HOME    更新履歴リスト    CINEMA    中南米映画リスト    BOOKS    MIHA    書きっぱなし    PC雑感

更新記録 2009年12月1日から2010年1月31日まで


12月 2日

シャンナ・スウェンドソンの(株)魔法製作所シリーズ3、4を続けて読んだ。

3巻を読み終えた時点で、う〜むむ、、困った。正直言って2巻も1巻ほどの良さが無いと感じたが、3巻は魅力をさらに失ったというか、、う〜ん、、

3巻「おっせかいなゴッドマザー」は読んでいる間もイライラしたが読み終わってもイライラしている。
2巻のラストからわずか2週間の間の話で、それも読んでいて疲れる原因だ。どたばたと人を引きずりまわして、結局謎はひとつも解明されないし、ヒロインの普通という強みも発揮されない。

1巻は「普通という強み」が生む面白さや「魔法界のマイクロソフト」の喩えがぴったりな、現実にありそうなアレコレがおかしくて、そこにもじもじロマンスやミステリが加わって楽しい本になっていたのだが、「世界征服を狙う敵」なんてもんを不用意に担いでしまったのが失敗という気がする。
「マイクロソフト対アップル」だった話が「アメリカ対ビン・ラディン」になったかのよう、謎の黒幕なんてワケが分からんぞ! 潤沢な資金って、敵の正体は魔法界のグーグル?(うそ)

疑問に思うのがフェアリーゴッドマザーが引き起こす災害。魔法は人間に害を与えてはいけないという条項があったんじゃなかったっけ? 善意からだとしても氷水に人間を落としたり頭の中にアレを入れたり、、悪意が無ければどんなひどい事をしでかしても良いのかなぁ。。

本来の敵について作者がちゃんと考えていないから、とりあえずクリスマス休暇とフェアリーゴッドマザーでお茶を濁しておこうとしてるような印象。

4巻「コブの怪しい魔法使い」
3巻ほど低調ではなく、まぁまぁ浮上。
雰囲気は「マイクロソフト対アップル」系の現実にありそうなマジカルワールドに。
魔法のeラーニングなんてありがちだし。

だが、こうして4巻まで読み終わって思うに、Ballantine Books が5巻目の契約を躊躇った、というのをあながち責めることは出来ない気になった。

「1巻と比較して後続の巻が売れていない」というのがバランタインの言い分だが、売り上げは実際のところこのシリーズの正直な判定かもしれない。

ロッドやマーリンなど1巻からのおなじみキャラクターを4巻で登場させても全然活かせない事や、魔法界のビン・ラディンもとい謎の黒幕が誰なのか何をしたいのか、未だになんら見えてこない事や、色々な事を放置してるのに新しいキャラを増やしてしまう事や、4巻も2週間にも満たない間の話だった事など、この作家さんは短い期間のどたばたに終始しすぎる一方、シリーズとしての立ち位置がはっきりしていない気がする。

はたして5巻でオーウェンの出生の謎や「世界征服」を夢見る影の黒幕やフィリップの会社の謎などをきっちりと描きつつ、ヒロインのぼやく日々を書く事ができるのだろうか。

ハリポタのように、オーウェンの両親はオーウェンが生まれた直後に影の黒幕に殺されて、でも影の黒幕もその時力を削がれてしまい、フィリップの会社の会長に寄生して復活の時を待っていて、今再び暗黒の力が蘇り世界征服を、、ってな話がチックリットになるんだろうか。。

このページの先頭へ
12月 5日

2009年J1最終節 「ガンバ大阪ージェフ千葉」2−0

久しぶりの生観戦。朝、雨の中、家を出発。
カッパやビニール袋、タオルやホカロン、替えの靴下、など重装備で出かけたが、茨木市駅に着いた頃には雨があがり、日差しが気になるほど晴れわたった。雨の用意ばかりしてきたのに、まさか日焼け止めクリームが欲しくなるとは。。

