2001年その7


シーズン・チケット Purely Belter (2000年イギリス)

ちょっと複雑な気分。けなしたくないのだけれど、なんだか複雑。
というのは、喜劇なのか悲劇なのか、分からなくなってしまう内容なのだ。
あまりにも悲惨で陰鬱な展開。
アル中で暴力をふるう父親から逃れて生活保護を受ける主人公一家。
ドラッグ漬けの姉、ぜんそくの発作をかかえる母、いじめが趣味の教師、、、
将来の希望のひとかけらもない!
夢が欲しいんだ、敬意を払われたいんだ、ニューキャッスル・ユナイテッドのシーズンチケットが
手に入れば何かが変る気がして、、。
 
結構泣けるエピソードもある。特にアビスパの降格を見てきたばかりの私には、
サッカー観戦の思い出を語るシーンなど、涙なしには見れなかった。
試合内容じゃなくて、その時の凍えるような寒さとか、あったかい紅茶とか、そういう
色々な物すべてがサッカーの思い出なんだ・・うんうん・・・
それに主役2人の男の子の演技は悪くないし・・
でも、でも、やっぱり変。
むちゃくちゃやって罰を受けることになったけれど、でも、結構ラッキー!?っていう、
妙に能天気な終り方(笑)。いいのか、これで?
 
P.S.
実はニューキャッスルのホームスタジアムの横にはあの建物は無いらしい。
あれが合成だとは、残念。
 
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ディディエ Didier(1997年フランス)

とぼけた映画。
ハッピィエンドの「犬の恩返し」といった話です。
監督兼主役?主犬?のアラン・ジャバがまさに犬が人間の形になったらこうだろうという
しぐさで笑わせますが、フランス風の笑いなのか、それほど大受けできないわたし。
なんていうか、フランス映画の笑いってどぎついんだよね。
ただし、パリサンジェルマンのスタジアムが見れるのが楽しい。
珍プレーを楽しそうに見ている観客のひとりになって、お気楽映画を楽しもう。
でも、あれでB落ちをまぬがれるというのは・・・(^^;;
 
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勝利への脱出 Vistory to Escape (1981年アメリカ)

難しいことを考えるとツッコミどころがあるだろうが、
サッカー好きには単純に楽しい。
第二次世界大戦中のドイツ。サッカー元ドイツ代表だったナチの将校が捕虜の収容所で
イングランドの名選手マイケルケインと出会い、試合をもちかける。
靴も食料も与えられると聞き、軽い気持で取り組むが、試合はナチスのプロパガンダに
利用されることになる。
やるからには本気で勝ちたい、と、各収容所にいる主だった名選手をも呼ぶように頼むと、
表向きは存在しないことになっている東ヨーロッパの国の捕虜(強制労働所に入れられている)さえも
試合のために連れ出す将校。
 
ケインは世界が戦争だろうが、ナチがどうだろうが、サッカー以外は重要じゃない。
シルベスター・スタローンは単に自分が脱走したいヤンキー野郎。
イギリス将校は抵抗のパフォーマンスとして脱走をさせたいお気楽者。
本気で捕虜の事を思って脱走させようとしてるのではない、ポーランド人が見たらきっと
情けなくなる筋なんだけれども、サッカーを楽しむ映画だと割り切ると、
随所に嬉しくなる場面がある。
 
サッカーこそが人生だという途方もない夢がここにある。
 
連合国選手を演じるのは本当の名選手揃いだそうで、世界のサッカーに無知なので、調べてみました。
 
・私でも知っているサッカーの王様ペレ。
・ボビー・ムーア イングランド代表キャップ108、WC優勝時のキャプテン。
・オズワルド・アルディレス アルゼンチン代表。びっくるするほど上手いシーンが!
・Paul Van Himst ベルギーが誇る名選手。ベルギー人が選ぶ20世紀を代表するスポーツ選手の
第3位だそうです。なんとAnderlechtで235ゴール!!代表では30ゴールあげています。
・Kazimierz Deyna ポーランドが誇る名選手。1974年WCでは3位決定戦でブラジルと対戦。
ゴールを決めました。72年のオリンピックの得点王です。
・マイク・サマービー Manchester City の名サイド。 現在高級Yシャツメイカーとなっていて、
顧客にはスタローンやデビットボーイがいるって?!
 
・Robin Turner イプスウィッチ タウン 1981年 UEFA CUP WINNERS
・John Wark (II) 同上。ヨーロッパ選手権で最多ゴール14をあげた 
・Russell Osman 同上
 
などなど、そうそうたる面子です。
ぽこぽこしたサッカーボールが時代を感じさせ、肉弾戦も迫力あり、結構熱くなれます。
 
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ザ・カップ the Cup (Phorpa)(1999年ブータン・オーストラリア)

監督も出演者もほとんどが実際のチベット仏教僧だそうです。
一般にはあまり知られていないチベット僧院の生活を垣間見るという意味でも
貴重な映画でしょう。
 
チベットから亡命してインド北部で生きる僧侶たち。親元を離れ亡命してきた子供たち。
ここには、数々の対立、対比があります。
もちろん、まずは中国の圧政とチベットの関係がありますが、さらに
チベットに戻ることを夢見る人と、ここでの生活に根を下ろしている人。
戻る家もない子供と、中国に残っている母を慕う子供。
伝統と近代化。
これら様々なものがワールドカップという激突の中で昇華されていきます。
 
舞台はヒマラヤ山麓の僧院で、行き仏のような僧院長、厳しい先生、そして
青年から子供までの僧侶たち。彼らは日々のお勤めの合間にコカコーラの空缶を
蹴って遊んだりもする。
 
