2007年に読んだ本の感想など
・ジャン・バーク 「少年たちの沈黙」
新聞記者アイリーンシリーズ
1 グッドナイト、アイリーン
2 危険な匂い
3 神からの殺人予告
4 過去を呼び戻した天使
5 少年たちの沈黙
6 親族たちの嘘
アイリーンシリーズの最初の2冊「グッドナイト、アイリーン」「危険な匂い」を
読んだ時、この作家をそれほど好きになれないと思った。
ところが、次の「神からの殺人予告」を読んだら、少し気になりだし、
この本(シリーズ5番目だが、4より先に入手したので)を読んだ。
結果は、せっかく3番目で思い直そうとしたのに、やはり、わたしは
ジャン・バークとは相性が悪いと思った。
たった4冊しか読まずに彼女の物語というのは・・と偉そうに発言するのもなんだが、
初期のジャン・バークと限れば、彼女の作品は、とにかく
「口封じの皆殺し」 なんである。
読み出すと、あれよあれよという間に、関係者やら「悪い時に悪い場所にいた人」とかが
殺されてゆく。
サイコキラーではない犯人なのに、1冊でこれほど大量に人が死ぬのは珍しい気がするほどだ。
犯人も犯人なら、犯人を追う側も追う側だ。
良識あると思える人間はごく少数で、あとは力まかせの展開となる。
私から見ると、彼女の物語はいわゆるブッシュのアメリカ、世界の警察を自認するアメリカそのものに見える。
死、殺人に対する無神経ぶり。
ヒロイン、アイリーンは、確かに最初の頃よりマシになった。
相変わらず、世界は彼女のまわりを回っていて、警察・検察はアホばっかり、
他に賢い奴がいないのかよ、、なんで彼女だけが隠れ家や真相を発見するんだよ、、と
イライラさせられるが、そこは我慢するとしよう。
だが、シリーズ最初から苦々しく思っていた、無造作な短絡が本作でもまた大手を振った。
最初に手を出したのはオマエだろっ! それをよくも正義面して。。
少年たちの心に、癒すことのできない深い傷を負わせた当の本人の、あの鉄面皮ぶり。
あんたに正義なんて無いよ! 最後の最後まで、よくもそんなことができるもんだ、、
だが、物語は、この人間を、この精神構造をとことん糾弾しない。
「愚か者だらけで、殺され損の世の中なんだ、ごめんよ、運が悪かったね・・・
さぁさ、わたしたちは前を見て歩かなくちゃ。」
ぎゃーー!!! そんな話のために、わたしは最後までつきあっていたのか。
手前勝手な論理と頭の悪い人間に引っ掻き回されて終わるのか。
ちょうど先日読んだアイリーン・ドライアー「見えざる報復者」はこれとは
対照的な視点で、正義を装う「死の制裁」をとりあげていた。
「見えざる報復者」とは正反対のこの話を読むと、ジャン・バークってのは、
白人中産階級の典型なのかもしれない、と思う。
それなのに、わたしはこのシリーズの4番、6番を買った。
5番を読んで、こんなに腹がたったというのに、なぜか?
それはひとえに、フランクを読みたいからだ。
アイリーンの夫、フランクが、すべての嫌なことを補って余りあるからだ。
(あぁ、、フランク、、ほんま、良すぎだ・・・)
逆にいうと、フランクに 善と英知 を集めすぎたね。
もう一人くらい、フランク並の刑事がいないと、
このラス・ピエルナス警察はやばいんじゃないの?(爆)
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