WALKING AFTER MIDNIGHT
あらすじ

ドラッグと売春のはびこる街の一角で、サンドラはホームレスの子供にシェルターを
提供している。寄付と自分自身の講演や会計士の収入で、シェルターを運営し続ける
彼女にはつらい過去があった。

のどを切られた娼婦の死体、ダークレッドのばら一輪が死体の胸に置かれる、
そんな事件が起こった。新聞で写真をみたサンドラは、それが前夜みかけた娼婦だと
気づき、警察を訪れる。

捕まえても捕まえても犯罪は減らない徒労感、蔓延するドラッグ、
冷めたコーヒーと充血した目の、疲れきった警部補トーマスはこのごろ
警官を続けていく意味がわからなくなっていた。
裕福な一族で育ち、警官をやめたところで何不自由ない暮らしができる彼が、
徹夜あけそうそう、娼婦殺しで呼び出され、署に帰ってきてからも5杯の
まずいコーヒーで調べ続けて、疲労の極地に達したかのとき、、
サンドラが訪れる。

通り一遍の質問にサンドラは言う、

「そう、さあさお帰りなさい、そして忘れなさいってわけね、
あなたの貴重な時間を一分わたしのために割いてくださってありがとうと
言うべきかしら?
あなたにとっては単なる娼婦でしょうよ、でもね、彼女にだって
名前はあるし、生活だってあるし、夢のひとつやふたりはあったのよ。
たとえ娼婦だろうと、獣のように喉を切られてこんな風に死んで
いいわけがないわ。あなたのような人たちにさっさと片付けられて
いいはずがないわ。」

震えがまだ残り、自分の短気をののしりながらドアをあけて出ていこうとすると、

「行くな!・・・・頼む。。もう一回やり直せるだろうか」

(うぎゃぎゃ、書き出したら止まらない、、これでは全然粗筋にならないぞ。
涙を呑んで、ずんずと飛ばさねば・・・)

トーマスはサンドラのファイルをみて、彼女の過去を知る。
彼女は捨て子で、里親にめぐまれず転々とし、16歳で自活しようと養家を家出した。
だが家出少女を狙った常套手段のわなにはまり、レイプとドラッグと折檻のすえ
19歳で逃げ出すまで売春をさせられていたのだった。
3年間のカウンセリングののち、ようやく人生をリスタートし、今27歳の彼女は
頼るところのない子供たちのためにシェルターを懸命に運営しているが、
娼婦だった過去が消えるわけではない。
トーマスは、彼女は事件の重要参考人にすぎないのだと自分に言い聞かせて、
彼女のことを忘れようとした。。だが。。

ふたりの物語に、幾人かの子供たちの物語が重なる。
ヒモに殴られ痛めつけられた少女スージーがシェルターにやってくる。
口をまったくきかない少年シャドウがシェルターにやってくる。
ドラッグをうちすぎた仲間を連れて、リッコがシェルターにやってくる。

スージーを連れ戻そうとヒモが脅しにきたとき、ちょうどやってきたトーマスが
サンドラを助ける。
震えがとまらないサンドラに思わずキスをしてしまうトーマス。
「すまない、そんなつもりはなかったんだ、、」
彼は知っているのね、そう、警官だもの、ファイルを見ればわかることよね、
大丈夫、わたしは強い人間よ・・
「何か質問があってやってきたんでしょう?なにかしら」
いや、君の顔が見たかっただけなんだ・・
「ああ、2,3聞きたいことがあってね」

娼婦殺害事件のことやスージーのことを話しているうちに
何が家出少女たちを売春の泥沼にひきずりこむのか、淡々とトーマスに話すサンドラ。

「なんのためにこんな辛い仕事をやっているんだい?
なんのために彼らを助けるんだい?
あれほど痛めつけられても、またヒモのところに帰っていくじゃないか」

「わたしが19歳で置き場から逃げたときのことよ、雨が降っていたわ、
着るものもなくて、どこかの家の軒先で寝ようとしていたとき、
乞食が近づいてきたの。わたしは殴られるのかと思ったわ。
乱暴されると思ったの、でも、もう立ち上がる元気もなかったのよ。
年とった乞食は、わたしに近づいてきて、どうしたと思う?
彼は着ているコートを脱いでわたしにくれたのよ。
彼にとっても一張羅のコートだったのに、、わたしは泣いたわ、
どれほど殴られても泣かなかったよ、3年間。でもその夜わたしは泣いたのよ」

