Tenderfoot Bride  by Cheryl St. John
定番の設定の西部ヒストリカルものですが、ここちよく優しい物語なの。
ひとえにヒーローが良い!
そして嫌なことがいっさい起こらない、いい人ばかりで、
最期までキス以上にならない、
今時珍しい(笑)ロマンスだけれど、胸きゅんなのよ。

西部開拓、腕と才知で自分の牧場をつくってゆく男、
荒っぽいけれど、けっして残虐じゃないし、無神経でもない、
でも、優しい言葉を口にだすとか、これまでやったこともない。
命令調で大声でしゃべり、扉をばんっ!と閉め、お世辞も言わない。
ほんま、定番の不器用な西部男ヒーローなんですが、
年齢さまざまな牧童たちから、ちゃんと敬われている。
怒りっぽいけれど、決して理不尽なことはしないと判っているから。

けっこう裕福な家庭で育って、12歳のとき母が死亡、
その後すぐに父が再婚したのが、どうしても許せなくて
しかも継母ともそりが合わず、父の事業(製粉だったかな)を
継がずに自分の力を試そうと15で家を出て、いまでは牧童10人を
雇う牧場を持っているの。

父は何年も前に死んだんだけど、遺産はかなりあって、
土地家屋は息子であるヒーローに譲られた、だが彼はそれを
処分せずに、そのまま継母が住むにまかせて、自分の牧場に帰ったの。
でも、継母が怪我をして体が不自由で一人暮らしができなくなると、
ぶっきらぼうに自分の牧場に呼び寄せたの。
でも、仲が良いわけじゃなくて、継母は彼のすべてが不満だし、
彼はうざくてたまらんと言うように、なるべく顔をあわせない。

大声で命令することには慣れているけれど、やさしい言葉を口に
することには慣れていない・・
せっかくの親切が相手に伝わらない人なのよね、ヒーローって。

ヒロインは妊娠4ヶ月の寡婦。
とても貧しい家で育っていて、学校も行かせてもらえなかったし
父親の暴力におびえる日々、しかもその父親は娘をわずかな
品物と交換で売ってしまう。売られた相手が夫、実は列車強盗を
して暮らすような奴で、ヒロインはまたしても暴力に痛めつけられる
日々で、夫が殺されて、初めて自由になり、職を求めて西部に
やってきたの。

がりがりでおどおどしていて、ねずみみたいな少女だと
ヒーローは最初思うし、こんなか弱いんじゃ、とても牧場の
賄いや洗濯、掃除はできないと門前払いをするんだけれど、
その日すぐにシカゴだったかに返すわけにもいかなくて
翌朝に自分が連れてゆくと言うの。

で、お約束なんだけど、翌朝、彼女は早くから起きて
汚れきった台所やなべ、釜を洗い、美味しい朝食を作るのよね。
牧童たちは、こんなおいしい物を食べたことがない、とか
とっても喜ぶ、また継母アビーっていうんだけど、アビーのために
ヒロインはお湯を運んであげて、髪を洗ってあげるのよ。
腕が肩まで上がらなくて、アビーはもう何日も髪を洗っていなかったの。
ヒーローが一時間後に出発だ、それまでに用意しとけ! と言った
その一時間をアビーのために使ったの。
でも、ヒーローはヒロインを馬車にのせて街へ向かうの。

ヒーローが考える重労働と、ヒロインが感じる大変さは違うのよね。
ヒロインにしてみると、柔らかいベッドで眠れるだけで贅沢だし、
殴られないだけでも幸せなの。
でも、自分にも出来るからやらせてくれ!とか言えないの、
そういう主張をこれまでの人生でしたことがないから。
街までは遠くて2泊くらい野宿をしなければならないんだけれど、
その最初の食事で、ヒーローは気付くの。ヒロインがパンとチーズを
半分しか食べずにハンカチにくるんでポケットにしまうのを。

この先、食べるものが無い状況に陥るということなんだろうか、
それほどに困っているってことなんだろうか、

ヒーローにしてみたら、こんな過酷な労働をさせるのは
ヒロインには向かないという、ちょっと優しい気持ちもあるわけ。
どん底の貧乏とかをヒーローは知らないのよね。
それと、なんでか分からないけれど、ヒロインが近くにいると
いらいらしてしまう、ってこともあって、だめだ!ここで働くわけには
いかん!と言ってしまったけれど、夜の間に罪悪感が重く胸にたまり、
翌朝、くそっ!家に戻るぞ! とぶっきらぼうにまた言って
馬車で帰るんだわ(笑)。

前言を撤回したことなど、滅多にないヒーローだから
牧童たちもびっくりしたり喜んだり。。

ヒロインはとても働き者で、料理もうまく、見る見るうちに
家の中は綺麗になってゆくし、食事は美味しいし、
牧童達にも好かれるようになるけれど、
彼女には秘密があった。

