自然界にひそむ「5」の謎

なぜヒトデは5本足なんだろう。なぜ5弁の花が多い気がするんだろう。
どうして正五角形の極性がこの自然界にはたくさん見られるのだろう。
こういうことに興味をもった数学者が体当たりで考えた「説」である。
これがとてもおもしろい。

例えば細胞を一つの正多角形と考えて球の表面を覆ってみようとすると、
正多面体は4,6,8,12,20の5種類しかないが、どれもあまり
球に近い形にはならない。しかし準正多面体(2種類以上の正多角形で
つくる多面体)も考慮してみると、最もシンプルで球に近い形・・
準正32面体・・サッカーボールの模様のあの形が頭にひらめく。
中心に正五角形を置き、まわりに正六角形をならべた形。
一つの細胞が分裂して1,2,4,8,16,32、、あっ!
この数になったときもし細胞群が球の表面を覆うような形になるとすると、
そこには既に「5」という極性が存在する事になる。
そして、ヒトデやウニのような腔腸動物の卵割は胞胚期までこのような
シンプルな構造である。
たしかにここに「5」極性の元があるのかもしれない。そういう眼で
卵割を考えたことが一度もなかった私は目からうろこ!だ。

球でなくてもよい。正5角形の周囲を正六角形でかこむとドームのような
曲面を形成する。芽の成長点の細胞群がこのような構造を作るとき
がくや花弁が5枚という花になるのだろう。極性や勾配をうみだすには
まず構造ありきという概念。

こうした考えは遺伝子の発現と調節というレベルで組織構築やボディ
プランニングを考えてしまう生物学者にとって見過ごされがちなものである。
細胞の存在を物体というより場としてしか考えない傾向にあるからだ。

それにしても「なんでタコの足は8本なの?」とか「なんで指は5本なの?」
という疑問、そういう疑問に真正面から取り組む楽しさが
この本の一番の魅力だ。

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