2001年その1


ポストマンブルース(1997年日本)

TVドラマ「やまとなでしこ」で堤真一さんにはまって
借りた映画。サブ監督は弾丸ライナーの時から、なんとなく頭に
ひっかかっていた監督なのだが、今まで一度も見たことはなかった。
なぜってサブなんて名前が胡散臭いって思ったんだもの(笑。でも、
今回借りてみて予想より良い作品だったので他の作品も借りてみるつもり。
 
堤キャラクター、『巻き込まれアンラッキー雪だるま』とラブストーリーのミックスした
けっこういい味の映画だった。状況がどんどん悪い方へところがっていくのが
堤さんほど似合う人はいないと思う(笑)。
 
鬱屈していて暗くうつろなまなざしと、子供のような笑顔と優しいまなざし、ふたつを
堤真一は併せ持つ。遠山景織子さんもとてもきれいで、ふたりのラブストーリーは
童話のように美しかった。巻きこまれて行く事件はブラックコメディとは言いがたいむごさが
あって、ちょっと笑えない。
年賀状の時期にこの映画を見ると実感が増すかもしれない。
 
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ウィズ・ユー Digging to China(1998年アメリカ)

原題のセンスの良さがこの邦題では台無し(とほほ)。
今の生活から(この世から)逃れて別世界に行きたいと願う少女。
地面に中国まで通じるつもりで穴を掘っていたり、遊園地は深夜サンタークロースの
OBたちが集まるおもちゃ工場だと話したり、エキセントリックで感受性が強く
知能が高い孤独な10歳の少女と知的障害者の若者との友情を描いている。
 
物語は甘っちょろい結末を迎えないが、そのあたりが実に良かった。
傷つけるつもりがなくても人を傷付けてしまうこともある事、それでも人は
誰かを必要とし、また必要とされる事、愛する事、理解する事、などなど、
美しい映像と音楽で綴った話だった。
 
 
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マン・オン・ザ・ムーン Man on the Moon(1999年アメリカ)

若くして亡くなったコメディアン?アンディ・カウフマンの物語。
作り物ではない笑いを、生きている笑いを、客の爆発する感情を欲した男。
自分が楽しみたいのか、観客を楽しませたいのか、観客を挑発し、仕掛けをして、
ぎりぎりのハプニングを大笑いする、その子供っぽさ。
しかしこれが笑えずに白けてしまう客もいる。
笑いって何だろう。人は安心できる笑いを好むのかもしれない。
 
私もそうなんだけど、客って舞台の上に居る人の「今」を期待してるんじゃ
ないところがあるんだよね。
好きだった歌を今風にアレンジしてコンサートで歌われると嫌だったり。
演じる者にとってはもうそれは過去の自分なのに、かっての当たり役のイメージを
期待されたり、同じ芸を見せて欲しいとねだられたり。
 
芸人の苦悩と幸福のはなし。
ジム・キャリーの熱演が光る。
 
 
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シックス・デイ The Sixth Day (2000年アメリカ)

自分の知らない間に自分のクローンが・・・という話なんだけれど、
思ったよりも小道具が効いていて面白かった。
肝腎の大道具?クローン技術についてはちょっと納得行かないよー。
ま、パンフレットの解説の人もそう言ってるけどね。
 
成人の細胞の(DNAというより)核を受精卵の核と取り替える事がクローン技術の
基本中の基本。
だから自分のクローンを作ろうとすると、普通人間が生まれて成長するのと
同じだけの時間がかかる。将来ホルモンやらなにやらで異常に早く成長させることが
できたとしても、ま、一週間とかまして一日とかで出来るはずがない。
が、、この映画では2時間でできちゃうんだよねぇ。
なぜか?それはDNAのない雛形としてのボディがあるからなんだけど、、
そりゃないぜ!一体どうやって体を作るのさ???
たとえすべての人に共通の部分だけを残した基本DNAというものが出来たとして
それで一応の体ができるとしても、じゃ、それからその個人のDNAにどうやって
変換させるのさ???細胞って一個の直径は10マイクロメーターくらいなんだよ。
つまり1mmの百分の1。皮膚10cm四方だけでも細胞は1万かける1万、
約一億個もあるっていうのに、その細胞すべての核の中のDNAをどうやって
その人個人のものに代えるのさ??
 
