Sweet Anger 失意の向こう側
シリーズロマンスから、より長編の文庫本へと移行した作家さんが多いですね、このごろ。
ひとによっては昔のHQ作品はどうも、、今のほうがいいわ、という人もいるかもしれません。
たしかに作家の成長、変化があるのですが、
なかにはホントは違うのに、、と思うものもあります。
今でているものにひけをとらない出来なのに、、と残念でならないものもあります。

そんな一冊がエリン・セント・クレアの「失意の向こう側」です。
心のダークサイドまでふみこんだ愛憎。
濃厚なラブシーンと優しいユーモア。
いくつかの刑事事件。
読み応え十分なのに、日本HQの方針で大幅なページ数の削減の結果
翻訳は駆け足のダイジェスト版になってしまい、現在のサンドラ・ブラウンを知る人は
ものたりない印象をうけるかもしれません。

いつものように、オークションだと高いので、しかたなく原書古本を買って読んで
その後、ご好意で翻訳をお借りして読むことができたのですが、
どうか完訳をしてほしい!と願ってやまない本です。
いつか、MIRA文庫より再販するようになったとしても、 
訳をやりなおさない限り、元HQの本はいつまでたっても元HQ。
どれほど作品の味わいを薄くしてるか、日本HQ社は感じているかしら。

さて、この話を知らない人のためにざっとあらすじを書くと、
ヒロイン、カリーはTVのニュースレポーター、なにか題材をとりあげて自分でまとめるが、
エンターテイメントから政治まで、そうね、NHKの「クローズアップ現代」の
国谷裕子さん を、すこしレベルダウンさせた感じか、、
美人で頭もきれる人気レポーターです。
32歳年上の市会議員の夫が交通事故死し、その後、公金横領が発覚する。
その罪を追求する地方検事ヒーロー、ハンター・マッキー。

前半は、亡き夫の名誉を汚す男として、過剰にヒーローを嫌悪してしまうヒロインと、
そのヒロインに一目ぼれしてしまい、職務とはいえ、彼女を苦しめざるえない状況を
苦しむヒーロー。
多くのデモーニッシュな場面があり、憎しみがエスカレートして、自分がどんどんおかしく
なっていることに気づきながらも止められないヒロイン。
爆発、そして、悔恨。
そして、後半は、真正面からのラブラブアタックにメロメロ。。ぐふふ。

よく出来た話なんですが、とにかく元が長いので、ヒロインの心の葛藤や
再生中の心のつぶやきなどが省略されていて、すじを追うだけになりがち。
ほら、たとえば、ベッドインして3行で結合だなんて、嫌でしょう?(笑)。
でも、極端に言うとそうなってしまうんですよね、省略するから(笑)。

さて、『Bossy』 

ヒーローを毛嫌いしていたときは使わなかった言葉で、
気持ちを許すようになって、はじめて登場します。
意味は 『いばりん坊!』  この言葉が使われている部分が省略されると、
実はとっても物語のニュアンスが変わってしまうんですよ。

レストランのレジでワリカンをしない彼。女性に払わせるなんてとんでもない!
そんなヒーローに、ヒロインは小声で「いばりん坊・・・」
「え?今なんか言った?」 「いばりん坊っていったのよ」

翌日の山歩きのときも

「運転は僕の車で僕がする」 「あら、山道の運転はわたしも得意なのよ」
「そして僕は男性優位主義者なんだよ。黙ってほら、乗った乗った!」
「いばりん坊」

赤ちゃんの誘拐事件が続けて何件がおきていて、
実は背後に非合法の赤ちゃん斡旋組織があることがわかる。
その事件をめぐって、地方検事のヒーローとニュースレポーターのヒロインは
利害関係が真っ向から対立する。
捜査妨害として逮捕されるヒロイン。
報道の自由への侵害だ!マスコミは色めきたつ。

「ミズ・スティワート!これはかつてあなたが攻撃したことへの
ミスター・マッキーのしかえしですかぁ?」わいわいがやがや

だが、ヒーローを攻撃するマスコミに対してヒロインはきっぱりと言う。

「かつてわたしはミスター・マッキーに対して個人的な恨みを抱いていました。
そして、プロとして恥ずべきことに、わたしはメディアを利用して彼を中傷したのです。
そんな私と違い、彼は個人的感情をきりはなし、プロとしての義務でこの事件を扱いました。
彼はたいへん高潔な人です。たとえ個人的にどれほどの犠牲を強いられようと
信念を貫いたのです。彼はわたしが持っている情報に強い関心があり、
それで、ただプロとしてできることをしただけです。」
 (翻訳本の誤訳疑惑)

事件は解決し、ヒーローからの連絡をいらいらと待つヒロイン。あぁん、どうして彼は
電話もしてこないのよ、あぁん、もう、、

ハンターがよれよれになって、カリーの元にやってくる。
部屋にはいるやいなや、バーに向かいスコッチを自分でついで一息に飲む。
部屋に入ってきたとき、脱いだコートとベストをひとさし指にひっかけて肩にかけていたが
ソファの横を通ったとき、それをソファの上に放り投げていた。
彼の様子は、シャツはよれよれ、ネクタイはゆるんでて、ひげはのびてるし、頬はこけてるし、
目の下にはくまがあるし、いつもなら威厳のあるめがねも、ただ鼻の上にのってるだけって感じだし、
髪は指でといたようにぼさぼさだし、、
でも、愛に満たされたカリーにとって、これほど素敵な彼はみたことがなかった。
(翻訳本の誤訳疑惑)

忙しすぎて連絡がとれなかったんだよぉ〜。
忙しかったわけを説明しながらどんどん脱いでいく・・・くっくっく (^m^)

「ちゃんと全部話して!」
「えーと、赤ん坊の両親に会って、消えた赤ちゃんに、明日には会えると告げて、、
もう話は終わりだ!」
「まだひとつあるわ。ピンキーとボニーが結婚するのよ」
こう言いながら、カリーの指は彼のおへそのまわりの毛をまさぐる(爆!)
「ピンキーなんかもうどうでもいいよ。
彼は君がめんどうなことに首を突っ込むのを止められないんだ、、あっ、そそんな、、」
カリーの指がなにやらやったみたいだ(爆!)

(そっちがそうならこっちはこうだ、どうだい? あぁん、、)

「今後はね、君にはもっと安全で何も話題にならないニュースだけやってもらうよ。」
(あぁん)
「なぜ?」
「だって僕たち結婚するからさ。監獄どころか君をどこにもやりたくない。」
(おぉ)
「一晩だって離れるもんか。」
腰をまわすハンターに、とうとうカリーはのぼりつめる一歩手前で一言・・
『いばりん坊・・・』 (ボッシー・・)


「Bossy」がラストのセリフかぁ、上手いなぁ(うふふ)と思ったのですが、
翻訳は、「全部話して!」以降を省略してるので、
すぐに
「結婚しよう。。。。。。一晩だって離すもんか」
カリーは歓びのうめき声をあげつづけ、ついに叫んだ。「いいわ」

え?!最後の言葉は「いいわ」?
しかも叫んだ?
原書には絶頂前のラストワードだって、書いてあるだけで、別に叫ばんでも・・


この「いばりん坊」 が、優しいユーモアを感じさせ、誠実ヒーローのメロメロ度もあいまって
楽しい終わり方だったのですが、味わいが減ってしまいましたね。