岳物語
これはもう15年前の作品だから、今ごろ読むのは遅れてるけれど、 シイナ節に偏見を抱いていた私はこれまで椎名誠の本を読んだことがなかった。 「本の雑誌」は好きでよく見るけれど、小説は敬遠していた。 ふと子供の本棚にあったので手に取った。読書感想文用に上の息子が買ったのが そのままになっているのだった。 椎名さん一家の世界はとても近くてとても遠い。 保育園で自然のままに大きくなって行くさまは自分の子供たちを 見るかのようだ。我が家も父親を「おとう!」と呼んでいたが、今はより縮まって 「おと」になっている。私は「おかあ」と呼ばれるのが絶対に嫌だったので(笑) おかあさんだけれど、我が家の「おと」と息子達もバケツと網をもって 川へ魚を取りにいくのが休日の風景だった。 子供がいるということ、毎日○○事件が起こって笑えたり、自分と似ているところを 見て愕然となったり、優しい気持ちになったり、自分の親を思い出したり その日常は平凡な生活からはかけ離れた所にあるのだが、とてもなつかしい気分になる。 そうそう、子供をかいしてふと垣間見るよその家族、社会の風景。 いろいろな家庭がほんとよく分かるんだよね。 子供が幼い頃は子供の友達の両親も自分の交友範囲だったのに、 子供が大きくなるともう相手の親のことを知らない。 そんな風に子供は親から離れ自分の世界を作り大きくなっていく。 素直な気持ちになる本だった。 愛がいっぱい詰まった本だった。 一体我が家の息子はこの本をちゃんと読んだのだろうか。 どんなことを感じたんだろう。その時聞いてみたかったなぁ。
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