SIM-996      The Long Hot Summer  by Wendy Rosnau
故郷ルイジアナ、バイユーを離れてもう15年。
貧乏のどん底だった子供時代、ハリポタのドラコ・マルフォイ3人組みたいな3人に
いつもしつこく意地悪され、何かあるとお前が犯人だと言われ、、父がひき逃げされ、
数年後には母が亡くなり、、まだ15才だったが、ジョニーはひとり町を出ていったのだった。

そして、曲がりなりにも建設労働者として暮らしていたところに、「土地を買いたい」
という妙な申し出が。
さとうきび畑があるにはあったが、とっくのとうに市に没収されていたと思っていた。
ところが、なんと15年もの間、隣の家に住む老婦人Maeが代わりに税金を払っていたのだった。

二度と戻らないつもりだった故郷の町に、彼は帰ってきた。土地を売っぱらう前に
Maeに理由をきかなくては。
ところが、喉を潤そうとちょっと立ち寄ったバーで、あの3人組のリーダー、ファレルに
出会う。ファレルは叩き割ったビール瓶を彼につきつけたので、思わずポケットから
ナイフを出すと、呼ばれた保安官に逮捕され、、刑務所送りとなってしまった。
6ヵ月後、仮出所が認められる。身元引受人はMaeだった。

という思わぬ出だし。
仮出所が物語の最初のシーンだった。季節は7月。暑いさかりである。

ちょうどその夏、Maeの孫の二コールが、祖母が足をくじいたことから長い休暇をとって
滞在していた。彼女は恋愛に傷つき、夜もあまり眠れず、画家として自立していたのだが
絵も描けなくなっていた。。

前科モノで問題児だった男が家の補修やら手伝いにやってくるですって?!
なにを考えてるのよ、おばあちゃん!!!

ジョニーはそんな悪い子じゃないのよ。
あのケンカだって、ファレルが先に手をだしたに決まっているよ。

彼は、Maeの家と昔住んでいた家の中間ぐらいにあるボートハウスに暮らすことになる。
悪ぶった口を利くが、屋根やポーチ、階段の補修、早朝からよく働き、
食事を一緒にとMaeが誘うと、とても窮屈そうに、シャイになる。
人から親切をされることに慣れていない。心配されることに慣れていない。
用心深い野生動物のようなのだ。だが、二コールにはからかいの言葉をかけ、
怒らせるのを楽しんでいるようだった。。


彼が昔住んでいた家は、家とはいえないほどのあばら家でベッドすら無い。
無人のはずの家にある夜、灯りが見えた。
不審に思い近づいていった彼は、フルスピードで走る車に轢かれそうになり
打撲を負うが、保安官は相手にもなってくれない。

二コールにちょっかいをだすファレル。 帰りが遅いので心配になって迎えにきた
ジョニー。  ファレルのキスをあなたのキスで消してくれと言うニコールに
手をだしちゃいかん、手をだしちゃいかん、と思っていたが、我慢の限界だぁ〜〜っ!

ジョニーを待ち伏せして、暴行をふるう3人組。
それを当たり前のように受け取る町の人々。誰にやられたか言おうとしないジョニー。
かっかと歯噛みするニコール。

そんなこんなと小競り合いは起きるのに、なぜか不思議とのんびりした感じがあり、
狭い南部の町の熱い夏がゆっくりとすぎてゆく。
ジョニーとニコールが子供のように秘密を打ち明けるシーンや、湿原でボートに乗るシーンなど
とても繊細で優しい。通常のHQとは違って、お金は無いし、学も教養もあまり無いヒーローだが
芯がまっすぐで少し古風で、信じてついていきたくなる男なんだ。

さてさて、アル中になっている雑貨店の昔の主人(ファレルの父親だ)やら
放火事件など、だんだん物語は核心に近づき、みなが口を閉ざす昔の事件が明らかに
なってゆく。。

バーナードだから嫌われても仕方無いと思ってしまうヒーローが、ヒロインを愛して
初めて前向きになる、希望、未来を求めるようになる。事件の古い根っこを正そうとする、
ふたりの将来を考えるようになる。

人間の性(さが)がもの悲しく哀れに感じる結末だが、温かい未来もそこにあり
全編にユーモアもちりばめられていて、セクシーな魅力もたっぷりある。
翻訳されたら嬉しいのだが・・