Heart of Stone 「スイート・ルーム」のとほほ翻訳箇所について
ものすごく気に入ったからこそ、逆に、なんか変なトコが目についちゃうんだ。
こんなつじつまの合わないセリフを言うかなぁ、、と、ひっかかっちゃうんだ。
重箱の隅をつつく、というより、好きな本の名誉挽回をしたくなっちゃうんだよねぇ。。
さて、かいつまんで言うと、この話のヒーローは、代々と富を築き上げた家のひとり息子、
世界中にホテルを展開しているコーポレーションのオーナー、
幼少時より祖父の帝王教育を受けてきた、富と自信のオーラをむんむんと放出する、
最高のダイヤモンドと言われる男なんである。
毎晩ホテルの最高級の部屋で休み、最高級の食事をして、猛烈な仕事をする。
今日は東京、あすはNY、そこからパリに飛んだと思ったら次はチューリッヒ、
チューリッヒに1ヶ月いることになるかもしれないが、すぐに別のところに行くかもしれず、
きみに会えるのも次は半年先?というような暮らしを疑問に思わず今日までやってきた。
秒刻みの生活だから、まどろっこしい事など言わずに、速攻即行。
女を扱うそのお手並みときたら、てのひらにカードがなじんだギャンブラーさながら、
女なら誰もが腰砕けとなるほど、見事な緩急使いわけ・・・
だが、欲求を満たしてくれる女は必要といっても、それは高級ワインと同じ程度の必要さ、
事が終われば広いベッドにひとりで寝たい男なんである
そんなヒーローが、あろうことか、清純で、柔らかいハートが痛々しい、
22才の4ヶ月前まで病気の父親を看病していた素直で知性的なヒロインに心を奪われる・・・
最後の誤訳セリフに行く前に、前半で目についたところもちょっと紹介すると
(薄い灰青色が本からの引用文、あずき色が拙訳)
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なぜオーナー(もちろんヒーロー)の来訪をホテル支配人の妹であるヒロインが出迎えたか、
ヒーローに説明している場面では、
「兄の秘書は、、しりごみをするというか、気後れをするというわけで、
わたししか事務職員はいなかったんです」
「臆病者というわけか、コニーとかいったな」 と、つぶやきながら近寄り、
「きみは、彼女がセックスを恐がってると思うかい?」
「コニーは男というのが恐いのかもしれないな」とつぶやき、苦笑した
どきまぎして頬が赤くなるのを必死で抑えるヒロイン。
続いてヒーローはヒロインの横を通り過ぎ、手にしたグラスをテーブルに置いたのち
振りむき、「お兄さんはきみに、ぼくと関わるときみが傷つく事になる、と言っただろう。
それは本当だ。ぼくはきみみたいな女をよく知っている。
毎日曜日、ぼくがシャトーブリアンを食べているとき、きみはヤンキーポットローストを食べる。
ぼくはホテルのスイートルームが家代わりだが、きみにはベッドルームが4つある家が夢の家だ。」
そういいながら、彼女の喉元のペンダントを手にとり、しばらくもてあそんだあと、
「きみは子供が欲しいだろ。男の子と女の子だ。」 胸のあたりをじっと見つめて
「そしてきみは母乳で育てるタイプだな」
「君は産んだら子供をつきっきりで世話したいと考えているだろう」
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のしかかるような強引さで迫るのかと思いきや、うっとりする優しさに満ちたハイキングデート、
でも翌日には次の用務地に去っていく・・
そしてそれから2ヶ月になろうか、という感謝祭では、切ないまでに素敵なヒーロー奮闘。
(ここはヤラレルよねぇ・・・)
だが、またまた翌日には慌しく去ってゆき・・・
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クリスマスの辛い別れから4ヶ月・・・
突然姿をあらわしたヒーローはヒロインに、
経営するホテルのほとんどを売却している途中だ、と告げる。
そして、今探しているのは、4つベッドルームがある家なんだ、と告げる。
ぼくと結婚してくれ・・・
ここんとこのヒーローのセリフは長いので、本からの引用文は別窓で開きます。
"I know how much I hurt you."
"I wanted you from the moment I met you. I fooled myself into believing
we could have an affair - a long affair - even later I thought our marriage
could survive my life-style,"
"Then that night when I made a jealous idiot of myself over that
neighbor of yours, and you pointed out the uncertainties and torment
you felt when I was away, I knew that constant separations would ultimately
kill what we had.
I was being ripped apart by them already. I can only imagine
what you were going through."
きみを傷つけてすまなかった。
はじめて会ったときからぼくはきみが欲しかった。生き方を変えずに
きみとの情事を持てばいい、と、しばらくは自分をごまかしていた。つまり、
生き方を変えずに結婚だってきみとならできると思っていたんだ。
だが、あの夜、きみの幼なじみにぼくはカッとなってやきもちをやいた、
そして、きみが、ぼくと離れていると先が見えず辛くてたまらないと言った、
あのときぼくは気付いたんだ、このままずっと離れながらつきあっていたら、
結局はふたりの間にあるものは壊れてしまうと。。
すでにぼくは不安と寂しさでぼろぼろだった。想像するしかないが、きみも
苦しかったろう。
"Why didn't you explain that?"
"Because, my lovely Yankee, we might have convinced each other
we could make it work.
So when you called asking to see me, I knew you were coming with the intention
of making up. I put you off and called Helen in Boston."
"I wanted you so much I couldn't trust myself alone with you - I couldn't
trust myself to resist your possible arguments.
So I staged that scene with Helen, arranged for her to walk in
within minutes after you arrived."
「なぜ、そう説明してくれなかったの?」
なぜなら、ぼくのヤンキー(ポットロースト)娘くん、たとえ話し合ったところで、
離れ離れでもきっとなんとかやってゆけると、ぼくらは互いに相手を説得したんじゃないかな。
そう、次の朝電話を貰った時、ぼくは、折り合いをつけるつもりできみがやって来るんだ
と思って、会うのを夕方にしてヘレンをボストンから呼んだ。
ぼくはきみが欲しくてたまらなかったから、自分自身を信用できなかったんだ。
きみと二人きりでいると、君の説得に負けてしまうだろうと思ったんだ。
だから頃合をはかってヘレンに出てきてもらい、ヘレンといるところをわざと見せた。
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ふたりの長距離恋愛関係をずるずる続けて、共に苦しむよりは、
ヒロインから憎まれて別れた方がふたりのためだ、と考えたヒーローだったが、
ようやくこれまでの自分の生き方(多くの企業やホテルを抱えた超多忙生活)を変えて、
ヒロインと共に生きる道を選ぶことこそが、自分の望みだと気づく。
愛してるよ、ステファニー。この先一生、シャトーブリアンを食べなくとも構わないんだ。
“I think I'll arrange to have that king-sized bed replaced.”
His hands familiarly tested the slimness of her build.
“I could lose you in that.”
“Think so?” She brushed her lips across the corner of his mouth.
“I'm not going to take the chance,” Brock murmured before he fastened
his mouth onto her teasing lips in a kiss that branded her forever his.
「キングサイズのベッドは取り替えるつもりだ」
ほっそりしたヒロインの体を親しげに手でなぞりながら、、
「こんなに広いベッドでは、君を見失ってしまうかもしれない」
「そう思う?」と軽く彼の唇の端にキスをするヒロイン。
「あぁ、そんな危険を冒すつもりはない・・・」とつぶやき、しっかりと唇を重ねた。
「誘いにすぐのるのがぼくの悪い癖だ」とつぶやき、しっかりと唇を重ねた。
Fin