2001年その4


奇人たちの晩餐会 Le diner de cons (1998年フランス)

いやぁー、激辛極辛のコメディだった。強烈な笑いのパンチ!!
ここまで自分と他人を笑い飛ばせるのは強靭な精神力だと思うよ。
いかにもフランスらしい(ってフランス人に知り合いなんていないけど、笑)
辛辣で皮肉屋で人をこけにする笑いなんだけれど、洒落て粋で泣ける部分もある。
 
主人公は裕福でハンサムな小説家。彼の楽しみは週に一回友人たちとひらく晩餐会。
彼らはそれぞれ「大馬鹿もの」をゲストとして招待し、誰が連れてきたばかもんが
一番のばかもんかを競っている。くっくっく、なんてお馬鹿な奴なんだっとゲストの
話をききながら心の中で爆笑するのを楽しみにしている。
 
そして今回彼がみつけたばかもんは、、それはそれは馬鹿な奴だったのだ。。。
 
あとはノンストップに馬鹿の上塗り(爆笑)。
一夜にして人生がめちゃめちゃになるほどの不運が襲い掛かる。
これもすべて自業自得。自分が世間のばか者を馬鹿にしていたむくいなのだが、が、
が、それにしてもひどすぎる〜!!(笑)
 
主人公と大ばか者を演じた2人が素晴らしいし、脚本も素晴らしい。
画面はほとんど小説家のリビングでの2人のやりとりに終始する。
最後のオチまで憎らしいほどに上手く出来ている。
 
注意事項としては、おかゆじゃなくてこってりしたフレンチフルコースなので
調子が良くないともたれるかもしれない(^o^;;


---------------------------------------

人生は琴の弦のように life on a string (1991年中国)

大変有名な作品だけれど、今ごろ見ました。
陳凱歌(チェン・カイコー)監督の作品は評判の高い作品はどれも見ていなくて、
「テラコッタウォリア」と「さらばわが愛・覇王別姫」しか見たことないんです(^^;;
ようやく本来の姿を見ることができました。
 
堂々としていて、しかも繊細です。
写実的な描写の中に、ふと現れる劇場空間のようなイメージ。
 
荒涼として茫々たる砂漠、延々と連なる山々、荒れ狂う黄河(すごすぎ!)
そんな圧倒的な自然の力と、小さな人間たちの生。
 
琴を奏で歌を歌うと、その調べは広い大地に流れ渾然一体となる。
 
自分が生きている意味は?これまでの人生はなんだったのだろう?
これから自分はどこへ行く?
 
男は琴の修行に一生を捧げた。
盲(めしい)の彼は彼の師匠の臨終の際に「千本の弦を切れ。さすれば琴の秘密の場所が開く、
中には伝来の処方箋があり、その薬を飲めば世界が見える、」と言われ、
琴をひたすら引き続け今995本まで来たのだ。
彼のわざは、人々をして「神さま」とまで言わしめる。
彼のひく琴の音は闘う人々の心までもいさめ癒す力がある。
 
若い弟子を連れ旅を続ける彼(もちろん弟子も盲人である)が最後に赴いた村で、
弟子は村の娘と恋に落ちる。
 
女よりも琴だ。琴はけっして裏切らない。
さとす師匠に弟子は「師匠は僕が羨ましいんだっ!」と言い放つ。
自分が手にし得なかったことどもを思い起こし心乱れる彼。
いや、しかしあと1000本まで2本なのだ、
処方箋さえ手にすれば、今まで見ることあたわなかった世界が見えるのだ、
夜明けがくるのだ、、、
 
1000本目の弦が切れたとき、彼は知る・・・中に入っていたのはただの白紙だったと・・・
 
自分の人生がとてもとても空しく思え「神様なんかじゃない、ただの盲人だ」と
自嘲する彼に食堂の亭主が言う。
「あなたのこれまでの人生は幸せでしたよ」
 
そう、千本の弦を切るまでに、喜びの場で、哀しみの場で、争いの場で、
街中で、村の広場で、川縁で、山頂で、
彼は魂をこめ琴をひき続けてきたのだ。
確かに自分の人生を生きたのだ・・・・
 
恋人の死、師匠の死、を経て弟子もまたこの世に自分のある意味を
問い掛ける旅に発つ。
 

それにしても!!このお師匠さんを演じる役者さん、すごくない?
リウ・ジョンユアン〈劉仲元)が普通に背広なんか着てる姿、想像できないわ。
それと、なぜか急に北野たけし監督の「HANA−BI」を思い出した。
旅を続けるふたり、薄青い空にとぶ凧、、空気が似てない?
 
