1998年その3


三人のエンジェル To Wong Foo, Thanks for Everything, Julie Newmar (95年米)

これは過去の有名な作のリメイクのようだ。

三人のおかまがドラッグクイーン(おかまちゃんのチャンピオンのことね)
コンテスト目指して車で旅行中に立ち寄った町でひきおこした騒動、
これが意外なほど良かった。嫌いだったあいつ、えーとゴーストの主役の
パトリック・スウェージ、彼のおかま演技には胸をうつものがあった。
これまで嫌いだなんていってごめん!
プライドが高くて、高潔で、すてきな人だった。
町の女たちがそれぞれ気持ちを洗われて、生き生きし出すところが
とてもとても良かった。ナイスバディなプエルトリカン?の彼女?も良かったし、
これは借り得!


#後日 つけたし オリジナルは「プリシラ」である。
オリジナルの方がずっと味がある。やはりリメイクはオリジナルを越えない・・
 
 
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ファーゴ Fargo(96年米)

これは、まさに、役者ぞろい。。もーやんなっちゃうほど、
ぴったしの人たちで これがいやな人には耐えられないだろうが、
好きな人間には、いよっ!待ってましたの世界だ。
娘婿の男、これがまた、いやな奴で、はは、、ぴったし!あの顔!
忘れられないよー。 主人公の女性警官とその夫、正直言うと、
泣きそうになるほどすてきな夫婦でうらやましかった。
スティーブブシェミがまた良くてねえ、変な顔よってのが絶妙。ははは。
「なぜだか私にはわからないわ。もっとこの世は素敵なもののはずよ」って
いうのが 淡々としていて好き。これもコーエン兄弟。
 
 
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The English Patient(96年米)

最後までみることができない。泣いてしまう自分に驚いた。
とても映画だと割り切ってみることができなかった。
ラルフファインズの眼のせいだ。あの冷たいようで狂おしいような眼。
胸が痛くなって、吐きそうな変な気分になって、映画を楽しんでいるのか、
辛い気分をあじわっているのかわからなくなりそうだった。
 
恋のお決まりと言わば言え。思いつめた顔。欲望に突き動かされた抱擁。
2度目は熱情の顔。はたから見ると恥ずかしくなるほどの、sexをしたいという顔。
そして、おだやかなsexができるようになると、幸せをあけっぴろげに
あらわした顔になる。 
傲慢に美しい顔のラルフファインズがそんなみっともない無防備な
顔しないでよって言いたくなるくらいうれしそうな顔をする。
そして、その次には破局がくるんだ、そこが映画の中心部分なのに、
どうしてもそこを見たくない、見れない。
これ以上前に進めない。
自分の中でまだこんなに感情が残っていたとは
この映画をみるまで想像していなかった。
 
 
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Here my song(91年米)

これはまた味のある映画だった。劇場の再起をかけ、往年の名歌手を探す
若者と彼の友人。舞台はアイルランドに変わると、アイルランド人の
日常なんだか非日常なんだかわからないような不可思議な世界にはまる。
団子鼻の頭が赤いのんだくれ客がつどうパブがぴったりくる村。
恋と友情とおかしみが、派手ではない俳優たちにぴったりと収まる。
とても好きな映画。
 
 
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Sweet hereafter(97年米)

これはいまだに納得が行かない映画。解説などに書いてある趣旨や主題は
私には全然分からなかった。 バス事故で生き残った少女が大人たちのやり方に
自分なりの解決方法を出すというのはよいのだが、それは少しも心あたたまるもの
でも納得いくものでもなく、私にはとても残酷な仕打ちに見えた。 
 
私には娘を失う弁護士と父親を捨てる少女を対比させながら、
愛が憎しみやわずらわしさや下世話なものに変容してしまうありさまを
描いた作品にみえ、しかも少女のやりくちは冷たい炎の一突きにみえた。
 
愛は最後は酒を飲んだあとの湯気の立った小便になってしまうというのが
主題のようにみえたのだが。。
 
 
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第三の男 The Third Man(49年英)

有名だったからいつかは見ようと思っていたのだが、かえってこう思うと
なかなか見る気にならないものである。ウィーンの暗い町並み。石畳が続く道。
光と影の美しさは、もうえもいわれぬ美しさだ。
何度繰り返して見ても、見るたびに完璧だと思う。

ホリー役のジョゼフ・コットンの浮かばれない役どころがいいですね〜。


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遊星からの物体X オリジナル作品白黒。The Thing(51年米)

Xは植物人間。怪力であり、どこでも再生可能、しかも栄養源は血である。
種を血清で育てる博士はノーベル賞受賞者で、科学のためなら人の死も
しようがないと言い切るとんでもない立派さだ。 
なかなか甘いラブストーリーでもある。
 
 
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アルビノアリゲータ Albino Alligator(96年米)

ケビンスペーシー監督。映像感覚がいい。カットが凝っている。
話の進行もおもしろい。 ただ、ラストがいまいち弱い気が。
フェイダナウェイは本当にかっこいいです。美人じゃないはずなのに
どきっとする。 鉄火姉御ってとこがすき。樋口可南子もこの手の女性を
演じたら似合うだろうな。 あのあぶない兄ちゃんがはまってたなあ。
やばいことは困るぜと思っているのに、どんどんやばいことになって
いってしまう、雪だるまアンラッキーが、うまい。
 
 
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私家版 Tir・・part (1997年フランス)

完璧なイギリス貴族社会。そうなんだ、やっぱりイートンのネクタイをして
会員制クラブで(後家蜘蛛の会のような)お茶を飲んで政治の話を
するなんてことをやってるんだ。 女性の帽子もおもしろかった。
紳士は女性をほめるのがとてもうまい。人間として下品で憎むべき奴が
とても傑作を書いた時、人はどうしたらよいのかな。
作品とその人物は完全に別の存在なのかどうか。 芸術の根本的な問題だね。
かっての恋人の自殺の原因であった男に復讐したかったのではなく、
品の悪い者が一流面をして自分の社会に入ってくる事、
それ自体がいやだったのではないかしら。
てっきりイギリス映画だと思ったら、フランスで作られた?どうして?
 