ってわけで、この点がまあ、限りなく変なんだけど、それには目をつぶるとすれば
結構近未来世界の様子が上手いんだわ。ネット家電なんて絶対こういう方向に
なるんだろうな。
 
一番恐かったのは、クローンというよりも、そこにわざと傷を入れるという所。
これは全く笑えない。あまりにも真実味がある。
つまり屈強な戦士用のクローン人間を多量に作ることが可能になったとき、そこに
優性の遺伝病の遺伝子を入れておけば寿命が短く無用な反乱を引き起こさない。
「人造人間キカイダー」がへんてこな笛で頭がいたーーくなるのを
「負けるなー!」なんて言って見ていた頃は遠い昔になってしまった。
今や、たとえば糖尿病の遺伝子を入れておいて裏切ったらインシュリンは
渡さないぞ、みたいな事ができる技術があるのだ。
 
 
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トイ・ストーリー Toy Story (1995年アメリカ)

今頃見て絶賛してもしょうがないんだけれど、本当に面白かった。
CGの素晴らしさ、声優のすばらしさ、人形たちの性格付け、どれもがとても
満足。いろいろな映画のパロディもふんだんにとりいれクスっと笑える。
友情ものの王道をいく展開だけれどこれが少しも退屈ではなく楽しめた。
話の本筋ではないけれどグリーンアーミーが最高に笑えたね!
 
 
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トイ・ストーリー Toy Story 2 (1999年アメリカ)

今度も笑わせてもらいました。
バズが一段と格好よくなってる!ほっぺたと口元が、そうそう、イナにも似て
ぷっくりしてて、むっちゃ好き(笑)。
おもちゃの運命のほろ苦さと友情の暖かさ、おもちゃの心意気、
よくあるストーリーがここまで面白くなるのは、キャラクターが
生きてるからなんだろうな。スターウォーズのパロディは、おそらく
こう来るだろうとわかっていても笑ってしまった。
 
悪役というより正体不明の買占め屋って、日本人なのが定番じゃない?
ロボコップもそんなのがあった気がするし、ショーンコネリーが出た奴も
そんなのがあった気がするし、なんだか金にものを言わせる嫌なキャラっていうと
日本人なんだなぁ。
 
 
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タクシー2 taxi 2 (2000年フランス)

ああ、面白かったー!声だして笑った、笑った。
観客を喜ばすつぼをついている。車にうるさい人が「にやり」とする
そういう通の味を備え手抜きがない出来である一方、車の事なんて全然分からない
私のような者もくだらないギャグに大笑いできる楽しさがあった。
 
「踊る大捜査線」に似たトーンなのだが、日本とフランスの差か、もっと
警察をおちょくっていて、どうもフランス人は悪者も警察もどっこいどっこいだと
考えているんじゃないだろうか(笑)。
 
今回は敵は日本やくざなのだが、ダバディ氏(トルシエ監督の通訳さん)が言って
いたようにフランスは日本文化にとても親しみやあこがれを持っているようで、
アメリカ人が描く日本人像よりももう少し美的でスタイリッシュだった。
ヤクザや忍者(笑)の黒装束、ぬんちゃく、サングラスなど『香港映画か?!』と
つっこみたくなるような外見だったが、香港ものとは違って不思議な静のイメージが
あってこれが向こうの連中にとって日本的って奴なんだろうね。
北野武作品のやくざと通じるところがあった。
変に礼儀正しいところも爆笑。線路の上をカーチェイスしている間に一台がポイントで
別の線路へ行ってしまう。しばらくして遠くの駅でパリに戻るにはどうしたらよいかを
丁寧に地図を広げてフランス人に訊いているんだけど、教えているフランス人の方が
つっけんどだわ(笑)。
 
フランス代表ユニレプリカ、背番号10ジダン、主人公はこれをずっと着ていたのも
ご愛嬌。
サッカーWC優勝はフランスにとって本当に大きな事だったんだな。
 
 
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パーフェクト・ストーム Perfect Storm (2000年アメリカ)