 
---------------------------------------

ホワイトアウト (2000年日本)

原作を読んでいるので、どうなるかと思ったが、分厚い一冊を無難にまとめていた。
だが、映画ならではの感動がちょっと薄かった気がした。
これは単に私が本と比べてしまったせいかもしれない。
 
しかし・・・よく撮った、というのが一番の感想。
あの雪の中の撮影は大変なものだったろう。映画の内容、主人公のがんばりよりも
織田裕二や撮影スタッフのがんばりの方が心に残ってしまった。
ハードボイルドな映画じゃなくてハードボイルドな映画作りって印象。
 
たまたま1ヶ月前にレンタルビデオで借りて見た「振り返れば奴がいる」、
これがまずかった!!だって、織田裕二と石黒賢のコンビで、しかも石黒賢が死ぬって
所も一緒なんだもん。二人が死について話している場面など、あのドラマとだぶって
しまった。。でもぉ、ドラマを借りた時は1ヶ月後に「ホワイトアウト」を見るとは
考えていなかったし。。偶然なんだよねえ。
 
もひとつ不思議な偶然を感じた・・・
サトラレを見た感想に書いたけれど、もともと『それが答えだ!』というTVドラマを
ふと思い返した事が発端で、その脚本家の作品だからと先週「サトラレ」を見に行った。
この『ホワイトアウト』は、特に何も考えずに借りたわけだが、監督が若松節朗さんだった。
「それが答えだ!」の監督さんでした。
 
 
---------------------------------------

ギターはもう聞こえない J'entends plus la guitare (1991年フランス)

英語訳はI Can No Longer Hear the Guitar 。
フランス映画については全く無知なので、この作品がものすごく有名な監督の
「知る人ぞ知る」有名な映画だとは知らずに借りました。
フィリップ・ガレル監督といわれても誰それ?ニコに捧げたと言われても誰それ?の
私には、そのあたりのリング外の面白さが分かりません。
 
絶賛し、生き方まで影響を受けた、という人がいる一方、退屈で寝ちゃったという人も
いるような映画でした(笑)。
 
人を愛するとは何か?愛とか何か?映像と言葉と形(人体の撮り方が美しい)で
淡々と描いた。でも禅問答のようでなにやら分かったようで分からなくて・・
「愛してる」と決して口にしない男に不満をもらす女。「死ぬまで愛してるよ」と口にだす男に
不信を感じる女。結局言葉にしてもしなくても「愛」を定義することは難しい。
 
「幸せがいつか壊れる予兆」が好きなだけなんだ。
いや、それはギリシアの冷笑主義だ。
理想の女を求めているのか?女なんて誰でも同じさ、だからずっと同じ女と一緒にいる。
 
哲学談義のような会話が繰り広げられる映画なんですが、見ている方は緊張を
強いられる。ぼおっと見ていられない。
 
私の正直な感想は、、、
愛はどこにあるんだ。。と永遠に探しつづけている男にイライライライラ。。
カバヤロー!みんな苦悩を抱えているんだよー!でした(笑)
 
あっそうだ、で、一体ギターってどこで出てきた??ギターってあったっけ??
 
 
---------------------------------------

天井裏の散歩者 (1993年日本)

これは70分少々の作品。江戸川乱歩劇場というものだった。
三上博史主演。
乱歩の美とエロスの世界を描くということで、三上さんの粘液質キャラが
とても合っていた。天井の下にうごめく人間達を見る楽しみ、臆病でかつ傲慢な
楽しみで、しかも発展性のない虚無的な楽しみだ。
 
映像は画面を区切る直線が印象的で、ななめに映された部屋や柱が独特の世界を
作っていた。
 
 
---------------------------------------

MONDAY (2000年日本)

SABU監督、堤真一主演。俳優も定番のみなさん。
これもまた堤キャラ全開の作品だった。
言いたい事をなかなか言えない、人からつい面倒な事を押し付けられる。
そんな不運を呼び寄せているような人間にアンラッキーが雪だるまのように重なる。
心のうちにたまっていた暗いエネルギーが爆発する。
 
