きっと君は泣く


若くかわいい女性は無敵だ。男性はもちろん、容姿に自信のない女性は
絶対に太刀打ちできない。

そんないわゆるギャルのいじわるさ、ずるさ、身勝手さ、高慢さ、いやな部分を
見せつけながら、なぜか泣ける。そう、ほんとに
私は最後、泣きそうになった。

彼女の描く女性は、情け容赦ない。
優しさのみじんもなかったりする。
途中まではざまあみろって気持ちで読んでいたのに、
この生きざまもいとおしいように思えてくる。

魚川?魚沼?ああ、名前がでてこないが、この人物像が最高にいい。
女性作家でなければ、こんな人物、なかなか書けない。
彼女を知るだけでも、この本はお勧めだ。



パイナップルの彼方

大人向け小説の一作目だったものだ。
舌をまくほど上手い。山本文緒さんの本は読み出したらやめられない。
でも、好きかと言われると真剣に悩む。

なぜなら私には主人公(作者の分身である)にうとんじられる日比野の気持が
よく分かるからだ。日比野は主人公の「自分は自分」という所が羨ましくて
仲良くなりたい。確かに日比野はうっとうしくて自分勝手な人間だけれど、
主人公に相手にされず「私たちを馬鹿にしてるのよ!」と叫んでしまうところなど
泣くシーンではない話の流れなのだが、思わず泣けてしまう。

完璧を装っていたサユリさんが主人公に「あんたみたいなちんけな女に!」と
わめくのも、実はエキセントリックな生き方が出来る人を羨ましく思う女のひがみだ。
山本文緒はいつも私を含め普通の女を容赦なく切りつける。

山本文緒側に感情移入もできる。だからとても面白い。でも、読んでいる途中から
笑われているのは私の分身か、、という思いもしてくる。
篠田節子の「女たちのジハード」と同じモチーフだしとても良く似た群像だ。
生き方を探す、模索する、結婚、世間、女なら誰もがぶつかる苦しみ、悩みが大きなテーマだ。
ジハードではトマトのむせる香りがして、こちらはパイナップルが熟れている。
だが、主人公の年齢も含め、後味はまったく違う。
トマトは未来を踏み出し、パイナップルは捨てられてしまった。
もやもやしたものが残りながらもあっけらかんと歩く強さ、これは若いからなのだろうか。



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