これは想像していたものと大分違った。
パニック&ヒーローものかと思ったらそうではなくて、漁に生きる男たちと
彼らを愛する女たちの話だった。
 
生活の困窮(アンド男のプライド)から危険とわかっていて漁に出た男たちが
最大級の嵐に出会い精一杯戦ったが命を落した、という話なのだが(みもふたも無い?)
乗組員たちそれぞれのドラマがあり、そこに大迫力の荒れ狂う海をいれて、、と
そのあたりのさじ加減がなんだか微妙に間違った気がする。
もっと良い出来になったのでは、と思うのだが。
 
せっかくジョージクルーニーを主役にしているのに、クルーニーのドラマがあまり
ジンと来ない。腕が落ちたのではないか、という不安。陸では生きられない漁師の
気持。そして結局判断を誤ったわけだが、そのあたりの苦悩も、あまり感じられない。
一方ラブストーリーの中心は若い乗組員なのだが、そのストーリーもすげぇベタ!
大海原で命を落す前に「永遠に愛してるよ・・」と心で語り掛けるのって・・・
昔見たスマスマの、拓哉君が海やら冬山やらで遭難するコントを思い出してしまった(笑)。
私にはこのふたり以外の乗組員のドラマの方が面白かったな。
パニック物として見ると緊急救助隊の話の方が大迫力でしかも悲痛だった。
主役のカジキマグロ漁船を脇役の救助ヘリコプターが食ってしまった?!
 
荒れ狂う海の映像はとても迫力があり、あの暴風雨の場面はどうやって
撮影したんだろうと、感心してしまった。
 
 
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ダンサー・イン・ザ・ダーク Dancer in the Dark(2000年デンマーク)

どういったら良いのだろう。映画に身をまかせてしまえばそれで良いと
言えば一番なのだろう。見るしかない。恐ろしいほどに人の感情を揺り動かす力が
この映画にはあるのだ。
 
あらゆるところに計算があるのだけれど、あらゆるところに生の感情がある。
ああ、全然上手く言えないわ。
 
ハンディカメラがまるで素人のように揺れながら映す画面の中にいるのは、
ビョーク演じるセルマなのか、それとも彼女自身なのか・・セリフ以外無音の
ドキュメンタリーと見まがう緊張した空気。
余分な音は一切無い。
苦しみに満ちた現実、救いのない現実、暗い予感、、
 
耐えがたい現実から逃れる一瞬、そこに歌が現れる。
一転してカメラワークは安定し計算された構図、様々な角度で歌と踊りが繰り広げられる。
説明を省略する感覚としての歌。現実ではなく夢の世界である歌。
そこだけが安定した映像という皮肉。

物語はこれでもか、これでもか、というように、暗い。とんでもなく暗い。
涙を流れるにまかせていると、もう止めようがなくなってしまった。
こんなに泣いたのはいつ以来だろうと思うほど涙が流れ落ちた。
メロドラマだから泣くのではない(いや、もちろんそれもあるけど)、
これは生きるということそのものだなと思うからただただ涙が出てしまうのだ。

なぜ私だけがこんなに苦しまなければいけないのか?
苦しみと希望、絶望と喜び、生そのものだ。暖かい愛もあり、みにくい裏切りもある。
彼女の選択は間違いだったのか正しかったのか分からない。
いや、不条理な人生の中で誰も正解などわからない。
 
よく何かに取りつかれる、とか言うが、まさにこのビョークという人はそうだった。
一体彼女は演技をしていたのだろうか。。

この監督(ラース・フォン・トリアー)て「エピデミック」を撮った人なのね。
不思議な不思議なドキュメンタリータッチが変わっていない。
計算しつくすタイプでいながら、出演者の力を120%にあげる何かをもっている。
冷静で非常に頭の良い扇動家だ。
 
<横道の感想>
びっくりだったのは、セルマを愛する男性役の人、死ぬほど良い人!この人が
あの「ファーゴ」のぶっとんだ切れた奴だったって事だわ。
俳優って本当に凄いねぇ。。
それと、カトリーヌ・ドヌーブがとてもとても良かったわ。
 


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