2000年その8


恋のキックオフ Ladybugs (1992年アメリカ)

ladybugって天道虫の事なのね、知らなかった。
で、これは主人公がコーチをするはめになった女子サッカーチームの名前。
赤地に黒の大きな水玉模様のユニフォーム、、これがとっても変(笑)。
 
オーナー社長におべっかを使ったのがきっかけで、サッカーのコーチを引き受けるはめに。
サッカーの事なんて全然知らない主人公が練習場へ来てみると、経験者は一人だけ、
初心者ばかりのチーム。社長の娘も、ど下手で蹴ると必ず宇宙開発。
「勝てなかったらお前はくびだ」なんて理不尽な事を言われてもうお先真っ暗。
よくあるパターンの話で、先も読めるのだが、これがけっこう楽しかった。
 
主人公のロドニィ・デンジャーフィールドって人は、
腹の出た、ぎょろ目の、なんか落ち着かないおじさんで、映画が始まった時は
「げげ、、この人が主人公なの?なんか、期待薄だなぁ。。。。」と
思っていたのだが、へぼへぼチームがずるい手段で(^o^;;勝ちをもぎとっていくうちに
おじさん自身も自信や思慮深さが漂ってきた。最後の決勝戦の時は、これまたよくあるパターン、社長に向かって
「ここでは決めるのは私だ」
 
決勝戦までは、サッカーの上手い男の子を女装させてチームに入れてきたのだけれど
(かつらをかぶっていても、誰が見たって男の子なのに、なんで誰も気づかないんだぁぁ)
最後は正々堂々と、「男に頼らなくても君たちは強いんだ!」
ぶっはっはっは。
 
肝腎のサッカーの試合内容はかなりレベルが低く、本当に草サッカーなのだが、
日本ならこういう映画はアイドルを主人公にしたB級映画になりそうなのに、
おなかの出たおじさんを主人公にする所が、面白いな。
 
 
------------------------------------------

数に溺れて Drowning by Numbers(1988年イギリス)

グリナウェイ作品にまたまたトライ。
うーーーん、なんという偏執的な世界なんだろう。
のっけからやられた。
なぜって、少女が縄跳びをしながら星を数え上げるのだが
いーち、アンタレス、にーい、カペラ、さん、カノープス、
とかそういう感じでなんと100まで数えるのだ。
ちょっと!普通100まで星の名前を言える人なんている?星座じゃなくて星の名前よ。
いや、これは本質的なことじゃない。本質的なことは、この100まで数えるシーンを
20,21、・・99,100というように撮るのではなく、100までずっと
言わせている点だ。
魔法にかかったように、網にかかったように、ヘビににらまれたように
私はここでもう捕まってしまった。
 
かたつむり、すずめ蛾、甲虫、熟れた果物、死体、おかしなゲーム、
美なのか醜なのか、生と性と死が満ち溢れて息苦しい不思議な世界。
 
1から100までの数字が全部出てくるらしいが、わたしは全部はとても
覚えていない。人によってはこれらの数字を全部見つけることを楽しむ人もいるのだろう。
 
話は女の恐さというところか。人生はルールの決まったゲームのようで、
女はとてもゲームに強いということ。妻にうんざりされる夫の描き方が
上手くて、醜い部分をさらけさせるのがこの監督はとても好きだ。
 
 
------------------------------------------

ZOO A Zed & Two Noughts (1985年イギリス)

またまたグリーナウェイ作品。
実は・・・好きと言っては世間的にはとてもまずいのかもしれないが、
なんだかとても好きなのだ。
快感さえ覚えるときがある。
美と醜の狂宴がだんだん癖になりそうだ。
 
偏執的な繰り返し運動。美しい左右対称性。腐っていく肉体。完璧な色彩。
卑猥な言葉。ナンバリング。
一体、なに?と訊ねられたら、なんて答えたらいいだろう。
世界の規則と無秩序?美しい構造とただれた腐敗?
生命、生、性、肉体、人間、世界そのものを表現したいという悪魔的欲求に
とりつかれているような監督だ。知性のあるけだもの。猥褻な賢人。
 
かたつむりが私はとても嫌いだ。いったい中はどうなっているのだろう。
なめくじよりも不気味だ。からの渦巻き、両性具有、粘液の這ったあと・・
蝶々が私はとても嫌いだ。鱗粉のついた羽根、うずをまいた口、細い体節、、
グリーナウェイはかたつむりと蝶々が大好きだ。
かたつむりを体に這わせるシーン、無数の蝶々が部屋の中を飛び回るシーンに
息苦しいほどの生のエネルギーを感じた。
なんでかたつむりや蝶々がこんなに嫌いなのか、分かった気がした。たぶん無数の
蝿が飛んでも、「うわ!気色わるー!」ってなるだけで息苦しくはならないだろう。
濃厚で甘ったるい存在感が不気味なんだな。
 
今の所、グリーナウェイ作品ではこれが一番好き。
 
 
------------------------------------------

シュリ Swiri(1999年韓国)

話したい事がたくさんある映画だ。
筋としては、あまりにもありふれている。はじまってすぐに最後の予想がついたくらい
よくある構図でできている。
だから、この感想でネタばれをしてもたいして迷惑はかけないだろう。
 
北朝鮮の特殊工作員と韓国の情報部員の間に芽生えた愛。
彼女は熱帯魚や淡水魚のペットショップを営んでいる。
彼は彼女の店で買った鑑賞魚を情報局のいたるところに水槽をおいて飼っている。
彼と相棒が情報提供者に接触しようとするといつも一歩先に暗殺されてしまう。
おかしい、どこかで情報がもれている。。
をいをい!誰が見たって彼女が怪しいって!はよ、気づけよ!
なーんて言っていてはこの映画は面白くなくなってしまう。
これはロミオとジュリエットの悲劇と同じ正統派ロマンスで、
ダイハードと同じく単身でテロリスト集団に立ち向かうハードアクションで、
リーサルウェポンやらと同じく刑事2人組定番の男の友情ドラマである。
 
エンターテイメントとして良く出来ていると思う。
モチーフも切ない。けっこう泣いてしまった。
どちらか一方が死んだらもう片方も死んでしまうという魚キッシンググラミー。
朝鮮半島の清流に住むという淡水魚シュリ。
 
でもエンターテイメントと言ってはいけないような恐ろしさも感じてしまう。
冒頭のアクションシーンは、これまで見たどの映画よりも残虐で凄まじい。
南北の分断と貧富の格差、北のテロリズムの脅威、こんな事を一方的に言っても
いいのだろうか。それともこんな事は当たり前の事なんだろうか。
市中での激しい銃撃戦、爆発、いくら映画でも日本だったらとてもじゃないが
こんなに拳銃を撃ちまくらないだろう。
感覚が常に戦闘モードなのだ。見た目は東京もソウルもきっと同じようだろう。
でも緊張感が決定的に異なる。
2002年ワールドカップも一つの重要なモチーフだ。
平和ぼけした日本は大丈夫なんだろうか?
 

  シネマに戻る   ホームへ戻る