主役の少年僧ウゲンは一体どこで手にいれたのか、僧衣の下にロナウドのTシャツを着て、
部屋は一面サッカー選手の写真やポスター、、とにかくサッカーに夢中。禁欲的で
浮世離れした生活の中ではちょっとばかり枠をはみだしている、問題児の一休さんって感じです。
 
真夜中に僧院を抜け出して、98WCの中継放送をパブ(のようなもの)に観戦に行く。
そして、とうとう決勝戦のためにテレビを借りたいと先生に願い出る。
さあ、どうなりますことやら・・・
 
スポーツって不思議ですよね。
サッカーワールドカップの事など何も知らない僧院長が先生に訊ねるシーン。
「2つの文明大国がボールを??そこには暴力はあるのかね?」
「たまには」
「セックスは?」
「全然」
「で、勝者は一体何を得るんだね?」
「カップです」
「カップ???」
 

主役の少年僧ウゲンと先生役の僧侶はとても素晴らしいのですが、
なんと実の親子だそうです。思わずほろりとする場面があるんですよ。
 
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耳に残るは君の歌声 THE MAN WHO CRIED (2000年イギリス・フランス)

本当は『メメント』を見ようと思って外出したのですが
まだ上映していなくて、それでこの映画にしました。と言っても
かなり離れた映画館だったから走って走って(笑)。
 
サリーポッター監督ということで予想していたとおり、ユダヤ人であること、
人種差別とは?自分は何者?どこから来てどこへ行く?といった
いつものテーマがあります。
そして、前回見た「タンゴ・レッスン」で強く感じた音楽の使い方の巧みさを
(巧みすぎて、映画よりも印象に残ってしまいサントラを買ってしまう、汗)
逆手に取ったというか、堂々と使ったというか、つまり
音楽の持つ力で映画を語らせています。と同時に声にならない悲痛な叫びが
満ち満ちています
 
ユダヤ人、ウェールズ人、ロシア人、イタリア人、ジプシー、それぞれの民の
持つ言葉と音楽。それは祖国を無くした後も自分をアイデンティファイする力を
持つ。人はそれぞれの言葉と音楽に強くつながっている。
クリスティーナ・リッチは、一時期やばぁ−と思ったけれど、結構良い女優さんに
なってますねえ。女優にあるまじき二の腕の太さがどうしても気になるけど(笑)
驚くほど美しい瞬間があって静止画が似合うんです。
ジョニーデップも「やめてぇー−」と身悶えするほど格好良く撮られていて、
これは女性監督だからかなぁ。やりすぎと思ったほどです(笑)。
この二人は静止画像カップルと呼びたいわ。口に出さなくても目でわかるって奴が
じっとりしすぎて、予想通り過ぎて陳腐になる危うさがあります、が、
ケイト・ブランシェットが加わって世界に厚みが出ました。
この女優さんは、不思議。
『オスカーとルシンダ』『エリザベス』どれも他の女優にない不思議な魅力を放ってる。
もろくて強い、孤独で寂しがりやで凛々しくて、、、とにかく彼女、良いです。
 
あと、日本人(というか歴史に関心がない人)にはピンとこないかも、説明するような
セリフが無いので話に入りやすい人と入りにくい人がいるかもです。
冒頭、主人公とその父の映像には1927年ロシアとしかインポーズがでませんが、
黒い小さな帽子と黒いスカーフを見ればユダヤ人だと分かるし、その頃のロシアで
むごいユダヤ迫害があったことが思い浮かぶ、、かどうか、、とかね。
 
音楽はいいですよ−。タンゴレッスンのヨーヨーマのチェロも良かったけれど
今度のテノールも泣けます。
 
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メメント MEMENTO (2000年アメリカ)

これは本当に面白いです!
 
オープニングからこの映画の本質そのもの。
見る見るうちに消えていく記憶。
観客はいつしか主人公と一体化させられている。
というのは、主人公は前向性健忘といってつい先ほどの記憶がすぐに
失われてしまう障害をとある事故で受けてしまったんです。
私たちは短期記憶と長期記憶の2パターンの記憶メカニズムを持っていて、
例えば一週間前の朝食なんて忘れているように(え?昨日の朝食でさえ?!)、
普段の行動は短期記憶ですぐに忘れるように出来てる。
でも何か覚えておこうと思う事は短期記憶から長期記憶へと移される。
この移される脳の機構が病気や事故で損傷を受けると、、、
極端な場合何一つ覚えていられない。
ついさっきの事がもう分からない。
 
で、この映画は後ろから前に戻っていく作りになっていて、
シーン10のあとに、シーン9がきて、そのあとにシーン8が、、となる。
繋がりが分からずにシーン10の話を見る。その時点で繋がりの記憶がない主人公と
同じになっているんです。全く訳のわからない状況から始まるわけ。
え?一体何??どうなってるの??
で、シーン9を見る。
え!?そういう事だったのね?!でも、今度はなんでこうなってるの?
で、シーン8を見る。
え?え?そ、そういう事だったの?!でも、今度は一体どうして?
で、シーン7を見て、え?え?え?そうだったの?で、今度は何これ?
シーン1に至って、、、ガーーン!
 
ものすごく知的で刺激的で挑戦的なエンターテイメント映画です。
記憶ってなんだろう。
記憶が人を形成すると言う事かしら。
でも結局、人は自分の記憶したい事しか記憶しないのかも・・
 
この映画、まじお勧めなんですが、しんどいって思う人もいるかも、です。
というのは、館内で寝てしまった人を何人か見かけました(爆!)
集中力が必要です(笑)
実は私も真相に自信がない(爆!)
登場人物のセリフを鵜呑みにしていいのかな・・・それともだまされているのかな・・・
ビデオが出たらもう一回見ます(^^;;
 


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