DRAGONFLY IN AMBER   「I must !」


とても小さなシーンだけれど、自分の気に入ったシーンだと、
些細な違いでも目につくことってありますよね。

こんなこと五月蝿く言うのは、どうかしら、、と思いながらも
やっぱり何かが違う気がするっ(>_<)
どうでしょう?

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DIAでの18世紀舞台、時はカロデンの戦いの日の未明・・
クレアとの別れは目前にせまっている。
一緒に死地に赴くほうがどれほど楽な選択か。
離れたら自分がもう自分ではない、wholeではない、と感じるほどに
互いを必要としているジェイミーとクレアだったが、
クレアの中に宿った命とひきかえにできるものは何もない。

愛を交わした前夜は過ぎ、陽は情け容赦なく地平線を染めてゆく。

イングランド兵の声が外できこえた、、
「奴らイングランド兵だ!クレア、行くんだっ!」
ジェイミーは扉のところで剣をもち、クレアは走り去ろうとして一瞬とまり
最後、一目ジェイミーの姿を目に焼き付けようと。。

(DIA Dell PB版893ページより引用。 日本語訳は拙いですがわたしです)

He turned his head, caught sight of me, and suddenly he was with
me, pushing me hard against the wall in an agony of desperation.
He gripped me fiercely to him. I could feel his erection pressing
into my stomach and the hilt of his dagger dug into my side.
     He spoke hoarsely into my hair. 
"Once more. I must ! But quick ! "   He pushed me against the wall
and I scrabbled up my skirts as he raised his kilts. 
This was not lovemaking;  he took me quickly and powerfully and 
it was over in seconds.
The voices were nearer;  only a hundred yards away.
     He kissed me once more, hard enough to leave the taste of
blood in my mouth. "Name him Brian, " he said, " for my father."

ジェイミーは絶望的なまでの苦しみをぶつけるように私を壁に押し付け
荒々しく私を抱きしめた。おなかにおしつけられた彼の勃起と
わき腹にダガーの柄がめりこむのを感じた。
彼は髪に顔を埋め、かすれ声で言った。
「もう一度、どうしてもだ! 早く!」
彼が私を壁に押し付けキルトをあげると、私もスカートをめくりあげた。
これはラブメイクではない、彼はすばやく力強く私の中に入り、すぐに終わった。
声が近づいてくる、たった100ヤードほどだ。
  彼はもう一度わたしにキスをした、それは荒々しく血の味がした。
「ブライアンと名づけてくれ、父の名をとって」


このシーンは翻訳本では下のようになっています。

> 私の髪に顔を埋めて、彼がかすれ声で言った「もう一度。頼む!だが急いで!」
> 彼は私を壁に押し付けスカートをまくりあげると、自分のキルトもまくった。
> 愛の行為ではなかった。彼は一瞬にして力任せに奪い、数秒で果てた。
> 人の声が近づいてくる。ほんの数ヤードほどに。
> 彼がもう一度キスをした。口に血の味が残るほど激しく。
> 「ブライアンと名づけろ」彼が言う。「父の名をとって」


う〜ん、、「もう一度。頼む!だが急いで!」ってなんか変な日本語じゃない?
いや、変な日本語とかそういう問題じゃなくて、
これではジェイミーが一方的に乱暴にやったみたいで
どこか違和感がある。

それはまず、「I must ! 」が「頼む!」になってしまったから。
そして、スカートをめくったのは、クレア自身なのに、翻訳では
ジェイミーがめくったようになっているから。(赤字のところ)

I must!を頼む!にするのは和訳としては間違ってはいないだろう。
走れメロスのイメージで、行かせてくれ!行かねばならんのだ!頼む!
って時にはたぶんI must!とか言ってるだろう。
でも、あえて「頼む!」と訳す必要があっただろうか?
クレアに頼む必要なんて無い。
アウトランダーのふたりをずっと読んできたら、ジェイミーが
「I must!」と言うときは、そのとおり、mustのはずなんだ。

「一瞬にして力任せに奪い」 なんて言われると、とても悲しい。
ここは、もっと、何ていっていいかな、とても動物的にふたりは繋がったけれど、
それは即物的でありながら、とても根源的な渇望で、
それをするのがふたりとも必然だった、する必要があった。
だからmust!なんだし、クレアも自分からスカートを上げた。
I must!はジェイミーの言葉だけれど、クレア自身も同じ気持ちだと思うし、
そういう必然を感じるジェイミーと、そういう必然を受け入れるクレアに
lovemaking ではない、と言う潔さを感じたのに。。。

後方の怒号と剣の交える音をききながら逃げるクレアの腿に
My thighs were slick and wet with Jamie's seed

ジェイミーのなごりが腿に伝わるのを感じながら、まだ生まれぬ命と共に
生き延びようと、走る。。

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ここ、好きなシーンだったんです。
ジェイミーとクレアらしい別れだと思っていたんです。
だから、重箱の隅をつつくような感じかもしれないけれど、
ちょこっと書いてしまいました。。