Precious Gem Romance PGR-273 「QUINN'S RETURN」  by Shannon Anderson
読んだ日の「更新の記録」
父親がいるのかいないのか、母親が死に、すこし頭がオカシクなってる叔父の元に
12才でやってきたサイモン。あばら家で極貧、
何か悪いことが起こるとアノコがやった、と言われ続け、
彼を守ってくれたのは、学校の美術の先生と図書館の司書おばさんと、
となりのお屋敷の3つ年下のエリーだけだった、っちゅう、胸きゅんな定番設定。
(あばら家は、元々エリーの家が所有していた馬小屋だった。
ひいひい爺さんがポーカーの賭けで負けてクインの家に渡ったらしい)

放火の罪をかぶって18で町を飛び出して以来、色々なことをやったけれど
結局現在はフォトジャーナリストとして危険な紛争地帯に行って
ルポタージュして生活をたてている。

文才と画才があったので、とてもすぐれたフォトジャーナリストに
なっているんだけど、この職業もまた、彼の悲観主義を助長してしまったのね。
つまり、悲惨な戦争や飢餓をみて、守ってやりたい、助けたいと思っても
世界は変わらないし、自分も何ひとつできない、、という思いがしみこんで
しまってる。

根無し草な生活に疲れて、腰を落ち着けたいと願うたびに
心に浮かぶのは別れた時のエリーの姿。。
それでも、一度も故郷に帰らなかったわけだけど、
叔父が死んだという知らせで、アフガニスタンから帰ってくる。
それはなんと17年ぶり。

エリーは、心の底でずぅぅっと、サイモンがいつか帰ってくる、と
願っていたけれど、とうとう、、お約束のように鼻持ちならない地元の
名家の息子と婚約をしてしまった。

サイモンが帰ってきたという噂を地元のストアで聞かされ、
別の女性の家に寄ったとか、ドラッグストアで買い物したみたいだとか、
もうね、なんか、真っ先に自分に会いにきてくれなかったことに傷つくの。

サイモンがとうとう彼女の家にやってきたとき、とてもつっけんどんに応対して、
思わず、「この17年間なにひとつ、電話一つ、手紙一つくれなくて
それで、腕の中に飛び込んでくるとでも思ったの!」

自分が17年間彼を気にしていたことを白状したも同然のいらだちを
見せてしまうのよね〜。

サイモンは実はバイクで長距離を旅してきて、エリーの家にまっさきに
行きたかったんだけれど、彼女の母親が昔、自分を嫌っていたので、
この汚い姿ではまずいと思い、石鹸を買って、服をランドリーで洗い、
川の水を浴びてようやくやってきたというわけなんだが、
彼女の父はすでに死んでいて、彼女の母はフロリダに移っていた。

「あ、俺が汚れていようがきれいだろうが、どっちみち君のママは
俺をよく思っちゃくれないんだよな・・・」

サイモンは、エリーの婚約を知り、なんだってあんな奴と!
ばかなまねはやめるんだ! と思うけれど、それじゃ、他にどーしろと言うの?
と訊かれて、答えられない。
自分と結婚してくれ、と言えない。自分はエリーをだめにする、
自分と一緒になってもエリーは幸せになれない、と、
情けないほどに負け犬根性がしみついているというか、未来に自信がない。

エリーはヴィクトリア様式の大きな自宅をB&Bにしていて、
そこに少し知恵遅れ気味の少女を雇っている。
そのコは失敗を恐れて、いつもおどおどとしているんだけれどね、
そのコをサイモンが励ますシーンがいいのよ。
恐がっていないふりをしてごらん。そのうち、本当に恐くなくなるよ。
そして、思い切ってやってみると、思っていたほど恐いもんじゃない
とわかるんだよ。。。
B&Bに投宿している爺さんや家族や子供が、合いの手というか
ちょっかいを出してくるんだけど、この爺さんにも秘めた昔の恋があったり。


お約束のようにフィアンセが嫌な男なの。
エリーはフィアンセからキスされて、うへ、だめだわ、
迫られて、あーもー絶対にだめ! と、気がつく。
この男と結婚できるなんてどーして考えたんだろ・・・

「あなたとはできないわ!」
「結婚式までということか、永遠にってことかどっちだ?」
「永遠に!よ」

フィアンセは、捨て台詞を吐いて出て行く。
「サイモンに捨てられたからって、僕とよりが戻せると思わないでくれ、
僕はおフルは要らないぞ!」

サイモンは横のあばら家に滞在してるんだけど、エリーが
フィアンセとデートに出かけてる事知っているから、気になっていて。
フィアンセの車で帰ってきて、家に入っていったのを見て
気が気じゃなかった。。が、乱暴にドアが開いて、フィアンセが
出てくる、叩きつけるようにドアを閉める。。

大丈夫だろうか、何があったんだろう、と、エリーの部屋の前まで行くと
部屋のドアがあく。
なぜ俺がいるってわかった?
わかるからわかるの。
エリーはここでガンガンと迫って、とうとうメイクラブをする。
サイモンは、彼女は処女だったからね、事の重さにずっしりときてしまう。
本当はエリーの気持ちの重さや自分たちの関係の深さをわかっていたのに、
わからない振りをしていた、って感じかしら。
エリーは、あなたに何も望んでいない、と雄々しく言ったんだけど、
それでも心から望んでいるのよね、サイモンの愛を。

夜の3時、サイモンはこっそりと部屋から出て行く。
エリーは寝ていなかったのに、寝たふりをしていて、
静かに涙を流す・・

ポーチに出ると、そこにエリーの母が居た。
(そうそう、母親はエリーの結婚式の打ち合わせにやって来たんです)

