ニューロマンサー
このSF小説の魅力をどう表現したらよいだろう? 出版されてから15年もたっているが、けっして古くなっていない世界像。 都合のよい銀河帝国も、魔法の剣も指輪も、ニュータイプも登場しないSF世界。 鉛色の空、臓器移植や神経接合と同義になった千葉の闇クリニック、 サイバースペース(電脳空間)デッキに皮膚電極を介してジャックインする サイバーカウボーイ、 テクノ犯罪社会に根をおろすヤクザ、 埋め込みマイクロプロセッサーやシリコンで武装するパンク野郎や用心棒、 ICE(侵入対抗電子機器)と破壊ウイルス、 ソニー、東芝、三菱、日本企業製品が今でもそうであるように ちまたにあふれている社会、 変化したい,消えたいと願うAI(人工知能)。 物語がおわったところでカタルシスがない。 「で、具合はどうかね。世の中はどう変わった。もう世界を支配してるのかい。神か・・・」 「世の中は変わってない。世の中は世の中」 人は変わってゆくのだろうか。 人工器官をつけ、遺伝子治療を受け、 チップとネットワークを介して他人の感覚を共有して、 サイバースペースに己の居所を見出しても、人は人、なのか。 今こうしている時も通信ネットとバイオテクノロジィが少しずつ進んでいる。 この先私たちはどう変わってゆくのか、どう変わらないのか・・ 作品の登場人物ではモリイは秀逸。 彼女見たさにギブソンの短編集を買ってしまった。