ゼルマ・オール   2003年11月初まとめ  2011年1月改訂
ネットで「メモリー」が評判だったので、買ってみたのが最初。
正直、これほどのけぞった本は、過去に数冊しかない。
それほど、痛くて寒々とした物語を書く人だった。

それなのに、彼女の作品をまた買ってしまい、とうとう邦訳は全部読んでしまった。

いつも独特の空気が流れている。
透明な時の流れだ。
生き物の苦悩など気にもとめない、超然とした時の流れ。
そんな時の流れは、ヒロインの心象風景と重なる。

おおきな危険や非常な孤独がふりかかるのに
淡々と選択して受け入れるヒロイン。
人生に何かを期待しても自分は手ひどく裏切られるに決まっている、
自分はそうされても仕方ないのだ、
ナイフで刺され血を流す心臓をみつめながら生きているようなヒロイン、
自分に対してどこか第三者のような目をもっている。

この寒々しさは、一方でヒーローにも通じる。
彼女の描くヒーローの多くはどこか心の深くに冷酷なところがある。
愛という感情がわかっていないレプリカント。
ヒロインの心臓にナイフを突き立てる男だ。

しかし、このレプリカントヒーロー、なかなかにセクシーで、
自分では愛だと気付かないが、尋常じゃないほど巫女ヒロインに
のめりこんで夢中なのだ。愛の交歓シーンが静謐なのにとてもセクシャルで
切なさ満点である。

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2010年の暮れになぜか無性に「メモリー」が読み返したくなり、一度手放した本を再度購入した。
愛なんていつどこにでも見つけられると思っていた頃の傲慢さ、未熟さ。
愛はとても貴重なものだったと思い知らされる年月。

昔はちっとも分からなかったのに、なぜかしみじみとこの本の良さを感じるようになった。
人の気持ちというものは本当に不思議だ。
カテゴリー 題名 過去 出版 ジャンル ヒロイン、ヒーローの名前 感想 一言
B-9 (A-2) 奇跡は待たないで
(Miracles Take Longer)
ヒロイン、私生児で捨て子 Dec-83 頑なお子様ヒロイン、レプリカントヒーロー、より戻し(2年) 看護婦ステイシー、建築家グレッグ なんでヒーロー、あんなアホなことを言っちゃったんだ。レプリカント軽症だったのにぃ。ヒロインがおとろちいほど頑なだったわ。この作者の定番、愛の殉教者自傷性ヒロイン、激愛の代償といえばそうだが・・・ いたたっ
A-22 愛のまなざし
(In the Eyes of Love)
ヒロインの甥は目の病気。 ヒーローは3年前に交通事故で顔、体に大怪我 Oct-84 心を閉ざした傷ヒーロー 新聞記者ケリー、牧場主ジョナサン 酷い傷顔のヒーロー、擬似盲目のヒロインと出会う。事故後に妻が去った心の傷が癒えないヒーローは屈折しすぎてヒロインを罵倒したり責めたりいじめたり、ほんと困ったさん。でもメロメロなのが痛いほど伝わるから許してあげるわ(笑)
G-10 夜のデュエット ヒロインのフィアンセが一円前に殉職。 Dec-85 危険な職業のヒロイン カスタムパトロール隊員ベス・ペイジ(27)、 同隊員(上司)ブランド・ペイジ(35?) メキシコ国境近くで密輸、密入国を監視する危険な仕事。 けっこうホットシーンがあるのに、空気が薄いんだよねぇ、いつもどおり。 プロポーズはわたしを辞めさせるためなの?っていうお約束展開が痛いが。。  
A-54 砂漠の風のように
(Love Is a Fairy Tale)
ヒロインは捨て子、ネイティブの両親が育ててくれたが、大学一年のとき二人とも病死。 ヒーローの妻は交通事故で4年前に死亡 Feb-86 子供の生めないヒロイン 獣医エミー・ホワイトレイク、牧場主ジェフ・ワーグナー、娘アマンダ(6才 耳が聞こえない) 荒涼とした土地が似合うヒロインは、孤独とか傷ついた心とかがやたらと似合う。。ヒーローがこれまたぞわっと孤独で、なんか勝手な奴ではあるが、嫌いじゃないというか、、
A-98 ビー・ストロング
(From this day)
ヒロイン2才のとき両親死亡。孤児院で育つ Dec-87 愛に踏み出すふたり 土木工学関係会社で、マーケティング・コンサルタント、ジョイ・ストレイヤー、リノ市警部マイク・グレシャム この話、好きだなぁ。。。静謐な、胸にしみる空気のよう。静かな時の流れと、ゆっくりと確かなものになってゆく愛。。ヒロイン像が魅力的。離婚過程を物語の背景にしているのも変わっている しっとり
A-107 メモリー
(Where Fires Once Burned)
ヒロイン両親がいない May-88 記憶喪失、レプリカントヒーロー、元サヤ系 トラックドライバーアプリル、化学エンジニア、ラス なんてひどい自己中ヒーローなの!!幼すぎた結婚、一方的な離婚、傷ついた心を抱き必死に生きるヒロインのもとへ、目が覚めたヒーローが向かう。悔いてすがるヒーローは切ないが、両親がねぇ・・
【7年後に再読】 あぁ、良いわ〜、昔は何故この良さが分からなかったんだろう。愚かな過去が今もひりひりするが、愛は人が考えるよりずっと深く根をおろして道を指し示してくれる。すごく信じられる。
再読の嵐!


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