2001年その3


バガー・ヴァンスの伝説 THE LEGEND OF BAGGER VANCE(2000年アメリカ)

おちぶれたヒーロー、自信を失ったヒーローが人生に再び挑戦して復活して勝利を収める。
そのクライマックスまでのドラマをはらはらと楽しむけれど、主人公が最後に成功することを
信じているし、結末が見えている映画でもある。
 
こういう映画を楽しむには、はじめから心洗われる大人のおとぎ話を見に行くんだ!と
「楽しむ」決意で行くに限ります。
少年と主人公がロッカールームで話すシーンは泣けました。
脇のストーリ(少年と彼の父の)がうまく効いていて、バガー・ヴァンスの支えというより
この少年の支えが効いているからこそ話が引き締ったと思いました。
マット・デイモンはなぜか、ぶっさいく!て思う時があって顔はあんまり好みじゃ
ないんだけど(^^;;この役にはとてもはまっていて良かったです。
やっぱ、すがすがしいカタルシスは悪くない。
 
少年サンデーを読んでいる人にはマットデイモン=ダンドー君って感じですね。
思わず、飛べ!ニコボール!って言いたくなりました(笑)。

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アイアン・ジャイアント The Iron Giant (1999年アメリカ)

評判高かったから、一度は見なくちゃと思っていました。そして、
期待を上回る良さでした。
 
舞台は1950年代冷戦下のアメリカ、メイン州の小さな町。
遠い宇宙から地球に落ちてきたロボットと少年の友情の物語。
どう考えてもよくある筋になりますよね。E.T.などもそうでしょう?
それでも感動する映画とあまり感動しない映画があるのはどうしてでしょうね。
 
細部に宿る感動の積み重ね、なんでしょうか。
とても丁寧に「命とは?」「銃とは?」「自分自身を生きるとは?」を描いています。
そしてユーモア精神があるのも良い所です。昨晩と今晩2回見て、2回とも
うるうると泣いてしまいました。
 

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ノイズ The Astronaut's Wife (1999年アメリカ)

うーん、これといった特徴のない映画。ひねりもなくて凡作。
ジョニー・デップの顔が見れただけ。頼むよ、フランス戦でがっくりきてるんだから
映画くらいは面白い作品であっておくれ。。との願いもむなしく、、。
 
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アンドリュー Bicentennial Man (1999年アメリカ)

うーん、なんだかとってつけたような映画なんだ。
ロビン・ウイリアムスがイメージそのまんま善き人?ロボットを演じるし筋書きも
予想通りだし、面白みが無いといったら失礼かもしれないが、、面白くない(爆)。
 
死があるからこそ人間であり生が輝くのである。
で、一人の女性を愛したアンドリューはロボットのままなら不老不死なのに、
自身をより人間化して老化する体にして共に死ぬ事を選ぶ。
 
でも変なのよ。人間化するといってもそれは見た目の事。
気持ちは全然変わっていない、というか、もともと人を愛する気持ちをもった彼だったわけで、
見た目を人間にする事に一生懸命なのはとてもうんざりする。ブラックユーモアかい?って
言いたくなる。
心は人間だけれど見た目がロボットだから彼女から愛してもらえない、
なんてのが隠れたテーマだわ、これじゃ。
 
ピノキオだったら人間になりたいともっと馬鹿な事をしでかす、それが物語を面白くさせているし、
人魚姫だったら人間になると言葉を失うというせつない運命があり、それが物語を豊かにする。
このアンドリューはそういうものが全く無い。
この辺はアメリカ的というのだろうか・・・
 

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宮澤賢治 その愛 (1996年日本)

はははっ(#^o^#
三上さんが見たくて借りちゃったんだ(爆!)
 
私は三上博史をテレビでも映画でも「それが答えだ!」以外見たことがない。
だから「この世のはて」というTVドラマに主演となってたので、まず本屋で
野島伸司さんのノベルを立ち読みしてみた、、と、げげげー!!というほど
荒唐無稽の内容だった。ひどいっ、こんな変な奴に出たのか・・
(最後まで立ち読みする私も私だけれど、、笑)
三上像が壊れるのが嫌で(笑)レンタルビデオでそのドラマを借りるのを止めて、
他に出ているものは無いものかとうろうろして、、、これを見つけた。
すごく恥かしい題だ。以前だったら絶対借りなかっただろう(^^;;
 
ところが・・・いやぁ、悪くない。
宮澤賢治像が変わった。こんなのたうちまわるような賢治だったのか。。
雨ニモマケズ、の詩が好きではなかったが、それは優等生のようなくさいイメージが
あったからだ。でもこの映画の最後に三上さんの声でこの詩が朗読されると
七転八倒した人生の中でこの詩を読んだのか、と、思わず泣けてきた。
何かに夢中になると他が全く見えなくなる、愚かしく狂おしくせつない賢治だ。
そんな映像の賢治とは対照的に手紙や詩を朗読する声は清明で美しく落ちついている。
この声を聞くだけでも借りる価値あり。
特に永訣の朝の詩はとても好きだったのでこの声で聞けて嬉しかった。
 