警官の仕事に行き詰まりを感じていたトーマスに
「もっと早く犯人をあげられたら、と悔やんではだめよ。
あなたが捕まえたおかげで、次に犠牲者になるはずだった人がひとり
救われたのよ。ちいさいけれど、確かに違いを作り出しているのよ、あなたは」

元娼婦だったサンドラに、惹かれる気持ちとそれを打ち消したい気持ちに揺れるトーマス。

娼婦殺しはまた起きた。
前回と同様、ダークレッドのバラが一輪死体に添えられていた。
そして、ダークレッドのバラは、サンドラのところにも届けられた。
サイコキラーが捕まるまで、トーマスはサンドラのシェルターに寝泊りすることになる。

(もうね、お約束の展開ですけどね、それはそれは、ふたりの気持ちの
寄り添っていくシーンがいいんですのよ)

トーマスはとても裕福な出で、シェルターの傷みが激しいのをなんとか
できたらと思っている。
「このような建物を直すとなると大金がかかるわ。今は市の管理下にあるけれど
直すよりは壊したほうが早いし、修理は無理だわ。
他に空き倉庫になっている建物をシェルターに使えたらいいんだけれど。」
「母がよくチャリティのパーティを開くんだが、そのうち、きいてみよう」

わたしは、母親なら一番息子に会わせたくないと思う女だわ・・・

さらに、トーマスが父親の思い出を幸せそうに話すが、
そのことはサンドラの胸に深い苦しみを残す。
トーマスはきっと良い父親になるわ。かわいい息子とキャッチボールをする姿、
娘をひざに乗せている姿が眼にうかぶようだわ。。
そしてそのとき横にいる幸運な女性は、わたしではありえない・・・

幸せな時間はまるでシンデレラの魔法のようだ。
いつか12時の鐘がなる・・・
この幸せごっこは甘い夢なんだ、と、自分にいいきかせるサンドラ。
そして多重人格の犯人と、ついに対決のときを迎える。
シャドウとトーマスによって危機一髪のところを救われるが、
シャドウは自分が犯人を殺したと思い込み傷ついてしまう。
彼はサンドラの慰めを受け付けようとはせず、去っていく。。
サンドラもまた、トーマスに別れを告げてしまう。。

だが、心の痛みは癒えない、それどころがますます苦しくなるばかり。
間違っているよ、という眼でサンドラを見つめるスージーやリッコたち。
そしてシャドウ。彼はストリートで生きることをやめ、シェルターに
戻ってきた。人を寄せ付けない生活をやめ、愛を受け入れてやり直す勇気。
シャドウを抱きしめながら、サンドラは思う。
自分の心を打ち明ける勇気がくじけないうちに行かなくちゃ、、
そのまま家を飛び出してゆく。。(深夜4時だぜ)

どんどんドン
彼が愛犬に話しかける声が聞こえる。
「オーライ、くそ犬め、ぅわかったよ、いったい、いつからお前は俺の母親になったんだ。
んとに、こんな時間にいったいだ・・」

「中にはいってもいい?」

剃っていないひげ、血走った眼、自分と同様にひどい有様の彼の姿・・

前にあなたのお父さんの思い出を話してくれたこと、覚えてる?
でも、あなたはわたしと一緒になると父親になれないのよ。
わたしは子供が生めないの・・
売春をさせられていたとき、流産、乱暴な処置、そして救急車へ、、
二度と妊娠できない体になってしまったことをトーマスに打ち明ける。

「あなたを失いたくなかったの・・」

「俺も君を失いたくないんだよ。
まるで自分の一部を失ったようになってしまうんだ。
一生捜し続ける大事な部分を失ったかのようになってしまうんだ。
たしかに俺は子供がほしい。いつだって子供が欲しかった。
だが、いまこの瞬間、君の家にはどんな子供よりもずっと俺たちを必要と
している子供がいるじゃないか。
そして将来、養子をとることだってあるうる、選択肢はいくつもあるんだよ。
これは第一順位の選択じゃないかもしれない。でも考えてごらん、
俺たちはお互いを見つけることが出来ただけでも幸運なんだ、
これも十分な選択じゃないのかい?」

愛してるんだ。
わたしも。愛してる、愛してる、愛してる!
一度も使ったことのない言葉、ずぅっと言ってみたいと思っていた言葉・・
燃えるような、深く、長いキス。

彼女を抱き上げ、ベッドルームへと急ぎ、布団に彼女を下ろしながら

「ダイヤモンドは好きかい?それとも瞳の色と合うアメジストかな、
両方にしようか?」
「そうね、代わりに倉庫をちょうだい」彼を引き寄せ、キスをしながらささやく。
「うむ・・」



Fin