ネイティブアメリカン系シェイプシフター（コヨーテ）のマーセデス（マーシィ）・トンプソンをヒロインとする
「裏切りの月に抱かれて」を読んで、世界設定がとても気に入りました。

現代社会の中で生き延びようとしている、ヒトとは違うルールを持つ生き物たち。

ドライなユーモアがある。パラノーマルな存在だけれど、スーパーウーマンではないトコがいいヒロインは
決してツマラナイ愚かな事はしない。
食わせ者は食わせ者らしく行動する。日常生活のなかにただならぬ緊張感があり、暴力や血、死がすぐそばにある。

奇妙に不幸なこの世界がとても気に入りましたが、マーシィのシリーズのスピンオフの方を次に買いました。
なぜなら、わたしはサミュエルはきっとアダムに負けると思うのでそれを見たくなかったのです（爆）。
（もう４番まで出てるので書評とか読むと嫌でも分かっちゃうんですが・・）

アルファ＆オメガシリーズはマーシィのシリーズと世界設定は同じですが、毛色はかなり違います。
マーシィシリーズはヒロインの一人称視点、ハードアクションのアーバンファンタジー。
アルファ＆オメガシリーズ（Ａ＆Ｏ）は三人称視点、アクションより登場者それぞれの内面重視のパラノーマルロマンス。
Ａ＆Ｏをロマンスと言い切ってしまいましたが、父親の右腕、殺し屋として生きてきたチャールズと父 Marrok との父子の物語でもあります。

Ａ＆Ｏは人狼社会中心の物語で、群れの存続のために負う義務や責任がどんよりと重いです。

Ａ＆Ｏがロマンスとして面白いのは、一般の人狼ものと比べて、人間としての人格と狼としての人格が独立して存在している事です。
例えばアンナは狼の部分ではチャールズを「mate」と認めて安全を感じても、人間の部分では怖れを感じてしまったり、その逆もあったり、
どちらもが、知り合って間がないのに「mate」として関係が始まった事に人間の部分ではとまどっています。
他者と関係を結び、人間的に成長・変化しあうことで、心と体に負った深い傷が癒えてゆく、
werewolfものでは珍しくゆっくりと愛は深まってゆきます。