 
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踊る大捜査線(98年日本)

はっはっは。なかなか満足作。期待を裏切らない出来だと思う。
最後は大笑いで、よかった。
 
 
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sling blade(96年米)

監督、脚本、主役、の彼ボブ・ソーントンが秀逸。脚本の妙だとおもうがセリフのうまさ、
彼がとつとつと彼の過去や思い出を話すだけですべてが語られる。
あの地面の穴、あれを忘れる事はできない。
ちょっとだけ残念なのは あの男が殺されるのは途中から見えてしまい
物語の楽しみが少し減ることなのだが、あの男は殺されずにはすまないよなあ。ほんとにやな奴なんだ。
つまるところどうしようもない奴は死んでもらうしかないって事だ。
 
ただ、あんないやな奴にひっかかった彼女は今後もひっかからないという
保証はないなあ。。心配。
 
 
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マスクオブゾロ The Mask of Zorro(98年アメリカ)

たいして期待してなかったのに、これがおもろかった。
いやーバンデラスはやっぱかっこいいや。 とろいあんちゃんが、
みるみるうちに水もしたたるいい男に。剣は強いし、勇気もある、
足りないものは 教養だ、というところは笑ったなあ。然り。
人間教養なくっちゃね。 
新生ゾロの気品はすなわち成長をとげたバンデラスの気品でもある。
こうやって努力と自信とによって品のある顔へと変貌してゆくところに
やられちゃうんだなあ。
 
 
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隠し砦の三悪人(58年日本)

一体どこが三悪人なんだか、これはちょっと疑問在りだが、おもしろい。
農民の小狡さや小心さ、欲深さ、愚かさ、武士の高潔さ、勇猛さ、公正さ、
思慮深さがある意味ステレオタイプであるが、役者がはまっているのでいい。
三船敏郎は豪傑な名家来が似合い、胸をすく活躍だ。
じゃりの坂の登坂シーンをなぜあんなに長く撮ったんだろう。
あれは私にはうんざりするほど長かった。それが狙いか、、
確かにうんざりするほどのじゃり坂を頭を使わずにひたすら手足を動かして
登る百姓、ってわけだ。
 
 
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タンゴレッスン The Tango Lesson(97年米)

脚本、監督、主役を受け持っているサリーポッターが、男女の出会いと
恋愛を自分の愚かな感情も含めて 赤裸々なのに一歩ひいている第三の眼で
描いているところがいい。
 
なぜ出会ったのか、君は運命か偶然かどちらを信じる?君は神を信じてるのか?と
きかれ、私は無神論者よ、出会うのは偶然だわ、でもそれからどうするかは
意志の力よ。この人との繋がりをもっと深いものにしたいのかどうかは
自分の意志なのよ。と答える彼女。
 
ユダヤ人である自分にこだわるから、ユダヤ人はみなああいう風に人間について、
愛について、いろいろと自分に問い掛けるのだろうか。
自分の感情は普通の感情だと何も疑問に感じない我々にくらべ、
彼らは自分がこう感じるのは自分がユダヤ人だからなのかと問い掛けるようだ。
 
イギリス生まれのユダヤ人。アルゼンチン生まれでパリにすむユダヤ人。
どこにいても所属していないように感じ、さりとてシナゴーグで安息が
得られるわけでもない、自分は何者なのか、、、孤独であると常に感じ、
怖いと思う。だから、私たちは出会ったのよという彼女の言葉。
タンゴがよく合う。 精一杯生きて、愛して、苦しんだ人にしか
タンゴはわからない。官能的で激しく狂おしい感情。
けっして解き放つ事ができない何か重い固まりを抱いて二人は踊る。
しかし孤独な空間で確かに二人は一つになって踊る。
そこにだけ真実があるかのように。
 
 
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愛のイエントル Yentle(83年米)

これもユダヤ女性の自分探しの話だといえる。1900年初頭のヨーロッパでは
女性は読み書きが出来る程度の教育で終わりなのは当たり前であった。
その時ラビの父親をもつ主人公が学問することを選び人生に立ち向かう。
愛情を得る事はできなかったが、それでも自分の夢を捨てなかった事に満足する。
バーブラ・ストライサンドが初めて監督した作品だったっけ?強い人だとつくづく思う。
 
 
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悪い奴ほどよく眠る(60年日本)

あまりに社会正義をつよく前面に押しすぎるのだが、
それでも三船敏郎の格好よさに泣けた。あの抱擁シーンは美しかった。
心とろけるとはこういう感じか。香川京子さんもかわいらしい。
こういう魅力を放つ男優はいま思い付かない。残念なことだ。
三船敏郎と黒澤明が同時代にいたというのもすごい。
ハリウッドのセクシー男優など足元にも及ばない男気と強烈な色気を
全身から放射していた。
 
それにしても作品のラストでの三船演じる主人公の死は
ストレートパンチすぎてなんか歯ぎしりを通り越し敗北感すら感じてしまう。
今、これほど社会正義を訴える映画をつくることはできるのだろうか。
 
黒澤作品のビデオを見るまで、私にとって三船敏郎はなにやら昔の俳優と
いうだけの、年老いた人であった。彼のすばらしさを少しも知らなかった。
画面に溢れる存在感、圧倒される色気、全身から放射されるエナジー、
この人を大事に出来なかった日本映画界を本当に残念に思う。

 

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