きまぐれ美術館
「芸術新潮」で連載されていたものだというが、正直言って、
芸術新潮を読んだことはなかったから、前評判など全く知らなかった。
では、一体なんでこの文庫本を手にとったのだろう。
不思議な予感としか言いようがない。
でも、本好きな人なら分かると思うが、目と目が合うとでも言える一瞬が
時としてある。

すきな画家を語り、絵を語り、そして生を語る。
絵のなかに生命の痕跡を見、描かずにはいられない情熱を見る。
本のなかで紹介されたどの絵も著者の語り口を聞いているうちに、とても
心に残る絵となる。
彼のコレクションした絵は、今仙台の宮城県美術館にあるという。
一度訪れてみたい。

著者の生き方は風狂の人ともいえる凄さがある。


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タクシー狂躁曲

これは映画『月はどっちに出ている』を見て以来、読みたいと思っていた。
あの映画よりももっときつい、在日朝鮮人の作者の生き様だ。
映画で使われたネタも端々にあるが、それよりももっと暗く疲弊している。
さまざまなタクシー客、運転手が在日とわかったとたん、態度を変える客。
日本への批判も痛烈だが、同朋に対しても決して目が曇っていない。
それが。また、彼の悲劇でもあるのだろう。


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山頭火

種田山頭火の句と、彼の生きて来し方をつづった本である。

自己嫌悪と自己憐憫をくりかえし、酒浸りな乞食旅をつづける山頭火。

何でこんなに淋しい風ふく
ふとめざめたらなみだがこぼれてゐた
酔えばあさましく酔はねばさびしく

こんなことを平気で詠う山頭火。

臆病で陽気、さびしがりやでストレスに弱く、素直で愛敬がある。

分け入っても分け入っても青い山
日ざかり泣いても笑ふても一人
もりもりもりあがる雲へ歩む

一人が淋しいくせに、一人で歩きたいと思ってしまう気持ち。
わがままだなあと思いながらも共感する人、多いんだろうな。
(わたしもその一人・・)


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