人口があふれ貧困と混乱の世界になるのか。 イエスの遺伝子を手に入れた者の取る行動は。。 お勧めです。
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