SIM-674 「The Morning Side of Dawn」 ジャスティン・デイビス  ざっとあらすじ
SIM-402「Stevie's Chase」SIM-596「Left at the Altar」に続く作品で、
「Stevie。。」のヒーロー Chase がこの作品のヒロインの兄。
「Stevie。。」のヒロイン Stevie と「Left。。」のヒーロー Sean は姉弟の関係。
「Left。。」のラストにある結婚式で、この作品のヒーローとヒロインは
どうやら出会ったらしい。
「Left。。」のヒーローは元フットボール選手で片足が義足であり、この作品の
ヒーローの数少ない友人である。


スーパーモデルであるヒロインは、実はモデルの仕事に執着が無く、
現在の仕事をやめたいと考えていた。
また、最近、うす気味の悪い男が行く先々で現れたりして不安を感じ、
休業宣言をして、兄のもっているコテージに向かう。

鍵を預かっているSeanを探して、ヒーローの所に顔を出すところから物語は始まる。

ヒーローは12年前に列車に轢かれて大怪我、両足切断となり車椅子に乗っている。
大学野球界のスターだったが、あるとき線路に落ちた子供を助けようとして、
自身は大怪我を負ったのだった。。

見た目で何も出来ない人というように分類される屈辱や拒絶に何度も遭ってきたヒーローは
美しさの象徴のようなヒロインを拒絶しようとするが、ヒロインは
「人を見た目で判断しないで」と言う。

とても率直で頭の回転が速く、しかもユーモアを忘れないヒロインが素晴らしい。

ヒーローは、ごくごく少数の友人しかいないけれど、
その友人にさえ、心を打ち明けないほど超然とした孤独な人間である。
車椅子の設計・販売をしていて、車椅子マラソンでは数々の受賞をしている。
競技用に改良工夫した車椅子を自分で設計して、その仕事で成功している。


ヒロインの身辺で危険を感じる出来事がいくつか重なり、ヒーローはヒロインに
自分の家で寝泊りすることを提案せざる得なくなる。

ヒロインはヒーローの知性と勇気、めったに見せないが奥底にある優しさに
惹かれずにはいられない。その気持ちを素直にぶつけても、頑なに拒絶するヒーローだが、
ヒロインはへこたれない。

ヒーローは母親を早くに亡くし、何か誉められることをしなければ関心を抱いてもらえないという
愛情の薄い父親に育てられてきた。
メジャーリーグと入団契約をしたのを大喜びした父親は、両足切断となった事故のあと、
病院に会いにもこなかった。
見返りのない愛を知らずに育ち、人を気にかけること、親身になって心配することなど、
してもらった事がない彼は、愛を期待して失望することの辛さが身に沁みている。

ヒーローがトレーニング中に怪我をして携帯でヒロインに助けを請うところは
ひとつの山場で、そのあと続くメイキングラブシーンは胸が痛くなるほど切ない。

だが、ヒーローは朝にはヒロインを冷たく拒絶する。
すると、ヒロインは喝破する。

事故にあったから今の自分になったと言うのは都合のよい言い訳よ。
あなたが他人を拒絶するのは、障害者だからという理由ではないわ。
あなたは事故にあってもあわなくても今のあなたになったはずよ。

人の愛を期待しなければ、愛を返してもらえないからと傷つかずに済む。
そうやって心に壁を作って生きてきた彼だったが、ヒロインが差し出した愛は
心の壁に穴をあけ、それは少しずつ広がってゆく。

出ていったヒロインがなかなか戻ってこない。。
しまった、彼女を守らなくてはいけなかったのに。。
見覚えのある車が遠方によぎる。。

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本の題名はとても切ない。
彼はいつもとても早起きだ。
夜明け前に起きてしまう。
なぜか?
それは、毎晩、彼は朝を迎えずに済めばよいのに、と考えてるから。
昼間ならなんとか闘える気持ちも、夜には勝てそうに思えず、
こなごなになった夢や諦めた夢などが襲ってくる。
朝を迎えたくない。
そう思っていたヒーローが、夜明けのつぎに訪れる朝を
幸せな気持ちで迎えられるようになるまでの物語なのだ。

エピローグがこれまたとても良い。
最高にホットで幸せだ。
スプーンのように重なって眠るとき、なにげなく彼女は足を絡ませようとする。
最初、ヒーローは体を固くするんだけれど、今では普通に絡ませて眠る。
彼の体のすべてを探り愛撫するほどまでに信頼できる関係になっている。。