ひとを<嫌う>ということ

日経の書評で取り上げられて以来、読みたいと思っていた本だった。
私に限らず多くの人は「ひとから嫌われること」を恐れていると思う。
自分が嫌っている人からさえ、嫌われたくないって思ってる。
だから自分が実際かなりのひとのことをたいした理由もないのに嫌っているくせに
翻って自分がかなりの人からたいした理由もなく嫌われていると知ったら
気が動転してしまう。

でも、ひとを嫌うという感情は、ひとを好きになるという感情と同じように
自然なものなんだ。
好きな人の事を、「どうしてこんなに好きなんだろう。よく考えてご覧。ほら、
こんな欠点もあるし、こんなこともするし、、、」などとつらつら考えたところで
本人を前にしてどきどきする気持は変わらない。
これと同じように、
嫌いな人の事を「ほら、こんな長所もある、こんないいとこもある」って
いくら理性的に考えたところで、本人の姿を見かけただけで「いやだな」と
思い、同じ空気を吸いたくないとさえ思ってしまう。

好きになるのに理由は要らないっていうんだったら、嫌いも同じなんだ。
だから自分が誰かを理不尽に嫌うように、自分も誰かから理不尽に
嫌われる事はありえるし、生理的嫌悪感に対して理性的に対処したところで
嫌いなものは嫌いという所を堂々めぐりするだけだ。

だからといって著者は「嫌って嫌われていつも傷つけ合って生きよう!と言ってるわけでは
もちろん無い。
ひとを嫌うという感情のどうしようもない自然さを認識して
自分もそうやってひとから理不尽に嫌われることも受け入れて
嫌うー嫌われる人間関係の中で生きる人生もありだ、
と言っているのだ。

幸せな家族、幸せな人生・・
幸せって観念に縛られて苦しくなる時がある。
自分が不幸に思えて絶望する時がある。
だが濃い感情の中で生きている、この重みがあれば、それも人生か。

沢山の本が引用されている。
どれもこれも、ひとを嫌うということについて「どんぴしゃ!」な
文章で、ああ、こんなに昔から、西洋でも東洋でも、ひとを嫌うことが
書かれてたのかぁと安心した(笑)。



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