続あしながおじさん 味わい深い昔かたぎの日本語訳
「続あしながおじさん」を初めて読んだ日のことははっきりと覚えてる。
はじめて、本を読んで「萌えた」。
小学生ながらドクトルに「やられた・・・」心臓がばくばくになったの。
母親に興奮して「聞いて!、聞いて!」と話にいくと、
そのときお客さんが来ていて叱られてしまった・・・
気に入るとまわりが見えなくなる性格なのよね。。。

それ以来あたしの頭んなかに、しっかとドクトルは住みついてる。
でも、ドクトルはスコットランド弁をしゃべるので、日本語翻訳は
「神様は何の関係もないだす。これは悪魔の仕業だす」と、、、
よくこれで、何十年ものあいだ、恋心を失わずに来れたな(笑)。

なが〜いこと、原書を読むという発想がなかったのに、
アウトランダー以来スコットランドなまりは原書を見なくちゃ、という気になり、
とうとう「Dear Enemy」を買ってみた。

ご存知と思うが、この物語は孤児院の院長をまかされた元気な令嬢サリイが
旧友ジュディにあてて孤児院改革の様子を報告する手紙でなりたっていて、
そこに絡むは婚約寸前の恋人ゴードン(若き政治家)、影のあるスコットランド人ドクター。
児童教育や福祉の問題、女性にとって仕事と結婚とは、100人もの孤児の大騒動、
生真面目でありながらユーモアとロマンスがちりばめられているツボ本なのだが、
サリイはいつもジュデイに「ドクトルがこういった、ドクトルがこうした」と
むっつり不機嫌ドクターを手紙のネタにしていた。

どれどれ、、あれれ、おやまぁ。
いそいでページをめくってみると、「ドクトル」という文字がいっさい無い。
「サンディがこういった、サンディがこうした」
手紙でいつもドクトルと呼ばれていたヒーローは
実際は「Sandy」 と呼ばれている。

えー?!サンディって何?!
最初から調べてみると、初めて「Sandy」が出てくるのは
ドクター・マックレイの初対面の印象を書いた箇所。
背が高くてやせていて、薄茶色の頭髪と冷たい灰色の眼をもっている、という、ここに
「sandy hair and cold grey eyes」と記述があり、sandyが登場する。

そのあと、3月8日の手紙、着任して2ヶ月ちょっとのところで、ドクターに
「怒りん坊さん」とあだ名をつけたと書いている。
陰でこう呼んでいるのよ、とジュディに話している。
この「怒りん坊さん」と訳されている箇所が「Sandy」だった。
とにかくそれからずっと、ジュディへの手紙にはサンディとあだ名で書いてるのだ。

さて「サンディ」って「怒りん坊さん」という意味なの?
調べてみると、「英語の Sandy はスコットランド人のあだ名としても使われる」と
書いているページがあったが、「怒りん坊」につながるものは
ひとつも見つけられなかった。。ほよよ。

(注)
イングランド人はジョン・ブル(John Bull)、スコットランド人はサンディー(Sandy)、
アイルランド人はパディー(Paddy)、ウェールズ人はタフィー(Taffy)と呼び、
アメリカ人はアンクル・サム(Uncle Sam)

他に、西遊記を英語では「悟空=Monkey, 八戒=Pigsy,悟浄=Sandy」と呼ぶらしいが、
その連想からすると、サンディは背が高くてやせて髪の薄い(これはわたしの妄想!)
陰気なドクターのイメージそのもの(笑)。

ま、とにかく、もう一度翻訳を読み返すときは、ドクトルと書いてある場所を
「お怒りん坊さん」または「沙悟浄くん」と心の中で換えて読まねばならない(笑)。
このあだ名「サンディ」は、サリーが本人には分からないように使っていたはずだが、
ラスト、サリーからドクターに宛てたラブレターで、何度も彼に
「サンディ」と呼びかけている。
サンディ、あなたはなんておばかさんなの、そんな態度をとっていて、
実はわたしのことをずっと愛してくださっていたなんて、わかるわけがないじゃありませんか。。
ちょっとからかった感じの、うきうきラブレターというわけだ。

あぁ、ドクトルが頭にしみついているけれど、サンディなドクトルに少しずつ慣れていかないと(笑)。


あだ名ネタをもうひとつ。
サリイはドクトルに連絡手紙を出す時、Dear enemyと書いて出していたが、
もちろんドクトルはそれを憤慨していた(笑)。
手紙6月17日より前の土曜日のところで、
ドクトルがサリイに「サリイせんべい」というあだ名をつけて
子供っぽく喜んでいる、と記述がある。

「サリイせんべい」は原書では「Miss Sally Lunn」となっている。
ネットで「Sally Lunn」を検索すると、いや、びっくり、出てくる出てくる、
私なんて今日初めて聞いた言葉だったのにサリー・ランって名所なんだ。
そして、そこで売られているサリー・ラン・バンと呼ばれるパンのレシピはこちらで。

サリイせんべいって訳も、なんだか時代を感じさせる。