2000年その7


23 23 Nichts ist so wie es scheint (1998年ドイツ)

80年代のドイツ。ハッキングとコカインに明け暮れる青年。
情報の不均衡・力の不均衡が拡大する不安感。
国際的陰謀の陰にある神秘数23。
主役の男性の演技がすばらしい。
情報って実体が見えないし、なんていうか、何をやってるのか分からないまま
追い詰められていってつぶされてしまった、虚しさが残る。
 
 
--------------------------------

π(1998年アメリカ)

とても面白かった。
世界を説明できる数字があるはずだって思うときあるよね。
パイの不思議だとか、フィボナッチの数列とか、数字って一体
なんだろうって思う時あるもの、素人なりに。
それに脳を突き刺したいってイメージ、わかるなぁ。
数字って究極の無機質なのに、対極にある自然・生命・宇宙を
説明できる気がするのって、ほんと不思議だよねえ。
世界を理解しようとした男が、最後に精緻な自然の中で静かに座っていると
いうのもまたいいねえ。
それと音楽がとてもよくてね、映画ととても合ってました。
 
 
--------------------------------

39 刑法第39条(1998年日本)

おお、数字シリーズ、第3弾(笑)。
鈴木京香さんの演技がちょっと京香節とでもいうか、新鮮味が
なかったのだが、うまくまとまっている作品だった。
はっきりとしたメッセージ映画にすればよいのに、変に笑いをとろうとしてるような
配役をしたように感じる。樹木きりんさんの弁護士は、一癖もふた癖もある人と
いう意味なのかもしれないけれど、なんだかうすっぺらな感じになってしまったし、
検事役の江守さんも同様で、なんていうか、事件を大切に扱っている雰囲気が
伝わってこないところが残念だった。
精神鑑定とはなにか、、こうして猟奇事件を真正面からとりあげると
映画の時間枠では描ききれないものが沢山あるということが逆に印象に残った。
 
 
--------------------------------

ウォーターボーイ the Waterboy(1998年アメリカ)

なんとびっくり!
だって、だって、主役のアダム・サンドラーって、
「ウェディング・シンガー」では甘いマスクのナイスガイだったじゃない。
それが、このちょっとふとっておつむの弱いボビーブッチャー??
私は知らなかったけど、もしかしてこの人はお笑い系なのかな?
 
ばか映画です(笑)。最初から最後までばか映画なんですけど、
けっこう楽しみました(笑)。
へび料理、どこから食べるかって?
強いて言えばひざからかしら、、、こんな会話の映画です(笑)。
 
 
--------------------------------

Xメン X men(2000年アメリカ)

いつもながら、息子と朝イチに(笑)。
うーん、予想していたものと違ったなぁ。
もっと痛快アクションものだと思ってました。
全体を通じてなんちゅうか、苦悩するミュータントって感じですね。
石森章太郎の幻魔大戦をなんとなく思い出してました(古い?)
 
アクションの切れが悪いって感じたんだけど、これは監督の狙いのうちかも。
なんていうか、あまり盛り上がらないように、普通に撮っているみたいだったから。
人と(文字通り)触れ合えない、とか、目を普通に開けられない、とか、
失った記憶、叶わぬ愛情とか、哀しいテーマがずっと流れてました。
 
でもって、まさに to be continued って感じで終わりました。
うーん、これは困った。絶対続きが見たい。くさいって分かってても
観たい。気になるよぉ。
スターウォーズのダースモールを演じた人が、カエル系ミュータントで
えぐい悪役をやり、舌をのばしたり跳ねまわっていたのですが、ちょっとだけ、
急に格好良くなった場面があって、受けました(笑)。
 
2003年5月追加
ヒュー・ジャックマンの魅力に開眼してからもう一度みた。
いやぁーん、驚き、印象がまるで違う。
公開直後に見たときは、なんとも思わなかった「もみ上げ君」が
ヒュー・ジャックマン様(はぁ〜と)って感じに見えてしまった。
やだわ、この映画、ものすごくエロいわ。
むちゃくちゃ女性サービスしている。なんで、公開時は気にならなかったんだろう?(笑)
女性ドクターがジャックマン様の裸の上半身を触る様子ときたら、きゃぁ〜(#^_^#)
柔らかそうな胸毛が細くなって下へ続く、、うわっまるでハーレクインじゃん!
いかに、わたしの映画を見る目が頼りないものか、わかってしまった(笑)
 
 
--------------------------------

カーラの結婚宣言 the Other Sister(1999アメリカ)

この映画をけなすのは悪いかなぁって気を遣ってしまうが、
やはり、どうも納得できない。
 
障害者の自立と恋愛を扱ったものだが、私には自立なのかわがままなのか
よくわからない。
親が「お前には出来ない。心配だ」とうるさく言うけれど、自分はちゃんと
できるんだ、って言って、で、こぎれいで快適なアパートを借りてもらい、
「出来ないことは多いけれど、私にも出来ることがあるのよ。人を愛する事よ。」
と言って、自分よりさらに障害が重い(と思われる)彼と結婚するカーラ。
”をい、をい、あんたはまだ自活さえしてないじゃないの!”って
つっこみたくなる私。
 
