2006年その3
タブロイド Crónicas (2004 メキシコ・エクアドル)
エクアドルを舞台にしたスペイン語映画が日本語字幕つきで見れた事に感謝。 映像のもつ「即時性・機動力・説得力」と「作為性・虚像・扇動」を描く作品を こうして映像でみるというのも皮肉だが、映像が持つ力を生々しく感じる作品だ。 見て損は無い。 連続殺人犯は、子供を殺すとき、何を思うのだろう。 自分が限りなく神に近づいた「万能」の快感か・・・ ニュースレポーターがスクープをモノにしたとき、何を思うのだろう。 自分の取材が注目を浴び、世論を動かし、正義の鉄槌をおろす「万能」の予感か・・ 相手の恐れと欲望の匂いを嗅ぎあう二人。。 いったん動き出したらもはや止まらない、止められない不可避な恐さ。 予想していたことだが、森の中の最後のシーンはとんでもなく後味が悪い。 ラテンアメリカならではの、誕生と死、天国と糞、情け容赦のないエログロさがある。 エクアドルの町、人々の暮らしを見て、南米スペイン語圏が、 アメリカのヒスパニックメディアとこんな風につながっていることを知った。 #それにしても、スペイン語と英語のちゃんぽんを駆使し、 野心たっぷりの男を演じるジョン・レグイザモ、どしゃ〜っ! こんなに渋いあなたを見たのは初めてですわ。 ロートレックといい、ティボルトといい、癖のある脇役専門だと思っとりました。 おみそれしました。 #ワトリング、渋い映画を選んでますね〜。骨格がいいです。 (2006.02.24) ----------------------------
マウス・オブ・マッドネス In the Mouth of Madness (1994年 アメリカ)
ジャッキー・チェンが大好きな整体師のお兄さんが、わたしが映画好きだと知ると これを是非観て!!と貸してくれたのが「スターシップ・トゥルーパーズ」と、 この映画だった。「スターシップ。。」を大いなるパロディとして観るなら 受け入れられるんだが、このお兄さんはなんか素直にあの映画って楽しいねぇ〜 とか言いそうなのでちょっとびびってる。 で、うっかり借りてしまったが、ごめん!わたしはポール・バーホーベン監督も 苦手だが、ジョン・カーペンター監督も苦手なんだ〜〜。。 ラブクラフト的な、地の底にうごめく、おぞましい生き物。 無数の触手と黒くしたたる粘液。 地図に無い、ニューイングランドの町を支配する悪夢。 キング的な、小説が現実を侵食する理屈の恐怖。 ミックスさせた映画みたいなんだが、正直いって空回りではないだろうか。 カーペンターは、The Thing と ゼイリブ、ヴァンパイア の3つしか 見ていないが、共通して感じるものがある。 思いつきは良いけれど、その良さをラストまで持っていけない、子供っぽさ。 最後はぐっちゃぐちゃで終わってしまうB級感。 ホラーが好きでたまらない男が、ホラーモチーフを陳列して楽しんで いる気がするが、映画作品としては、壮大なる夢落ちギャグであろうか? ただし、ホラーものが大の苦手なわたしは、見終われば冷静に批判できるが、 見ている最中は 夜の道路を車で走っているだけで どひゃ〜、夜は走るなーーー!!! 自転車とすれちがうだけで 嫌、いやっ、勘弁してぇーーー!!! バックミラーをのぞくだけで な、なんで、のぞくんだぁーーー!!! # 最後のほうにちょこっと出てくる新聞配達少年は、 ヘイデン・クリスチャンセン君だ。 映画とは無関係だが、ものすご〜く可愛いっ。 (2006.03.21) ----------------------------
ブロークバック・マウンテン Brokeback Mountain (2005 アメリカ)
