2001年その2


ハート・オブ・ウーマン What Women Want(2000年アメリカ)

メル・ギブソンの良さが十分出ていると思う。だが見終わった後なんだか物足りない。
 
それは恋する相手役のヘレン・ハント以外の女性がイマイチだからではないだろうか。
一昔前のマッチョな男が突然女性の心を読めるようになって、それがきっかけで女性を
だんだん理解するようになる、というストーリーだが、
メル・ギブソンの周囲にいる女性でまともな感じなのはヘレン・ハントくらいだからねぇ。
もっと理解できたらこんなに良い事があるのに。。って思うほどの説得力が
足りない気がする。
 
つまり女の心を読める事でなにが良かったかというと、、、
女性は思っている事の半分も口にしない表裏の多い生き物だけれど、心が読めると
その中から表裏の少ない誠実な女性を探すのに役立つよということだったのだ。
 
とても逆説的じゃない?心を読めるようになって心を読む必要が無い人が
素晴らしいと分かるなんて。
もっと女性心理を理解しなさいよ!っていう映画の筋とちょっとずれてしまうのよね。
 
誠実な女性はちゃんとまわりにいるのに、その価値に気づかない軽薄な男性が
多いのよ!女性心理を理解すれば身近にいる誠実な女性の良さに気づくわよ!
って言いたいのかな(笑)。
とすればこれはある種の女性にとってのおとぎばなし。自分の道を信じてしっかり
生きていけばいつか必ず自分の価値に気付いてくれる素敵な男性が現われる、
そういう話だったのかもしれない。
 
 
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エリザベス Elizabeth(1998年イギリス)

ケイト・ブランチェット、「オスカーとルシンダ」でもそうだったが、
不思議な魅力をもった人だ。透けるような白さ、ブロンドのまつげで瞳がけぶる。
もろくはかなげでいて、強くエネルギーに満ちている。にやりと笑う時の様子が
私は特に好きだ。
「私は女であるけれど男の声を持つ」と言い放つエリザベスに議会がなびくのは
無理がないと思わせる。
 
撮影はどうやったのか??とても高い位置から、そう大聖堂の天井から見下ろすような
映像が独特で、石の冷たさ、暗さ、荘厳さを伝えていた。
中世の教会支配から徐々に国家が離れてゆく歴史のエネルギーがこの若いエリザベスの
姿と重なりなかなか面白かった。
 
ジェフリー・ラッシュはなんだかいるだけで上手い!って感じるのね(笑)。
エリザベスに触れるのをためらった、一瞬の演技が心に残る。
 
さて、、エリック・カントナって有名なサッカー選手ですよね??
フランス大使を演じていて、けっこう出番も多いんだけれど、俳優もやってるの??
 
 
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ミフネ Dogme 3 - Mifunes sidste sang (1999年デンマーク・スウェーデン)

Mifune's Last Song というのが英語題。
マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグやイノセント・ライフをふと思い出した。
空気が似ている?奇妙で美しい世界。
これは私の勝手な思い込みなんだけれど、これまで見た北欧の映画や本はみな
どこか奇妙奇天烈で懐かしい不思議な空気がある。長くつ下のピッピやムーミン谷の
住人、上の映画、どれも浮世離れしているようでいてシニカル、手厳しいようでいて優しい。
 
どうにも理解できない所が最後の方にあって、それがとても変な感じで、
編集の間違い?ここだけ気が狂ったんじゃないか?(笑)とか、思うのだが、
それを除けばとても好きな話。
(リーバの友人たちが勘違いしてめちゃくちゃしていった後何が起こったの???
隠していた緑のピニール袋の中身は一体どこへ???最後の方は謎だらけ、笑)
 
「7人の侍」の三船がこんな地球の裏側の心の中に住んでいる・・
このモチーフがせつなくて優しい。
 
 
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プリティ・ブライド Runaway Bride (1999年アメリカ)

いやぁ、いいんじゃないでしょうか。
こういうのにけちつけてもね。
リチャード・ギアってそれほど好きじゃないんだけれど、でも、ラブロマンスを
やらせたら、もうもうもう!ほれぼれするわ(笑)。
 
 
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死の愛撫 Margaret's Museum (1995年カナダ・イギリス)

まるで阿部定のようなパッケージ。
性愛に狂っていちもつを切った女の話のように書いてある。ひどいなあ。
あまりにも違う内容なんです。
 
ヘレナ・ボナム・カーター、今まで貴族の役しか見たことがなかったけれど、
やせぎすで安物の服を着て、髪もくしゃくしゃ、虚無的なようで目の光が異様に強い。
 
炭坑で成り立っている貧しい村。毎日のように落盤事故のサイレンが鳴り、
女達はかけつける。自分の夫、兄弟が無事かどうか、穴から出てくる姿を必死で探す。
炭坑だけは止めてと女が願っても、ほかにお金を得る手段はない。
「天空の城ラピュタ」のようなのどかな坑夫たちの姿はない。
事故で死ななくて済んでも結局塵肺で苦しみ死んでいく。
 
