夏草の記憶
あれから長い長い年月がたっているのに、みなの心にどうしても
消えないひっかかりを残している。それゆえに、人生がすこしずつ
ずれてしまった。どうしてこんな人生になってしまったのか。。。

ふとしたことが呼び覚ます記憶の断片。
意図せぬ言葉に思いもかけない反応。
皆、何を誤解して何を理解しているのか。。

倒述法というか、独白で過去と現在を行ったり来たりしながら
巧みに当時とその後の人生を混ぜて描く。
伏線の張り方もなかなかで、最後の真相に至る場面では
胸が苦しくのどがつかえたようになった。ああ、なんていうこと。。

原題のHeartbreak Hillという題もかなり良い。この丘の名前の由来と
物語のイメージが重なるのだ。記憶3部作という名前は日本が勝手に
つけたようだ。

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死の記憶

これもまた中年にさしかかった主人公が昔を思い出しながら
進行する話である。

ラストの救いがなかったら、とても読める本ではない。辛すぎる。

主人公が10歳の時、彼の父親は母、兄、姉を殺して失踪した。
以来その事に触れないように努めて考えないようにしてきたのだが、
「家族を殺した男たち」をテーマに本を執筆している女性の
インタビュウを受けることになり、彼は昔を振り返リ始める。
インタビュウを重ねるうちに次第と、事件の記憶というより
父親や母親の人生、家族にはらむ問題が明らかになっていき、
それは同時に自分の今の家族(妻と子がいる)や人生にも
重なってみえてくる。

この先残っている人生にどんな希望がある?
家族という名のばらばらな人間が息を詰めながら一つ屋根の下に暮らす。
昨日と同じ今日、今日と同じ明日。。。
自分を縛り付けているのは、家族なのか。。

緊張が次第に高まっていく。

予想とは異なる破局のあとに、思わぬ真相が。。。。
このラストの優しさがなかったらとても人には勧められない。
『中年の危機』を感じている人間は用心して読まないと・・

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