木 なまえ かたち たくみ

彼女の文章は声に出して読みたくなる。
生きざま、人となりそのものがその文章に表れて
美しいというのはこういうことなんだろう、と読んでいる者を納得させる。
そりゃそうだ。そうでなくては。
美しいものを美しい言葉で話さない作家は信用ができない。

だからこそ、白州正子さんのファンは多いのだと思う。
本物だと誰もが感じるから。

凛としている。強い。明晰。



風の男 白洲 次郎(青柳 恵介著) 正子さんが書いた次郎の本もあるが、新刊コーナーで見つけて これを買った。 まさに一陣の風。 時代を吹き抜けた強烈な個性。 昭和史の裏側を見るにも面白い。 葬式無用、戒名無用で人生をかけぬけていったダンディな男。 しかし、朝吹登水子さんのエッセイを読んだり、荒俣氏の伝記物を読んだりすると いつも感じるのだが、並外れて豊かな生まれでないと、こういう人にはなれないよね。 明日の米を心配するような暮らしでは日本のため、人類のためにプリミティブな 正義感を持ち続けることなんて無理。 並外れて豊かな人が信念のために私財をなげうつことがあるけれど、貧しかった経験を もつものが大金を手にしても、私財をなげうつなんてことなんて滅多にないんだよね。 階級社会の悪い面も多いのだろうけれど、特権階級としての義務がこうして 社会倫理を支えるとしたら、これもまた大事なのかもしれない。 戻る