13階段

江戸川乱歩賞受賞作。総合的にはとてもよく出来ていると思う。
一気に読んでしまった。
ストーリーは殺人の罪で2年の服役後仮釈放となった青年と、自分の仕事に疑問をもち
退職しようと考えている刑務官(看守のこと、っていうか看守という職業は存在しないんだと
いうことを初めて知った)が、とある死刑囚の冤罪をはらすというもの。

死刑制度とその現実の執行の様子が大変しっかりと書かれていて(本当の事実なのか
どうかはわからないが)これがこの話の緊迫感を大変高めている。
ここがしっかりしているからこそ、人を殺してしまうことの意味、罪とは何か、
悔恨とは何か、加害者は、遺族はどう考えるか、など、伝わってくるものも多い。

だが、残念なことにメンタルに反してトリックなぞ解きの部分がちょっと甘い。
10年もたつのに素人まがいの2人が調査するだけで真犯人の証拠が見つかるなんて
どうかと思う。
あまりにも犯人にうってつけの人間がいる場合、捜査はおざなりになるってことなんだろうか。
ちょっと調べれば分かりそうなことすら調べないんだろうか。
だって主人公達が証拠を見つけるたびに、えっ?こんなこと誰が聞いた(見た)って
不審に感じるのに警察は調べなかったの?
と思うもの。

そういう甘さはあるけれど最後まで読者を引っ張る力はかなりあると思う。


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邪魔

まずこの題である。
なんともいやな題だ、いやな感じがする、、そう思って読み始めると、、
ああ、重苦しいものに絡みつかれ胸がだんだん苦しくなってくる。

細かな描写がとても上手い。
人物がすべて生きている。
怒りやいらだち、不安や当惑、ささやかな幸せの実感、、このリアリティさは
大変な筆力だと思う。

妻を7年前に亡くした刑事と、スーパーのレジのパートをしている主婦と、
ドロップアウト寸前の高3生。
とある会社で起きた放火事件を軸に3人の人生が交錯する。

大きな事件ではないし殺人事件でもない小さな事件のはずが、警察組織の問題や
会社と暴力団の関係など色々な思惑がからんで事態はややこしくなっていく。
そしてそんな組織の論理に、個人が飲みこまれて行く。
蟻地獄のわなのようにもがけばもがくほどはまっていく。

警察内部の人間関係など本当に味がある面白さでこれだけでも十分なのに、
主婦恭子の描写がさらに秀逸だ。
主婦の日常をこうまで上手く描くとは。。。おそれいった。

クライム小説と呼ばれているが、これは私には家庭を描いた小説に見えた。
家庭をなくした刑事、九野の喪失と再生。
家庭を失うまいとする恭子の孤独と自由。
家庭が無いような裕輔。

九野と恭子のストーリの完成度にくらべ裕輔は着陸がイマイチの気がする。
裕輔には何も見えないのだ。すべてが希薄だ。
先が見えない17歳の若者を描く事は難しすぎることなのだろう。でも
本当はもう少しここを描かなければいけないと思う。
これではあまりにてきとうだ。

残念なことにストーリ全体の終わり方もイマイチだ。
あまりにもとってつけたような説明調で終わってしまう。
あれほどまでに優れた描写力で生き生きとしたドラマを作ってきたのに
突然説明調になるのは残念。
裕輔のチンピラ友人や暴力団の大倉など、一体なに?って感じ。
ほんと大倉はさも何かありそうだったのに。
恭子の子供たちもどうなるのやら、、。

出だしと同じくらい作品の終りにも愛情を注いで欲しかったカナ。




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