「夫が亡くなってから不眠症になったのよ。」
「・・・」
「エリーはとても良い娘よ。」
「ええ」
フィアンセとの婚約を破棄するなんて残念だ、という母親に
あの男はクソヤロウでエリーにふさわしくない、と言う彼。
それじゃ、あなたがふさわしいというの?
。。。
「あの子が子供のとき、わたしはあの子が摂食障害にかかったと
思ったことがあったのよ。
とても大きなミートローフを作って余った分を置いていたのに
翌朝無くなっていたから。
あの子を医者に連れていったのよ。」
「知ってます、エリーが話してくれたことがあります」
「けれど何も問題が無いといわれて、それでも料理が無くなるしね、
ミートローフがどこに消えたのか、わたしは自分で調べたの。」
「あぁ」
。。。
「わたしはそれから、少し多めに食事をつくるようにしたのよ」
「え・・」

サイモンはまさか、そんなことをエリーの母親から聞くとは
思いもしなかった。
あぁ、どんどん、混乱した気持ちになってゆく。

翌日、エリーの事を考えてしまう自分が嫌で、死んだ叔父の
荷物を片付ける、狂ったように体をこき使って、疲れようとする
サイモンだけど、エリーもまた、顔をみせないサイモンのしうちに
傷ついていらいらとして、、
「こんなとこでイラついていたってしょうがないでしょう」という母親に
「わたしの問題だから口出ししないで。
 わたしはもういい子で人の言うことばかり聞いている子をやめたのよ」
「そう、それじゃ新しいあなたなら自分の欲しいものは分かっているんじゃないこと?」
「・・・」

エリーは、そう、失うものなんて何もないわ!と、がんばってサイモンの
家に行くと、最初は家の中に入れるのも嫌そうにするサイモン。
叔父の残したものを片付けながら、昔の心が痛む思い出にしめつけられていた彼は、
エリーに「たいしたことじゃない」と言う。
「あなたはいつだってそうやって、本当は痛いことでもたいした事じゃないって言う」
「ほんとにたいした事じゃないんだ」
「昨日のこともたいした事じゃなかったのね・・」
「違う、昨日のことはたいした事だったよ・・」

結局ふたりは寝袋の上にもつれこむんだけれど、
エリーが積極的なので早くもイキそうになったサイモンは
ちょっと待って!
なぜ?
すぐに終わりたくない、ずっと続いていてほしいんだ
なぜ終わるって思うの、あなたが願いさえすれば終わらないのよ

思いを語っているエリーの目を見る事ができない。
サイモンの心の何かがプツンと切れる。

エリー!自分をごまかすのはやめろ!! 
次は無いんだ!
何が理由で彼女を罰しているのか、自分でもわからないのに
乱暴になかば彼女を痛めつけるようにラストまでイってしまう。

そして、明日出てゆく、と。

さてさて、
サイモンが大型バイクで早朝出て行った日は、町のお祭りだった。
エリーは、気をちょっとでも緩めたらオカシクなってしまうと、
はりついたような笑顔で、一日を乗り切るぞ!とパイを売ってるんだけど、
そこへあの元フィアンセがやってくる。

あのゴミやろうが町から出ていったじゃないか。
君のベッドは次の男を待っているのかい?

エリーをほっておいて! 少しスローなあの少女が真っ赤になって怒る。

おやおや、こいつにフルーツパンチをまかせるなんて。
まともにできやしないだろ、パンチをこぼさずにつげるってのかい。

少女は大きなボールに、さきほどパンチの材料をまぜあわせた
ばかりだったんだけど、それをざばぁと彼の胸元へ。

エリーはこの日、初めて笑う。笑い出したら止まらなくなって、
少女とふたりして大笑いをする。
そうだわ、サイモンが居なくなったからって笑えなくなるわけじゃないわ。

サイモンはバイクを死神に追いかけられているかのように飛ばして、
ハイウェイを西に向かう。
自分は一体なにをしてるんだ・・
空っぽで何もない西の未来と、後ろに残した東のエリーがいる未来、

憑き物が落ちたように、自分が望むものが見える。
戦場のルポライターの過酷さに、半ばバーンアウトしていた彼なんだけど
静物の写真の勉強がしたいし、ドキュメンタリーが作りたいし、
なによりもエリーと共に生きるんだ、、、
Uターンをして、ひたすら走る、走る、走る。
ほこりまみれ、汗まみれになって、お祭り広場に夕方やってくると
パンチで胸元がべたべたの元フィアンセが

「おっと、ゴミやろうが戻ってきたのか、
 何かエリーのベッドに忘れ物か?」
「それ以上一言でも彼女の名前をだしてみろ!」
「ふんっ
 俺の家の馬小屋に火をつけて逃げてったゴミやろうが偉そうに!」
「もう逃げはしないさ。」
「ほお、ついに罪を認めたか」

「ち、ちがう!彼じゃない!」

自分がろうそくでふざけていて、火が広がり、恐くて逃げたという
サイモンの昔一番仲がよかった男が名乗り出る。
ずっと告白したかったんだ・・

サイモンだけが火事場から逃げていくのを目撃されたのは
彼は馬小屋の馬を逃がそうとしてがんばっていたからだった。。

町の人が好意的な表情でサイモンを祝福する。肩をたたいてゆく。
電話番号までくれた女性がいた(笑)。
ごめんよ、エリーを探してるんだ、
「エリー!」「エリー!」 ヒロインの母親をつかまえて
「エリーは今どこにいるんですかっ!」
最初は身だしなみを整えてから会いにきたのに、いいぞっ。。(^m^)

くっくっく、100%お約束の展開ですが、読んでいると快感なの(爆)。

サイモンはエリーに片膝ついてプロポーズする。
君が俺を追い払ったって、何度でも帰ってくる。這ってでも、四つんばいになってでも。

いい気分のハッピィエンドでした〜