トリプレットリピートその2
なぜ代を追うごとに症状が重くなるのか、これがとても不思議な点でした。 そして、ハンチントンの原因遺伝子をつきとめた結果わかったことは、 もともとこの遺伝子の中にCAGという3個組が(これはグルタミンを指定する) 10回以上繰り返している部分があるのですが、病気の人はこの繰り返し回数が 多いのです。症状の重い人ほど繰り返しが多かったのです。 生殖細胞(精子、卵子)が形成されるときに繰り返しが増えてしまう。 40回くりかえしを持っていた人は、本人は老人になってから発症する。 が、その子供は60回ほどの繰り返しをもち、40代で発症する。 そして、そのまた子供はもっと多くの繰り返しを持っていて、 10代で発症してしまう。 このたんぱく質は神経細胞で働いていて、グルタミンが何個もつながった部分は 通常分解されるのだけれど、この部分が長いと、細胞に残ってそれが悪さを するらしい。長ければ長いほど悪さをするので、長いのを作ってしまう人は 早くに発症するし、症状が重くなるのだろうと説明されてます。 この遺伝子は原因遺伝子といっても、さらにこの繰り返しを増やしてしまう原因が 根本にあるはずです。この機構はまだ解明されていません。 そして、代を追うごとに重くなるほかの多くの精神傷害を伴う病気でも 同様のくりかえしが発見されています。 正常人でもグレーゾーンはあります。11回から38回までを正常としてますが 70%は25回以下の繰り返しだといいます。そしてグレーゾーンの者どうしから 生まれた子供はそのグレーゾーンを越えてしまうこともあるそうです。 変異を持っていなければ絶対に平気だという固定概念をふっとばす 話に、はじめて聞いたときはかなり驚きました。 体のなりたちが危ういバランスの上で出来あがっているとしみじみ思いました。 トリプレットリピート(3個組くりかえし)が衝撃であったように、 今後また別の変異機構が明らかになるかもしれません。しかし 治療法がないままに原因だけわかることに、どれだけの人が 対応できるのでしょう。遠くない将来必ず発症して運動機能が失われ 知能が退化する運命が自分を待ち受けている。 今後アルツハイマーなどいろいろな病気の原因遺伝子がみつかってくるでしょう。 これはヒトゲノムがすべて解明される私達の時代の大きな問題です。
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