若いときに出会った大切な人を、20年ものあいだ、ずっと思い続ける物語だ。 大メロドラマでもあるが、一方で、青春の喪失をひきずって生きている自分の 人生を切なくも考えてしまう映画でもあった。 これって若い人が観るのと、多分感想が変わってくるんだろうね。 ワイオミングのブロークバック・マウンテンで夏の間羊番をする。 国営地なので、火を使っちゃいけない、痕を残すな、と、無茶なこと言われる。 物語はここにすべてが象徴されている。人間がふたりで暮らす時間の痕が残らない はずはない。でも、痕を残してはならないのだ。。 無口な青年イニスは、人懐こいジャックに促され、これまで兄と暮らしてきた数年間に しゃべった量より多くの会話を一晩でする。。 性の猛々しい衝動以上に、何ていうんだろう、この人はわかってくれる、という想い、 ただ抱きしめてくれるだけでいい、そんな想いを分かち合ってしまったら、、、 山を下るふたりを待つ人生は容赦なく進んでゆくが、他の人が埋めることの出来ない 心の穴は少しずつ広がってゆくばかりだ・・・ 無口で荒っぽいカウボーイ、イニスを演じるヒース・レジャーの、胸が張り裂ける ような切なさがぁぁ。 なつこいロデオ競技のジャックを演じるジェイク・ギレンホールもワンコな瞳で ぴったりの甘さだった。 シャツのエピソードは、もうもうもう。。 すべてがあの夏のブロークバック・マウンテンで始まった物語にふさわしいラストだった。 #イニスが切なくて切なくて・・・ 避妊するならもうsexをしない、と奥さんに言ってしまった彼は、 年に1,2回ジャックと会う時しか、ヤッてない、ってこと? 大きな体を持て余す、性欲と禁欲のかたまりのような人だったねぇ・・ (2006.03.18) ----------------------------
スウェー★ニョ Sueño (2005 アメリカ)
そうですよ、ジョン・レグイザモが観たくて借りたんです♪ 観てびっくり、聞いてびっくり。これまで観た彼の作品 (ロミ&ジュリ、ムーランルージュ、タブロイド)とうって変わって、 夢を諦めない、若い普通のお兄ちゃんを演じてる。 40過ぎのはずなのに、若い、若い、にゃんと、若いんだ〜! IMDBでボロカスな点数になっているので内訳を見ると、おや、高得点も結構 入っている。だがしかし、、最低の1点を入れてる人も多い(爆)。 そういう映画なんだが、、わたしは、、、へへっへ、高得点を入れちゃった。 残念ながら映画としては、あまりにご都合主義で恥ずかしくなるメキシコ青年の ドリームズ・カム・トゥルーもの。タイトルもスペイン語の「夢」、まんまじゃん。 ラテンミュージックコンテストにかける青年アントニオの恋やら友情やら。 だが、一見の価値あり。中年女は特に(^o^;; レグイザモの、誠実な笑みや、哀愁を帯びたまなざしや、コテコテのアクの強さが、 一粒で3度おいしく見れる仕掛けになっている。 最近のなかではピカイチの癒し系シネマであった。 恋人役のアナ・クラウディア・タランコンは、「アマロ神父の罪」のあの娘だ。 え?こんなに綺麗だったっけ? とびっくり。 中年女役のエリザベス・ペーニャ という女優さんが、これまた、むっちゃ上手い。 (2006.03.23) ----------------------------
Dear フランキー Dear Frankie (2004 UK)
ひとつの旅が終りを告げる物語だ。。 暴力夫から逃げて引越しを繰り返す母親リジーと難聴の息子フランキー。 フランキーはとある私書箱に父親宛ての手紙を送りつづけ、返事を 貰うたびに、壁の世界地図に寄港地の旗をたてている。その旗の数が じーんとくるよねぇ。 最初はフランキーを慰めたい気持ちから嘘の手紙を書いたリジーだが、 今ではそれが唯一息子の心の声を聴くコミュニケーションのように感じて やめられなくなっている。その気持ちもよくわかるなぁ。 子供部屋の様子、壁の色、宝物をいれるカン、小さな部分、部分がとてもやさしい。 父親役を買って出た、過去も未来もない謎の男ジェラルド・バトラーが渋い! およそ家庭や小さい子供と縁がないようにみえる彼の無骨さがはまってる。 また戻ってくる? このセリフが唯一、フランキーが声にだした言葉だ。 