結婚を反対する母親が悪者のように描かれるけど、これも脚本が変なんだよね。
「まだ学生なんだから仕事を見つけてからにしなさい」とか言えばいいのに
「あなたにはもっと素晴らしい男性が見つかるわ」って言って、反対する。
そういう問題なの??違うと思うんだけどなぁ。
 
ダニエル(彼氏)の収入は月に350ドル。彼自身、自分のアパート家賃さえ
払えなくて、彼もまた親からの仕送りで暮らしている。
 
ま、カーラの親はリッチだから、今までどおり、っていうか今まで以上に
親に援助してもらえばいいのかな。親にしてみても、どうせ生涯援助することに
変わりがないのだからより幸せに娘が暮らしてくれればいいのかな。
悩みだすと、いつまでも悩んでしまう、けっこうヘヴィな映画かもしれない。
 
俳優の演技は素晴らしい。ジュリエット・ルイスはなりきっていたね。
 
 
--------------------------------

うずまき(2000年日本)

ビッグコミックスピリッツで連載されている漫画がけっこう好きなので
借りて見た。伊藤潤ニ原作。
 
大杉漣のお父さんが、むちゃくちゃ恐いよ。でもすごくはまってる。
なるとのみそ汁を食べるシーンは特にすごく良かったねえ。
なると以外他に具の入っていないみそ汁、、これだけで十分恐かった(笑)。
 
主役の初音映莉子さんが可憐で初々しくて一服の清涼剤。
 
きっと知らない人が「うずまきの恐怖」を描いた映画ときいたら、なにそれ?と
思うに違いない。でもこれが意外といい着眼点なんだよね。
黒渦町(closeと掛けてる?)台風(これも渦まきだ)による池の増水被害、池から
大量の古代鏡が見つかる。かがみとは=蛇が身を意味して、この土地には古くから
へび神信仰があった。。。なんて理屈づけとか、「うずというのはその中心に
人の目をひきつける」つまり注目してもらいたいという心理がうずまきに
取り付かれた人の心理とも言えるなんて現代人の精神的な病につなげるとか、
色々な理屈がまことしやかに述べられ、実は思いっきりばかばかしいうずまきホラーを
描きたかっただけなんじゃないかな(笑)。
 
 
--------------------------------

海の上のピアニスト Legend of 1900 (1999年アメリカ)

嫌いではないけれど物足りない。
というのは主役のティム・ロスがいつもやる役と同じ感じだからだ。
 
no way home でも、ライアーでも、ティム・ロスの役柄、演技、表情は
同じだ。何を考えているのか分かりにくい、重いまぶたと、半開きの口。
天才と愚鈍を隔てる一枚の紙の上にいる。
ナイーブで傷つきやすく、誰かを愛したいと思いながらも、その1歩を
もどかしいくらい踏み出せない。
活力が薄くてあまりにはかない。
彼の事が好きなのだけれど、なにか違う姿を見せて欲しいと願ってしまう。
 
競馬新聞を読むくだりが一番好き。
『語る話があって、それを聞いてくれる人がいれば、人生捨てたもんじゃない。』
これも好き。
 
 
--------------------------------

スキャナーズ scanners(1981年アメリカ)

デヴィッド・クローネンバーグの初期の作品。
幕が上がると不安たっぷりの始まり、ここから前半までは
圧倒的な迫力があった。だが、主人公が力をつけるに従って
映画自体のパワーは少なくなってしまった。
なぜかと言うと、主人公の顔?表情が平凡過ぎるのよ。
かたき役の人のオーラに比べてあっさりしているのにその人を中心にして
話が進み出すから、映画としての迫力が減ってしまうんだと思う。
でもストーリーは面白いし、ラストの恐い事と言ったら・・
 
後日つけたし
スキャナーというのは、人間の頭をスキャンする能力をもった人の事です。
相手の考えている事がわかったりするだけでなく、この映画では
自分の思い通りの幻影を見せたり自分の思い通りに動かしたりする事さえ
できました。
全然映画と関係ないですが現代のスキャナーズをちょっと考えてしまいました。
 
 
--------------------------------

コックと泥棒、その妻と愛人 the Cook the Thief His Wife & Her Lover(1989年イギリス、フランス、オランダ)