しかし・・・映画の最後に流れる歌が・・・ああ、これが感動をぶち壊し・・
カズンって一体今どこに。
 

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鮫肌男と桃尻女 (1998年日本)

原作を読んだことないからこの味が原作のものなのかどうか、わからないが
この監督のしゃれていてバタ臭い、このセンスが浅野忠信の味と合っていて
とても面白かったぁー。最近みたものの中では一番だね。
オープニングの絵コンテも感じが合っていて上手いなあと思ったら石井克人監督自身の
描いた絵だったのが妙に納得。音楽も最後まで良かった。
 
数々のずれた会話が絶妙でつぼをつくし、オロナミンCの昆ちゃんなど小道具も効いている。
岸部一徳さんはこういう役が本当にはまる。
鶴見辰吾さんはサイボークのような役がこれまた合うね。
しかし、驚きは若人あきら(我修院達也、、なんちゅう名前に改名したんだっ、笑)。
彼の動作ひとつひとつ、彼の歌う「ドナドナ」、もうすべて笑い泣き!
凄すぎるよ、この人。
島田洋八もすごくはまっていて、、ああ,情けないぞ(笑)。
 
浅野忠信ってなんでぶるっとするくらいカッコいいんだろ。
美形というわけでもないのに、なぜかどきっとする瞬間がある。
 

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遠き落日 (1992年日本)

これまた三上博史が主演だから、と借りて見ました。
(そういえば公開された当時はくっさーと馬鹿にしていたかも。笑)
 
三上さんはよくやっている、が、このいかにも松竹!って感じの映画は私の好みではなくて、
『こんな映画を千なんびゃく円も出してみんな見たんかなぁ??』
『一体どんな観客層に見せたくて企画したんだろう??』
というのが正直な気持ちです。
なんで松竹映画って松竹映画って感じなんでしょうね(わかってもらえる???)
 
製作奥山和由、脚本新藤兼人、監督神山征二郎、と先に見た宮澤賢治と同じ面子で、
というか、こちらの方が先に作られているわけですが、まあ、なんていうか、
おんなじ感じです。。いや、宮澤賢治の方がずっと良かったな、私は。
 
野口英世とその母の物語ですが、赤貧、障害、挫折までが面白かったかな。
特に金を無心する時の面の皮の厚さが伝わるのなんのって。
いやらしいまでにすがりつく、親切を強要する、うざったい英世像が目に焼き付きました。
ああ、三上さんは賢治にしろ英世にしろ、究極のあつかましさが似合います。
裕福な家に生まれた賢治は生家の援助を頼りきっていたし、赤貧の英世はまわりの人から
恵んでもらうのに頼りきっていて、両極端の二人なのですが実はそっくりなんです。
このあたりが上手いとも言えるけどおんなじだとも言えて、三上博史という役者の型が
決まってしまっているようで不満が残りました。
 
貧乏と醜い手のコンプレックスがアメリカに行って癒されてしまい、あとは日本に凱旋する
だけなので、物語の後半部分の盛り上がりが弱いし日本では癒されなかったという部分が
中途半端でした。
 
そして、また歌が・・・今度は和田アキ子だった・・
歌が流れ出すと急に映画じゃなくて火曜ワイド劇場?になってしまいました。
 

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宮澤賢治、つけたし

「遠き落日」をみて思ったんだけど、「宮澤賢治」の方がずっと良かった理由に
仲代達矢の父親像があげられる。
純粋さは素晴らしいとは言え、何をやっても中途半端になる賢治。
理想を追う危うさ、自分勝手さに翻弄されながらも限りない愛を注ぐ父親。
遠き落日の母親像とは違って、この父の愛は切なく胸にひたひたとせまってくる。
 

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スワロウテイル Swallowtail Butterfly (1996年日本)

ああ、これもまた三上博史だから借りたの・・(赤面)。
公開当時、息子が見に行って帰りにはサントラCDを買って帰ってきたのですが、
やっぱり当時は私ちょいと馬鹿にしてたの。。ごめんねぇ>息子くん
 
三上さんは悪くないけど、でも、江口洋介と渡部篤郎が良すぎて(爆!)困るわ。
うーーん、これは美形の悲劇って奴ね。
三上さん、きれいなお顔すぎて、あくのある顔に負けちゃうのよ。
渡部篤郎はあくがあるというより何て言うかすっとぼけた味と空恐ろしさが
同居している感じで出番が少なくても強烈な印象。私はこの人の演技を初めて見たので、
売れてる人だともちろん知っていたが驚きました。
それにしても一体何者なんだよー!ラン(渡部)は!
江口洋介はあくまでも格好良くてぐっと泣きが入る役どころで、ホント江口さんや
渡部さんが美味しい所を持ってっちゃったんだよねえ。
 