I don't know. I can't. フランキーが父親を求める旅がひとつの終りを迎えるが、彼はそれを 強く、たくましく、受け止める。。 謎の男とリジーの関係も、決して甘いハッピィエンドじゃなくてほろ苦い。 いつかまた会えたらいいが・・・ 憎たれ?リッキー(これがちょっとイイんだなぁ)と超おませなカトリオーナが 見ている前で、フランキーが大事な石を投げるシーンが切なくて大好き。 #スコットランド訛りの英語が全然わからなかった。マジで何語?と思ってしまった。 英語字幕で見てみたいかも(爆)。 (2006.03.26) ----------------------------
サハラに舞う羽 The Four Feathers (2002 米・英)
どっへぇ〜・・これほどフォローに苦しむ作品だったとは・・・(爆)。 ヒース・レジャーを見たいがために借りてきた映画なんだが、 ヒース君の奮闘も虚しく、焦点のぼけた映画なんである。。 1884年、ビクトリア女王時代の英国、士官のあこがれの美女と婚約したハリーこと ヒース君は、アフリカでの戦争に懐疑的。なんのために戦うのか僕は嫌だ、と 遠征直前に除隊してしまう。だが、親友や婚約者が臆病者!となじるや、苦悩するってわけだ。 (ヒース君は、臆病者を意味する白い羽を4枚貰っちゃったのサ) 戦争に荷担するのを恐れる気持ちは理解できるんだが、そのあたりをじっくり描くのかと 思いきや、お話はこの後とんでも冒険ものになってしまう。 窮地に陥った友を救うため、単独アフリカへ出かけ、砂漠に放り出されても、ずたぼろになっても、 結局はバッタバッタと敵をなぎ倒すことになる。 わたしは知らなかったが、これまでに6度も映画化された英国文学の古典だという。 なるほど、アフリカを蹂躙する帝国主義路線を問題視するわけでもなく、 友のために闘うのはなんと美しいことであろうか、、で終わってしまうカックンぶり。 #ヒース君は、きゃぃんと美しい。ひげもじゃ、髪ぼうぼうも素敵だ。 なにやら切なく思いつめた表情もよかぁ。食べ物をくれぇ〜とすがりつくのもよかぁ。 超人的な働きで、アフリカから帰ってきた男ヒース君は、ますます男っぷりを あげたのであった。オチマイ。 (2006.03.28) ----------------------------
クラッシュ Crash (2004 米・独)
ポール・ハギス脚本・監督作品。 観終わったあとすぐに立ち上がれない。行き苦しくて、やるせなくて、うろたえる。 「他者との距離」、普段は窓ガラスや扉をはさんで距離を保っている人々が クラッシュー衝突によって、むきだしの怒りや恐れ、偏見や憎しみと突然対面せざる得なくなる。 まさに人種のるつぼアメリカ、LAの36時間を切り取ってみせた作品だ。 映画のなかで「他者」は分かりやすく「人種の違い」という形で現れるが、 結局、ひとは知らない相手に対峙するとき、どう対応するか、とっさの 出会いで露にされる感情が、恐れや不安や偏見だったりするとどれほど簡単に 人の関係は壊れてしまうのか。 緊張をはらんだ社会の、あやうい日常を嫌になるほど見せ付けられる。 白人、黒人、アジア人、イラン人、一瞬の感情が吹き出る人々はいずれも 痛ましいほど無力や孤独を意識させられるが、友愛や救いを求めている自分を 発見したりもする。。 心に残ったエピソードは、黒人の刑事グラハム(ドン・チードル)、 白人の刑事ライアン(マッド・ディロン)、 白人敵視をしている自動車泥棒アンソニー (ルダクリス)。 特にグラハムはとりわけ哀れで哀れで胸がずきずき痛む。彼はこの映画のなかで 最後まで救いひとつ無かったのではないだろうか。 「愛」がキーワードなんだよ、ほんのちょっとの愛があれば・・・ (2006.03.29) ----------------------------
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