ピーター・グリナウェイ監督の作品を見るのはこれが初めて。
 
映画の題名に、ちと疑問。泥棒っていうよりマフィアの親分みたいな、
組長って感じなんだよね。ああいうのを向こうではthiefって言うのね。
 
なんというセット!光といい、衣装といい、色といい、驚き。
カメラワークも独特。すべてが厨房を中心にまわる。映像も話も。
そうなんだ。人は食べ、排出し、食べ、排出し、その繰り返し。
生きる営みを皮肉な目が見つめているかのよう。
そうそう、確かに厨房に加えてもうひとつ、良く出てくるのがトイレ。
そんな風に、美しい物、醜いもの、美味なもの、腐敗したもの、すべて
対比の中で描く。様式美に溢れている。
 
下品で粗野な男と、本の山の中で生きている男。
エネルギーに溢れているように見えて、その実(じつ)、実際の性交渉が
できない男と、平凡そうに見えて性欲旺盛な男。
 
コックはすべての狂言回し、道化役だ。
 
終わり方が私にはよく分からなかった。
なんとなく宗教的なメッセージがあるような気がしたが、これは勝手な深読み(笑)。
なぜそう思うかというと、
横暴な力を振るう、まるで全能の神のような男(レストランのオーナーでもある)。
その妻は知性を身にまとった平凡な風貌の男を愛するようになる。
夫は妻の不貞行為に気付き、妻と彼女の愛人はレストランからほうほうの体で
逃げるのだが、まるでエデンの園から追放されたアダムとイブのように
彼らは裸のまま汚辱にまみれて逃げるのだ。
 
つかの間の幸せの後、愛人はその魅力であった知性の象徴ともいえる本によって殺される。
口と鼻にありったけの本をつめこまれる無残な死。
夫の仕打ちに復讐を決意する妻。
 
イブはアダムの遺体を料理しこれを食べろと神にせまる。
運命を残酷ににぎってきた神がはじめて恐怖を感じ、そしてアダムの肉を
一口食べた後イブに殺される。
 
これが一週間の間におこる出来事である。
現代版創世紀のような世界だ。しかも現代のイブは子供を産めない体である。
神は死に、子も産まれない。なんとえげつない世界なんだろう。
 
 
--------------------------------

オスカーとルシンダ Oscar and Lucinda(1997年アメリカ・オーストラリア)

映画ならではの、「物語」を見せてもらった。
とても満足。
不思議な運命の糸、人間の情熱と狂気、繊細な愛情、美しい自然・・
 
ラルフ・ファインズの演技が素晴らしかった。
こんな彼を見るなんて、想像しなかった。
イノセントな微笑み。いつもの隙の無い彼の姿はここにない。
やりすぎか、となりそうな演技だが、無防備な幼子のような顔を
見せられると、許す!!ってなってしまう(笑)。
ケイト・ブランチェットもまた惹き込まれずにはいられないエネルギーを
放出していた。
ふたりのキスシーンのなんと美しいこと・・・
裸の魂がふれあうかのようだ・・
 
川に浮かぶ教会の美しさ、はかなさ、悲しさはなんとも言えない。
生きるというギャンブルの物語である。
 
 
--------------------------------

八日目 LE HUITIEME JOUR(1996年ベルギー・フランス)

ちょうどこの日、男と女について考えていた。
女の強さ、男の弱さについて考えていた。
そして、「八日目」がこんな映画だとは知らずに見始めた。
 
天国へと旅立ってしまった愛する母を求めるダウン症のジョルジュ。
夫を捨て出て行った「妻(ジュリー)と子供たち」を求めるアリー。
求めても得られないものを求めてすがる、叫ぶ、泣く。
しかしどんなに苦しんでも、相手は戻ってきてはくれない。
 
ダニエル・オートゥイユ(アリー)と一緒に泣いてしまった。
夜に思いきり泣いてしまった。
夫の胸を突き刺す、刃(やいば)のような妻の言葉。
この言葉しかない!そのとおりだ、この言葉しかない。
ん?もしかして筋と関係ない?場面か、でもアリーとジュリーの
やりとりは胸にせまる切なさがある。
 
日々の仕事に追われ家に帰れば暗い家に自分ひとり。
 
天使が必要だ。愛する者が必要だ。自分は一体なんのために生きている?
 
私はあまり終わり方が好きじゃない。なんだか誰でも考えつきそうな終わり方で
少々がっかりした。
それでも見る価値あり。
 
ダニエル・オートゥイユはずいぶん昔に映画館でみた時以来なのだが、
たしかその時も泣いてしまった。「Jean de Florette (1986)」。
わけあって英語字幕のものを見たから、日本題が分からないが、
イブ・モンタンとジェラール・ドパルデュー、ダニエル・オートゥイユという
豪華な布陣、流れる曲は歌劇「運命の力」序曲、それはそれは残酷な運命の物語だった。
そこで、ダニエルは欲のはった卑しい男の役だったが、
ある少女に恋をして、少女の落としたリボンを自分の裸の胸に(!)縫い付けるのだ。
そのシーンと彼の表情が今も忘れられない。
 


  シネマに戻る   ホームへ戻る