牧場の生活にも慣れ、今まで味わったこともないほどの
安心に包まれ、ヒロインはもはやねずみのような雰囲気では
なくなっていて、ある晩、ヒーローはヒロインのおなかがふっくらして
いることに気付くの。
さっと腹部に手を伸ばし、「おいっ!」と声を荒立てると、
ヒロインはヒーローが予想もしなかった行動に出る。
恐怖に近い顔つきで、逃げ出しちゃうのよ。
ヒーローには理解できなかったんだけど
ヒロインは父親や夫に痛めつけられてきた過去から
男性に恐怖心を抱いているわけね。
森の中にやみくもに入っていってしまい、ヒーローを慌てさせる。
「傷つけるつもりはないから出て来るんだ」
ヒロインは自分が子供じみた行動をとったことを恥かしく思う。
いつまでも隠れているわけにはいかない。
そして事情をうちあけるが、なぜ言わなかったんだ、とヒーローは
腹立たしく思う。
こんな辺境の地で、女手も老いた継母(出産経験なし)しかいないというのに、
妊婦だなんて。。
言えば雇ってもらえないと思ったから。。
今までどおりなんでもやる、いや、もっともっと働くから
追い出さないでくれ、というヒロインに、
ヒーローは心を痛める。
そんなことを心配してるのではないのに・・・
もっと牧童や自分に手助けを頼め!重いものを持つな!
翌日から水汲みや後片付けを持ち回りでやるように牧童たちに言うヒーロー。
(きゅ〜ん、態度は恐くてもほんま優しいんですねぇ・・)

あるときヒーローがヒロインに買い物リストを渡すの。
これは、それだけ彼女の働きに満足して信頼した、という
ヒーローの無言の承認なんだけれど、
ヒロインは苦境に陥る。なぜなら彼女は文字が読めないから。
ヒーローに知られたらここを追い出されるかもしれないと思い、
内緒で一番若い牧童にリストが読めるか、と訊くと、
買い物を手伝った上に牧童は読み書きを教えてあげると約束してくれる。
ここでもヒロインは「ヒーローには言わないでくれ」と牧童に頼むのよ。
彼はとてもいい男だよ、こんなことで文句を言うはずがない、と
牧童が言っても、彼女は能力のない者だと思われたら
追い出されてしまう、と言い続ける。

ヒーローは、牧童達と話しているときに明るい笑い声をあげるヒロインが
自分の前ではおどおどするのが嫌でしかたない。
だが、自分が牧童達の輪に近づくと、ぴたっと話がとまることは
以前からよくあり、自分の持つ「人をよせつけないぴりぴりした」雰囲気を
少しずつ意識するようになるのね。

あるとき、せっけん作りの途中で、ヒロインは熱いせっけん液を
腕にあびてしまい、ひどい火傷を負ったんだけど、誰にも言わないの。
ヒーローは、ヒロインが具合が悪そうなことに気付き、
腕の火傷を発見する。
なんで言わないんだ!なんでこんなままでほっておいたんだ!
乱暴な口調とは正反対に、やさしく薬を塗り、包帯をまき、世話をするヒーロー。
熱があるじゃないか、それなのに料理をしたりして・・
俺がいいというまで手を使わずに休むんだ。
家事は自分の仕事だと頑固に言いはるヒロインをなだめ、
そしてそっとキスをして、部屋まで連れてゆくと、
「あなたとベッドに入る気は無い」

不気味な沈黙のあと、激しいののしり文句と共にヒーローは言う。
いったい俺が何をしたというんだ!
俺は君にチャンスを与えた。
か細い君にとても無理な仕事だと思ったが、台所をまかせた。
それなのに君は
妊娠してることを隠して、怪我を隠して、そのうえ言うに事欠いて
関係を無理強いしてると言うのか!
いったい俺がなにをしたというんだ!
なにか嘘をついたか?きみを脅したか?傷つけたか?
俺は一緒にいて気持ちの良い人間じゃないかもしれないが
自分の欲しいものについては正直でフェアなつもりだ。

ごめんなさい・・・

君はキスを許した、もし嫌だったらつっぱねただろ?
あ、あれは、ただ、たまたま。。
たまたま?それじゃ、次にキスをするときは好きかどうか考えてくれ。
。。。
ヒロインの読み書きの勉強は随分進んでいた。
若い牧童が本をプレゼントしてくれ、一生懸命読んでいるところに
ヒーローが現れた。
実はヒーローはずっと気になっていたのよ。夜、こっそり出ていくヒロインのことを。
そして、真相を知ってホッとするとともに嫉妬していた自分に気がつく。

独立記念日のお祭りが近づき、ヒーローはヒロインのドレスの生地と
生まれてくる赤ん坊のために木綿の生地をたっぷり買ってくる。

くっくっく(^m^)
おまつりの日の運動会やダンス、、そしてその夜、全部全部
胸キュンなんですよねぇ〜。
で、女の赤ちゃんが生まれたり、ヒーローの姉がやってきたりと
いろいろあるけど、どんとはしょって、ラストのラスト、
ヒロインはヒーローのプロポーズを断って牧場から出ていくと言うの。
それは、ヒーローのような素晴らしい男に自分のような女はふさわしくないから。

でもでもでも、、ヒロインと赤ん坊を乗せた馬車が牧場をあとにして走り出すと・・

人生は今までいつも、そうするしか仕方ないという道しかなかった。
選択の余地なんて無いとずっと思ってた。自分が何をしたいのか、なんて
関係なかった。。
でも、、今はそうじゃないわ。
彼はプロポーズでさえも、無理強いしたり脅したりしなかった。
わたしに選択させてくれた。
わたしは自分の欲しいものを欲しいと勇気をだして言わなければ・・
彼にすべてを話さなくちゃ、
愛してるって言わなくちゃ。。

「止めてぇ〜〜!!!」
赤ん坊を同乗しているヒーローの姉にひとまず渡して、馬車を飛び降り、
はしるっ!はしるっ!はしるっ!

最後の最後まで、隠していた自分の過去をヒーローに打ち明ける。
これまで色々隠していた秘密は、自分から打ち明けたものって無かったんだけど、
この最後の秘密、一番忌まわしい「自分の結婚は父親に売られたからで、
夫はろくでなしで列車強盗をやっていた」という恥ずかしい過去を打ち明ける。
それでもあなたはわたしを愛してくれますか?


(^m^)