トリプレットリピートその1


病気の原因遺伝子とは、風邪やエイズにかかるようなものではなくて、
とても大事な遺伝子で普段誰でも働いていて、それが変異によって壊れていたり
ちょっとだけ変わってしまっていたり、多く出来すぎちゃったり、というものです。

体の細胞のDNAが傷をうけても本人一代限りの傷害ですが、生殖細胞のDNAが
傷をうけると子、孫に伝わってしまいます。

ここでちょっと基礎知識。
DNAはデオキシリボヌクレイックアシドの略で、ちょっとずつ違った4種類のデオキシリボヌクレオチド
アデニン(A)グアニン(G)シトシン(C)チミン(T)が
リン酸結合で延々とつながった物なんですが、たった4種類がだらだら並ぶだけで体の
設計図になるとは、、と遺伝子の実態が判明したときは驚きでした。

長いDNAは細胞の中で3個ずつ区切って読まれるのです。だらだらした中で、
ちゃんとここから読み始めろ!という制御配列があります。これは別に3個組ではなくて
もっと長い配列で、転写開始因子が結合する部位となります。
また、ちゃんとここで読み終われ!という配列もあります。

ほかにもいつ読め、とか、もっと読めとか、まだ読むな、とかこういう場合に読めとか
制御する配列がたくさんあります。

読まれる部分を狭義の遺伝子と読んでいるわけですが、広い意味ではDNA全体が
遺伝子です。適当に混同して使われていますね。

よまれる部分は、3個ずつ区切って読まれて、その3個組をコドンと読んでいます。
コドンは対応するアミノ酸を指定しているので、遺伝子を読んでいくと、自然にアミノ酸が
つながったたんぱく質が出来るわけです。

複雑なことに読む作業は、いったん写しとって(転写)、それからそのコピーを読む(翻訳)と
いう流れになっていて、人の遺伝子の多くは写したあと、きりとる部分がはいってます。
これがイントロンと呼ばれる部分で、ここの部分は切り取れという配列をイントロンの初めと
終わりに持っています。

さて、こういうわけで、遺伝子病には様々な形態があるのがわかるでしょう。
たとえば制御部分の配列が壊れたら、作らなくて良い時に要らないたんぱく質を
どんどん作ってしまう、なんてことが起こるし、
読まれる部分が壊れたら、まさに変なたんぱく質ができたりしてしまうし、
イントロンの切り取り部分の配列が変わってしまったら、本来切り取らなくては
いけない無意味な部分が読まれてしまうし、

生物の体が無事に出来あがるのが奇跡のように感じるほどです。

ところが、ハンチントン病の原因遺伝子は、このような変異ではありませんでした。
実はハンチントン病に限らず、運動障害、知能傷害をもたらすいくつかの病気には
共通する点がありました。
それは、親よりも子、子よりも孫のほうが症状が重く、また早くに発症することでした。


続く