江戸 病草子


テレビドラマでのお侍さんものを見ていては感じられない、
江戸時代の姿がここにある。

農民の平均寿命が27歳だった時代。
こんなに低い寿命なのは、もっぱら乳幼児の死亡率が高いからで
10人のうち7-8人は生後数年でこの世を去ってしまう。
もっとも手厚い養育をされるだろう徳川家でさえ
5,60人の子をもうけても成人したのは10人以下という
時代である。

先ごろ秘境ツアーで邦人が惨殺される事件があったが、このころの
日本も流行り病でばたばたと人が死んでいくと、
害をおよぼしているのは誰だとうわさが広がりリンチにエスカレートした。

疱瘡が猛威をふるい、寄生虫の卵や宿主が野山や田んぼのそこここにいて、
栄養失調で餓死者が一つの寺だけで何万人も葬られた。

けっして江戸はユートピアではない。

この時代に日本を訪れた外国人の目からみた日本が、また興味深い。
彼らは、日本で梅毒が大変流行っていること、また、堕胎が多く
行われていることを驚いている。
どうやら日本人は享楽としての性にふける資質があるのかもしれない。
また中絶に罪悪感がないというのも日本的なのかもしれない。


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