Jake's Way & Some Men's Dreams
ワイオミングのロング・リバー・リッジ、カッティングホース育成などを手がける牧場主ジェイク
入植した5代前の祖先が住んだキャビンが今でも母屋から少し離れた所に残っている。
しばらく腰を落ち着けて構想中の小説を完成させたいと考えている作家アマンダ

ジェイクには弟と妹2人がいる。なかでも一番若い妹リーは、人を惹きつけるきらめき、
陽気でくるくると変わるおしゃべり、お気に入りのベビーシスターだ。
リーが生まれたばかりのとき、父親が納屋から落ちて死に、5歳のとき体の弱かった母親が死んだ。
父親が死んだ当時12歳だったジェイクは、破産しかけていた牧場を牛専門から馬専門の
牧場へと変更して、昼も夜もなく働き続け、17歳で母親が死亡したあとは文字通り弟妹たちを
育て全員大学まですすませた。
長女ジェンは医者に、弟ゼクは考古学者に、そしてリーは今大学生で文学の道に進んでいる。

ジェイクはこの町からほとんど一歩も外に出た事が無い。
愛する弟妹たちの卒業式に出たのが最後に町の外にでたことだった。
なんていったってここを愛しているんだから、山を、牧場を愛しているんだから、と
町の人たちも「それがジェイクってもんさ」と当たり前のように考えている。
町の食堂で食べるものもいつも決まっているし、馬の売買がキャッシュで
契約は信頼の握手というやり方も、自分が育てたカッティングホースが優勝した試合を
見に行ったことがないことも、全部「それがジェイクさ」と言われている。

リーの大学で特別講義を行ったアマンダは、優秀で人懐こいリーと親しくなり、
彼女からワイオミングのキャビンを使うようにすすめられる。

雪が解け始め、ようやく春を感じられるようになったある日、ジェイクは
いつものように愛馬で牧場を回り、キャビンの前に人がいることに気づく。
「そんなとこで何をしてるんだ!」
「あら、あなたがジェイクね」

リーがあなたに手紙を書いたと言ったから連絡が取れているんだと思ったわ。

ジェイクはリーの頼みを聞き入れないわけにはいかなかったが、
この知性的で美しい女性が自分の世界を脅かすことを感じずにはいられなかった。
国中を旅していて、数々の賞を受賞したベストセラー作家アマンダ、
彼女は西部開拓の歴史と昔話をリサーチしているという。

自分が手にいれたくとも手に入れられなかった世界、
彼は自分の世界がちっぽけでつまらないものに感じてしまう自分が嫌だった。
だが、彼はどこにも行けないのだ。

7才のとき父親が彼を学校から連れ帰って以来、貧乏な牧場の仕事に明け暮れた。
父親が亡くなってからはひたすら働かざる得なかった。母親が亡くなったあとは
文字通り親代わりとなって弟妹たちを世話した。
弟妹たちだけは自分のような目にあわないようにと、学校を続けさせ
勉強を応援した。もちろん彼もようやく生活が落ち着いてきたころに
こっそりと初級の教科書を読んでみようとしたが、もはやひとりではどうにも理解できずに
あきらめたのだった。

弟妹たちはみな優れた能力を発揮し、町の外へ羽ばたいていき、
兄に遊びにきてくれと声をかけるが、ジェイクはいつも断る。
自分が実は町の名前もメニューも何ひとつ読めないことを知られるわけにはいかなかった。
弟妹たちは残念に思いながらも「いつものジェイクね」と苦笑する。
彼は自分がこの先どんどん孤独になり、どんどん人を追いやるように
なってしまうだろうと時に絶望にかられるのだった。

アマンダはジェイクの無私な労働、弟妹たちの犠牲となったことを苦に思わない
深い愛情、馬への慈しみに感動する一方、彼の瞳にときおり浮かぶ絶望の色に
心ゆさぶられる。
山深い美しい牧場に心を奪われ、ここに根をおろしたいと願うようになるが、
ジェイクはアマンダを遠ざけようとする。。。


額に汗する男、贅肉ひとつないがっしりした体、荒馬を屈服させる粘り強さ
ビンセント・ドノフリオとクリント・イーストウッドを足して2で割った感じ
(って一体・・・)

・・・

それから4年、ジェイクの話を元にした「Some Men's Dreams」で一躍有名になった脚本家リーは
女優としても忙しい日々をおくっている。
アパートメントの上の部屋には、重症小児科でのレジデントを終えようとしている姉、
小児科医ジェンが暮らしていた。彼女は物事に動じない落ち着きと優しさで、
患者からも看護婦からも頼りにされている。
人の痛みに敏感なジェンは常に「与える」人だった。

リーの舞台の初日パーティで家族が久しぶりに集まったとき、ジェンは担当の重症児が死亡し、
子供の父親が彼女をひどく責め、救えなかった無力感と疲労ですりきれたように
なっていた。パーティに遅れてきたジェンに、兄弟妹たちはいつものように
頼み事をする。彼らにとってジェンは「マム」だった。いつも母親のような存在だった。
てきぱきと実際的で、くじけず前向き、明るく優しい人柄からつい誰もが頼ってしまうジェン。

ジェンは実際物心がついた頃から病気がちの母の世話をし、家の手伝いをしてきた。
父の代わりに一家を支えている兄の重労働を知っていたから、バスルームの中でしか
泣かなかった。そして、母が亡くなった12才の時から、泣いたことがなかった。

重症小児科長として赴任してきたドクター・オニールは、5年前に妻を交通事故で亡くし
12歳の娘エリザベスと暮らしている。ジェンはジャック(Dr.オニール)の際立った仕事ぶりと
小児医療への献身に急速に心惹かれていく。一方ジャックはジェンが人には見せない脆さや
心の傷を感じ取り、彼女を深く理解するが、同時にはねつけようとする。
ジェンはエリザベスが摂食障害ではないかと懸念し、愛を拒絶された痛みを殺して
ジャックに進言する。だがエリザベスの問題には過去の事件とつながる暗い秘密があった。。

ジェンはヘレン・ハントやローラ・リネイの系統かな、西洋人になった田中裕子さんって感じが
一番グーなんだが。。。

・・・

とにかく、どちらの話も、ヒロイン、ヒーローの行動、動作、住む家、セリフ、すべてが
「よく出来ている!!!」
胸が痛くなるほど、小さなディテールに泣ける。
愛という感情の深さは「Some Men's Dreams」のほうが強烈で、おなかに響く衝撃でもある。
キャスリーン・コーベルのSIMは、並みの文庫本などよりもずっと完成されていて、
シリーズロマンスの宝だと思うんだが、翻訳されていないのでちょーーー残念なのだ。