堤真一さんは弱者の反動という感じがとてもよく似合う。
湿った情念とあどけない笑顔、それに今回は踊りもなかなか(笑)。
 
前半のお通夜のブラックな味わいが特に好み。
 
一言、映画の筋とは関係ないことだが、日本の俳優って層が薄いのかなぁ。
なんだかいっつも同じ俳優さんばかり見る気がする。
 
 
---------------------------------------

エリン・ブロコヴィッチ Erin Brockovich (2000年アメリカ)

インサイダーの時と同じなのだが、これが実話に基づいた話だという事が
驚きだ。そうだと知らなかったらなんと都合よい話なんだろうって思う所だ。
 
ジュリア・ロバーツ演ずるエリンは、平均的な日本人なら辟易するほど攻撃的だ。
自分をばかにする者に対して「おだまり!ドーナツ女!」とか「センスの悪い靴はいた
かかしのような女!」なんて怒鳴るし、使えるものは全部武器にして「おっぱいで
やるっきゃないわねっ」と体当たりする。無教養や社会的地位の低さに対する
いじめに引き下がらず闘う。
ものすごくきつい女なのだが、情熱と本気さえあれば、無学だろうとなんだろうとやれるんだ、
という強烈なメッセージを残す。一方彼女を助ける弁護士もいい味をだしていて
あしたのジョーと丹下段平を思い出してしまった(笑)。
明るい「あしたのジョー」って感じじゃない?
 
 
---------------------------------------

ジェーン・エア Jane Eyre (1944年アメリカ)

完璧!!
ジョーン・フォンテーンとオーソン・ウェルズの白黒版。
一途に人を愛する清らかな乙女。「霧の中から現れた君を見た時妖精かと思った」
んなーんてセリフを言っても歯が浮かない彼女の美しさ、可憐さ。
そしてこんなセリフを言っても歯が浮かない彼の苦悩と魂の救いを求める瞳。
 
こういう映画が見たい!って強烈に思う時があるんです。
映画のなかの映画って感じの世界。
 
アダムの肋骨からイブを作った話が下敷きになっているのだと思うんだけれど、
「私のリブ(あばら)から糸がのびていて、君のリブにつながっている気がするのだ。
もし遠くに離れてしまうと糸が切れ、ここから血が出るのではないかと思う」
あああぁん、、は、はずかしい、、、いけませんわ、ウェルズさま。。。
泣いたり身悶えたりして幸福な時間を過ごしてしまいました(笑)。
 
「言え、言うんだ、ジェーン、私と結婚すると言ってくれ!」
はいっ!え?わたしじゃない?
ああ、、「ジェーン・エア」はどこにしまったっけ?物置を探さなくちゃ!(爆)
 
 
---------------------------------------

13ウォリアー The 13th Warrior(1999年米)

時は922年、アントニオ・バンデラス演じるアラブ人大使が
北方の民バイキングたちの闘いに13番目の戦士として同行する物語。
これがねぇ、、、なんといっていいか、悪くはないがあまりはらはらもしない。
どうやら場面に合わせてラテン語とスェーデン語を話しているらしいが、アラブ人の
バンデラスが英語をしゃべっているのに、そんなの意味あるのかしら(笑)。
 
で、900年頃って一体何が起こっていたっけ?
日本は平安時代、唐は滅亡、五代十国時代へ、ヨーロッパではフランク王国分裂、
神聖ローマ帝国誕生へ、、、な〜んて、すっかり忘れてます(笑)
 
 
---------------------------------------

キッド The Kid(2000年米)

予想より良かった。ラストがちょっと不満だけど、見て損はない。
 
40歳の誕生日を目前にしたブルース・ウィリスが8歳の自分と出会う。
はじめはどたばたしていたが、次第にとてもデリケートな人生の問題を描いてゆく。
誰だって突然子供時代の自分が現われて「ハロー!私はどういう大人になってるの?」
と、たずねられたらどうするだろう。
「ふふふ、素敵よ、楽しみにしてらっしゃい」
と答えられる人って多いの?
(たぶん私は「ごめん!うまくいかないものなのよ」なんて言ってしまいそう)
 
誰もが自分の思い描くとおりの大人になれるわけじゃない。
宇宙飛行士になりたいと思う子供の何人が夢をかなえる事ができる?
でも、それでも人生は挑戦するに値するもんなんだよ、というメッセージが
ディズニー製作らしいところなんだけど、このニュアンスだけで止めておけばいいのに、
さらに30年後のブルース・ウィリスを出したところがイマイチだったなぁ。
 
 


  シネマに戻る   ホームへ戻る