闇の貴族

前半のリアリティあふれる闇金融のしのぎあい。
倒産までの泥沼と欲のぶつかりあい。
欲をかかなかったらだまされずにすむのに、つい欲をかいてしまう愚かさ。
このあたりの描写をもっとしつこく描いたらよいのに、物語は
どんどん加速度をあげて進んで行く。
銀行を食い物にしてゆく様は、高杉良の「金融腐食列島」のほうが
生々しい。なんせこっちの方は住○銀行で実際に起こったことのようだし
銀行内部の腐敗はかなりのものであることは知られている。
作者の強みである裏社会の事にもっと集中したほうがより面白くなったと
思う。
と、思っていたら、後半は、話がでかくなった。
ちょっと、おいおい、、の世界になった。
この手の話はいつもいろいろな所で出てくる話で、私には本宮ひろしの漫画と
同じく、あまりおもしろくない。世界の動向はある集団に操られているとか、
エイズは国際ユダヤ資本をバックにした組織の開発したものだとか、
1歩間違えばオウム真理教の広告と同じになってしまう。

ただ、この後半をつまらないものにしなかったのは、
主人公たちの悲しみや孤独感が伝わったからだ。
変なプロパガンタにならなかったのは、人間ドラマとして鑑賞に堪えたからだ。
主人公はやはりあわれだ。北斗の拳のカイザーみたいなんだなあ。
分かる人には分かる?!
主人公をとりまく人々もまたあわれだが、どうもこのあたりは
リアリティが感じられない。主人公ほどキャラが立ってない。
次回作に期待だ。

でも、これだけの分厚い本を書き上げるパワー、読み出したら止まらない
面白さだし、すごいよ。

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血ぬられた神話

デビュウ作。
闇の貴族よりも脇役のキャラクターに魅力が少ないが、けっこうおもしろい。
というより、ちょうど読んでいる途中で、あの目黒不動での殺人の記事を
目にしたので、かなりぞっときた。目黒不動のばらばら殺人をご存知だろうか。
ニュースで見た時はそれほど気にもとめなかったのだが、週刊誌の記事で
このばらばら加減が半端ではないことを知った。男性性器とその周辺の肉が
最初に落ちていて、周辺を探すと、体の部分のみならず内臓もばらばらにされて
いたのだ。中国マフィアがからんだみせしめ殺人の可能性が高い。
この小説でも中国人の殺し屋が登場するのだが、彼もまた、死体を切り刻み、
内臓をばらばらにする。主人公を脅すために殺した相手の腎臓を送りつけたり
切り取った男性性器を死体の口につっこんでおいたり、「やれやれ、扇情的な、、」と
思っていたが、事実は小説より奇なりなのだった。

この話はミステリに入れたほうが良かった。真犯人はよく考えるともっと早くに
気づいてもよかった、と思ったが、作者にしてやられた。

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