試合は低調・・・パスもあまりつながらず、サイドもあまり上がらず、コーナーキックとPKで得点という省エネサッカーだった。

試合後はサッカー観戦友人たちと忘年会(^o^)。

読んだのはパトリシア・ブリッグズ「裏切りの月に抱かれて」

これはいいですね〜。

アーバン・ファンタジーというか、クールでダークなパラノーマル。
アメリカが舞台になる必然がある。ヴァンパイヤや人狼がヨーロッパから新大陸に移ってきた時、ネイティブの異形のモノたちも居たという設定。
現実の町や日常の暮らしと同じ目線で秘密が存在する緊張感。

なによりヒロインがいい。
無敵すぎず、弱すぎず。自分自身をよくわかっている。
適切に冷静で適切に感情的、ばかじゃない行動を取れるから信頼してストーリーを追っていける。

無関係な人間を無理やり人狼化して薬の実験台にするという最初のエピソードが正直ちょっときつくて胸が痛むが、ちゃんとラストの方でフォローがあるので、悲劇には違いないが慰められる。 ヒロイン(ネイティブとのハーフ)が十字架を持たないこともそうだし、総じて作者が「鈍感じゃない」点がとても好ましい。

たいていは死産になるので、子孫や仲間を増やすには死亡すれすれまで重傷を負わせねばならない、という人狼設定がシビアできつくて(残酷だが)面白い。
人狼なんてぽこぽこ生まれちゃいかんっ(爆)、というのは冗談として、スイートホーム的でない、死と血の匂いがする世界設定が冴えている。

テリトリー内の順位、群れ行動。女というより雌の群れのなかでの位置。
人狼における理性と本能、自制と野性。
具体的な描写や、にやりとするセリフなど、実に上手い。

途中から翻訳本ではなく原書を読んだ。
というのもヒロインが「あたし」と名乗るのがあまり好きじゃないのと、日本語だと性別や複数形が分かりにくかったため。

ヴァンパイヤの巣の「ご主人さま」は、原作中ではミストレスと書いてあるので「女主人」である事は明白だが、翻訳本だと「ご主人さま」なので電話で話した女性があとで「ご主人さま」だとわかってびっくりだったり、「灰色の君」はGray Lords と複数になってたり、とか。

イギリス英語を関西弁に訳すのが最悪。 イギリスはアメリカの祖だから古都のイメージで京都弁にしたのだろうか?(でも京都弁ではなくテレビでよくある関西弁だったが)

サミュエルが父親ブランのことを「親父」と呼ぶのも違和感があった。
「親父がおまえと話して説得したんだってな」
My father told me he’d spoken to you....

ブランもサミュエルも200歳を超える年齢で群れのアルファとサード。サミュエルは通常穏やかで職業は医者でもある。 原文が Old man とか Dad になっているならまだしも、My father なんだし、「親父」や「おまえ」って感じなのかなぁ。

実際、サミュエルの弟であるチャールズも My Father と言うのだが、そのセリフは「父が歓迎すると言っている」と訳されている。

全体にサミュエルのセリフは田舎モノのような、残念な奴って感じのセリフになっていて、圧倒的にアダム(ライバル的存在)に比べて分が悪い。おそらく翻訳者はヒロインがアダムとくっつくと思っているのだろう。
サミュエルってば可哀想すぎだぁ・・・

このページの先頭へ
12月 7日

2009年は Karla Kelly カーラ・ケリー ファンにとって忘れられない年になった。

日本ではロマンス本翻訳ブームのおかげで Mrs.Drew が翻訳された。
好きすぎて気軽に「どうだった?」と訊けないほどちまたの感想にドキドキしたが、読んだ友人が「すごくよかった」と言ってくれたのが自分が褒められたように嬉しかった。

本国では長らく望んでいた新作が今年の1月にハーレクイン・ヒストリカルから出て、さらに続編が7月に出て、一年に新作2冊も読めてほんま感謝感激だった。
まさか、もう嬉しい驚きはあるまい、と思っていたら、なんと新作短編がハーレクインのクリスマス・アンソロジーに収録されていた。