ストーリーは前半と後半で違和感があるなぁ。特に桃井かおりはものすごい違和感があり。
違う役者を使って欲しかったなあ。なんというか、「カックン」ってなったわ(笑)。
円都をあそこまで描いたわりに東京はこの日常と変わりない。その日常の象徴として
桃井かおりがスクープ記者をやったわけだけれど、
阿片窟や移民、難民だらけの円都といつもの東京というのはあまりに無理があるんじゃないかなあ。
 

娼婦の母親が仕事をしている間少女はいつも狭いトイレにこもっている。
ふと空いた窓からあげはちょうが入ってきた。
少女はあげはちょうをつかまえようとして、手を伸ばし、追って、、逃げないで欲しいと
願って窓を閉めた、窓はあげはちょうをはさんで閉まり、ちぎれた羽がひらひらと落ちた、、
これが話のすべて。
つかまえたと思った夢が無残に壊れる、いいや、自分が壊したんだ、自分がちょうを殺したんだ、
それとも・・・死んだちょうが自分なの?
あげはちょうは本当は死んじゃいないよ、ほら、胸に刻まれたタトゥーとなって一緒に生きてる・・
そう思ってもいいでしょう?
 
最後まで円に振り回された哀れなフェイホン三上さん(T_T よよよ)。
あげはちょうが飛ぶのを夢みた、あのシーンは三上さんならではの瞳でしたね。
そうか、考えて見れば一番現実にいそうな人物だったんだよね。みっともなさと格好良さ、
弱さと強さを見せる役だったんだ。
 
で最後のCHARAさんの歌が心に染みてねえ、、見終わった後の音楽って大切なのよね。
ちょいと息子の部屋に行ってあのCD探してこよっと。
 

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スワロウテイルメイキングビデオ『円都』

岩井俊二監督や製作スタッフが語るYenTown。
物作りの生の声を聞くとよくこれだけのものを作り上げたとその熱意にうたれる。
私的にはもっと東京を「円都」のネガのような都市にして欲しかったのだが、これは
限られた予算の中では無理な注文だったろう。
円都にしても部分をリアルに作る事で全体を描かずとも十分その街が伝わってきた。
そうだ、確かに全体なんて一度も出なかった、、と初めて気付いた。
 
私がこの監督に感じるのは「ラブレター」や「打ち上げ花火下から見るか横から見るか」と
同様に全体に流れる切ないまでの叙情性と、一方でとても論理的でしっかりした構成力だ。
作りたいものが分かっている頭の良い監督だと思う。
 

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サトラレ (2001年日本)

泣き路線だと分かっていたのに、製作者の思うつぼ!
はんかちで涙をぬぐっているうちにアイラインが全部とれてしまいました(笑)。
 
中3の息子も「号泣したー」と鼻をすすりながら席をたちました。
(素直でいい奴だ、、って親ばか!)
 
さて、何が予想以上に良かったかというと、あくまで中心を安藤政信くんと
八千草薫さんにして恋愛路線を抑えたことだと思う。
鈴木京香さんも決して悪くなかったが、この映画の中では彼女と「サトラレ」との愛は
まだ機が熟していない。そこを無理に描いてしまわなかったから余韻も残ったし、
「サトラレ」と祖母の愛ー「サトラレ」の人を愛する純粋な気持ちーが強く伝わった。
あの独白(っていうか、サトラレの場合心で思っている事はすべて
周りの人に筒抜けなので、安藤くんの独白だらけになるのだけれど)
手術中の、そして手術後の安藤くんの独白には泣けた・・
「くそぉ、、ここは作り手が泣かそうと狙っている所なんだから
泣いたら思うつぼだ」と思いながらも思わず涙が・・
 
分かりやすすぎだし、本広監督の味は「おっと、踊る大捜査線だヨ!」、
カメラ、音楽、編集も通俗的な部分が多いのだが、大衆を意識しながらも
なんていうか誠実な目が感じられ嫌いではない。
お茶の間路線は脇役が固め、安藤くんがメインの所は安藤くんのキャラを
大事にする、そういうバランス感覚が上手いのだと思う。
今回は舞台となった郡上八幡の風景がとても美しく、特にラストの桜が目にしみた。
 
寺尾聡さん、年をとるごとに宇野重吉さんに似てくるねえ。。いやはや。
高松英郎さんもセリフがないのに存在感がさすが。
 
最後になぜ「サトラレ」を見ようと思ったか?というと、脚本が「戸田山雅司」さん
だったから。そう、「それが答えだ!」の脚本家はどうしてるのかなぁ、なんて
思って「戸田山雅司」をネットで検索してみると、「サトラレ」の脚本とあった。
不思議な偶然の糸に引かれて、映画館に行った。
そして見た映画は美しい自然、人と人とのつながり、そして涙涙の人間的成長。。
あれれ、、似てるね・・そうか、こういうのが上手い人なんだな。
 


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