ヘレナの父親は事故で死に、祖父は塵肺で苦しんでいる。補償金のたぐいだと思うが、
給付人数が限られているため祖父は給付金をもらっていない。だからヘレナの母親は
人の葬式を待っている。(給付金をもらっている人が死ねば順番がまわってくるからね)
ケイト・ネリガンという母親役の人がまたすごいの。
ヘレナとケイトのバチバチとした緊張関係は恐ろしいほど。
 
性のめざめ、幸福と愛する人の死、美しい自然を飾った悲しい博物館。
 
映画はイギリスが舞台だけれど、撮影はカナダのノバスコーシャのようで
(行ったことないけれど)「赤毛のアン」にハマった人ならこの風景はあこがれよね。
 
 
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ペイ・フォワード Pay it Forward (2000年アメリカ)

これは一体・・・
ケビン・スペイシーもヘレン・ハントもハーレイ・ジョエル・オスメント君も
上手い!よくやってる!
それなのに、なんでこうなるの?!
脚本が悪いよーー。無駄な場面が多くて、要らない登場人物が多くて、
しかも、最後ハーレイ君は死んでしまった!
 
不必要なエンディングだった。突然白けてしまった。
 
誰かに親切にする。わりぃ、借りは返すよ。ってpay it backなんだけど、それを
forwardにして、誰か別の人に親切にしてくれればいいよ、って言う。
こうしてねずみ算のように親切行為が広がり、世の中が良くなって行く。
そんなアイディアをハーレイ君は実行し、それは成功と失敗をおりまぜながら
ケビン(ハーレイ君の学校の教師)とヘレン(ハーレイ君の母、断酒会に入っている)と
ハーレイ君の生活を変えて行く。
 
ここまでは、まあましだ。好きな場面もある。
冒頭の無意味な事件、ハーレイ君に新聞記者が行きつくまでの脇のストーリの
いい加減さ。これも我慢しよう。
と、ところがだ。ヘレンのアル中の夫が何年ぶりに?戻ってから(まだ離婚していないと思う)
話はおかしくなる。ヘレンは夫とやり直そうと考えるが、ケビンはその夫とちゃんと
向き合わずに夫を非難する。自分の過去(アル中の父親に火をつけられた)を根拠に
やり直すなんて無理に決まっていると怒る。
そして、ヘレンも夫がまた酒を飲んでしまうとすぐに後悔して夫を見放す。
夫から逃れるのに苦労したような感じだったのに、なぜかあっさりと夫は姿を消す。
アル中や暴力を振るう夫から逃れられないのは、きちっと別れが言えなかったから
だけなの?出てって!と言えば、OKだったの?
それに、なんだよ、ケビン、ヘレンが好きならちゃんと夫と会えよ。
自分はヘレンが好きなんだ!彼女から離れろ!とでも言えよなぁ。
 
そして、さらにへんてこな事に。
クラスメートがいじめられているのを見たハーレイ君は彼を助けようとして
中学校のワルにナイフで刺されて死んでしまう。えっ?どうして?
こんなストーリーにする必要あった?
世の中結局、勇気を奮って何かやろうとしても無理なんだよ、ってなっちゃうの?
 
と、ところが、さらにやめてくれ!な事に、ハーレイ君の家の前には
ハーレイ君の死を悼んでクラスメートやワルの仲間やその他大勢がろうそくを
かかげて集まる。天使が迎えにきたとか、そんな歌を歌う。
あれーー!かれは殉教者になってしまった。
むっちゃくちゃ宗教映画だわ、これじゃ。
 
もっと絶対よい感じの映画になったはずなのに、もったいない。
 
それにしてもヘレン・ハントはアル中の主婦役には合わないわ。
どこか清潔感がある人で、ここが無理があったな。
ケビン・スペイシーはもっとすれていた方がいいなぁ。二人の純愛はあまりに
気恥ずかしくて赤面してしまったわ。
そうなの!ヘレン・ハントが演じるとなんでも純愛になっちゃうのよね。
とか言いながら、好きな場面はまさにそれ。
仕事のせいで初めてのデートに40分以上も遅刻する。息子に「遅刻すると
相手は尊敬されていないって(respectされていないって)思うよ」と言われる。
タクシーで約束の店にたどりついた時、彼は待ちくたびれて店から出たところだった。
ヘレンはハイヒールがすっぽ抜けたまま、待って!とかごめんなさい!とか言うかわりに
思わず「I respect you!」って叫ぶ。
 
へへ、こういうのに弱いんだ、私。
 
 
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