カオス
とても面白かった。難しいので理解がちゃんと出来ていないと思うが、 それでもわくわくして読んだ。 でたらめさ、非周期性、予測不可能なものが現実の世界だ。 しかし、でたらめでありながら、そこには何かがある。 動物の個体数はほぼ!規則的な増減をたどるし、 株価の変動も以前の状態に似ているようで似ていない周期を示し、 雲や風もでたらめなようでいて、似ているようでもある。 DNA配列も周期があるようで周期性のない繰り返しだ。 こんな「でたらめという仮面をかぶった秩序」に挑戦した人々の話だ。 X next = rX( 1 - X ) この式には感動した。こんな単純な写像に カオスを見る事ができるなんて考えもしなかった。 この式のパラメータrを変えるとXの収斂する値が分岐し、 分岐は2、4、8、16と起こってゆくが、さらには 突然めちゃくちゃに崩れる。ところが、また突如安定した周期が戻る。 この式は、例えば池にすむ魚Xと魚の数に比例して減るえさの関係と とらえてもよい。 このような関係は自然のいたるところにある。 非線型性が奇妙な安定を生むというのはおもしろい。 人工物と自然物の違い、人は山や雲、樹木をみて、なぜ自然物だと感じるのか。 単なる円錐ではなく、単なる丸でなく、形があるようで無い、にもかかわらず それらを認識する。これらの特徴は、部分が全体と相似であることだ。 体を網の目のように流れる血管、大動脈から枝分かれした血管がまた 枝分かれして毛細血管へ、この形もまたどこまでいっても同じような形だ。 高校の生物で小腸のひだの図があったっけ。そのひだの表面もまたひだ、ひだの 細胞の表面も柔突起、誰でも直感的には、同じモチーフの繰り返しだなあって 思うけれど、ここから一歩先に進む事は容易ではない。 自然の自己相似性。 マンデンブロとフラクタルという概念。 そうだったのか、そういう見方があったのか、ここに思考する喜びがある。 そしてカオス的なふるまいをする写像が複素平面上でフラクタル図形を 形作ることがわかったとき、なにかとても不思議な世界が広がった気がした。 これの意味するところは一体何?複素数の反復写像がマンデンブロ集合になることと 自然の形が自己相似であることに、どういう繋がりがあるのだろう? 組織形成のプロセスで生物にとっての反復写像プロセスとは一体何だろう? 複雑な形態を作っているようでいて、けっこう生物は単純な規則の情報しか 使っていないのかもしれない。手前のアウトプットが次のインプットになる、 写像そのものだ。この繰り返しなのかもしれないとおもった。