三上 博史「ヘドウィッグ・アンド・アングリーインチ」を見る
昨年の公演が好評だったので、再演決定!! という話に期待がふくらんでおりました。

オフブロードウェイでロングランだった作品で、映画化もされているけれど、
なんとなく食指が動かなかったので、これが初見です。

東ドイツ生まれ、性転換手術の失敗で、1インチ、ペニスが残った男/女の物語。

子供の頃、ママがしてくれたお話。
大昔の人間はね、手が4本、足が4本。背中合わせでくっついていたのよ。
楽園を追放されたときに神さまの怒りのイカヅチがひとつだったものを引き裂いたの。

美少年だった彼に惚れたアメリカ兵(おそらくBear Gayなんだ)がくどく。
結婚して一緒にアメリカに行こう。身体検査があるけれど、大丈夫、
切っちゃえばいいのさ、自由を手に入れるためには大切なものを少しは手放さ
なければならないのさ。

ってわけで、彼は(彼女は)失ってしまった大切なものを、失ってしまった半身を
求めて流離っている。

当日券の椅子もびっしり、満員盛況、どきどきと開演を待っていたのですが、、
客席側の扉から三上ヘドウィッグが登場し、通路を歩いて舞台に上がっていくと、
きゃ〜〜〜っ きゃ〜〜〜っ
(ちょっと嫌な予感がしました)

ちょうどバンプ・オブ・チキンのライブに行った時と同じです。
最初から「ノル」のがお約束の世界。
サッカーの代表戦で感じる違和感とも似ている違和感。
出来が良かろうと悪かろうと「おぉ〜〜、にぃぽ〜ん」と歌い続けるアレ。

始まるやいなや、音の暴力のようなひどい音響なのに、前段15列全員立つ立つ立つ。
激しく踊る踊る踊る、のっけからノリノリ。
前提が違っておりました。まるっきり場違いでした、わたし。
つっかえると「かわいぃ〜」
ファンだけにわかるギャグ?に「どっ」と沸く。
すまん!正直言って、知らない人間には面白くもなんともないアドリブなんですな。

三上さんは2時間出ずっぱりの大熱演だったし、文句を言う筋合いじゃないんだけれど
なんかね、毒のある世界がイマイチ伝わってこなかった気がしました。
ウケる場面が違うやろっ?!と思ったところもしばしば。

キリストは人間の罪のために死んだ。 だったらヒットラーだってそうだ。
(わたし)はっはっはー! 
って誰も笑ってない(>_<)。

ベルリンの壁が崩壊する前にママはユーゴスラビアに亡命し、のんびり暮らしている。
(わたし)はっはっはー!
旧ユーゴの6つの共和国ほど混乱と紛争の続く地帯はないじゃないか。
って誰も笑っていない(>_<)。

ユダヤ人をいじったり、セルビアをいじったり、って、日本でヘドウィッグは
無理があるんじゃないかなぁ。
北朝鮮か大韓民国のニューハーフに日本人や中国人や自衛隊の将校の息子が
絡んで、下ネタや政治ネタをばんばん飛ばしながら、切ない愛の物語を歌う、
って感じの、ちょいと危ない気配があっても良さそうに思うんだけど、
日本のロックシンガーが「ラブソング」しか歌わないのとおんなじ感じで、
「愛」の物語だけになっちゃうのよねぇ。
「アングリーインチ」に何か意味があると思っていたんだけれど、それが
分からなかったのでした。

最後の熱唱も、三上さんのがんばりには感動したけれど、音楽というには
あまりに暴音。。「バットマン・ビギンズ」を見た映画館の音響が懐かしい。
大迫力で腹にも響く音なのに頭が痛くならない。スピーカーが違うのかな?

2回目の挨拶を見届けてから、スタンディングオベーションで熱狂の渦の会場を後に、
梅田駅に急いでしまったのでした・・・(年かなぁ とほほ)




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