A Regency Christmas(2009)
今年出た2冊の新作は異母3姉妹の上ふたりの話で、ヒーロー達も何かと関係が深い間柄だった。
このアンソロジーに収められている短編の主人公sは彼らの親戚縁者ではないが、短編のヒロインの娘が通っている学校が バースのMiss Pym's Female Academy (前2作に深く関わっている学校)だし、ヒーローはおなじみ英国海軍キャプテンである。

プリマスの宿屋はおなじみのあの常宿だ。
時系列としては、ナポレオン戦争が終結しているので、前2冊より後の出来事となる。

設定は1999年のクリスマス・アンソロジー「An Object of Charity」に似ているが(ヒーローが22年間、海軍で過ごして故郷に帰っていない、宿屋で子供(姉弟)を助ける等)、ちょっと読み始めただけで、もう既に、、あぁ、わずかのセリフで不意打ちと言うかうまく言えない気持ちが喉の奥で塊になって、感情がまるごと揺さぶられる。
まだ読み終わっていないので感想は後日。

日本ハーレクイン社はこんなお宝を持っているのになんで翻訳しないのかなぁ。

上記のアンソロジーと一緒にPatricia Briggs の 人狼もの(サミュエルじゃなくて弟のチャールズの方の話)を2冊購入。
どちらもeBook。

そのとき気付いたのだが、ジェーン・オースティンの作品をホラー系にアレンジするのって流行ってるの?

日本でも「高慢と偏見とゾンビ」がもうすぐ出るが、さらに「Emma and the Werewolves(エマと人狼s)」や「宇宙で・・説得」とかリリース予定だったりする。

うひょ〜、、エマと人狼s、、ちょっと興味あるかも(爆!)

このページの先頭へ
12月10日

本を読むのを優先させると、感想書いている時間がなくなるし、塩梅が難しいわ。
Carla Kelly 「Christmas Promise」(2009)

兵士や軍人にとって平和はどういう意味を持つんだろう、という真面目な問いかけと、カーラらしいじんわりした温かさに満ちている。
カーラはなんていうか、身の程を知った、分相応な幸せを書くのが実に上手くて、日常なのに特別というか、、それと、ヒーローの包容力や人間的魅力に癒される。

ただしヒロインの設定がちょっと、わたしの好みじゃなくて、と言ってもこの時代どうしようもないのだけれど、星3.5〜4かな。
夫が亡くなって10年。身寄りの援助も無いし、年金もないし、蓄えを切り崩していく未来しか無いヒロイン(&15才の娘と10才の息子)。ま、息子がもう少ししたら働けるようになるけれど、とにかく、現在のところ勤労収入が無くて非常に困っている。。そんな時ヒーローに再会し、ヒーローの経済力がヒロインの困窮をすべて救ってゆく、、

とってもしみじみするロマンスなんだけれど、この非対等な関係がちょっと嫌で居心地が悪かった。

不思議だ。
リージェンシーによくある、親の借金のために金持ちの相続人と結婚するとか、夫、父親、兄弟のお金を使うことに何の疑問も持たないレディ達とか、お金を貰うことが「当然だ」と考えている女性たちの話は全然抵抗なく読めるのに、いざ誰もお金をくれなくなった状況で男性からお金を貰ってばかりの話になると、途端に抵抗を感じる。

経済的な非均衡が見たくないものを見せるというか、正妻と妾とどこが違うのか的なつまらん事を考え始めてしまうというか、ま、ロマンス本なんだからもっと気楽に読めばいいんだけど。。
他に文庫本を2冊読んだが、後日に。

読み始めたのは、Patricia Briggs「Alpha and Omega」

そう、アラン・マッケンジー・フレイジャーの落とし前をチャールズがつける、あの話だ。
「裏切りの月に抱かれて」を読んだ人なら、絶対に知りたいっしょ!

マーシィの方は、アダムとサミュエルのどちらかが脱落すると思うとちょっと腰がひけてしまって、臆病者なので続きを買わなかった(爆)。

Mobipocket形式を購入し、WS003にコピー。
パソコンでも時々読むけれど、WS003の方が画面がタッチパネルなので分からない単語をちょっと指で触れるだけで訳が出て便利なの。

チャールズ、、うけけ、格好いいやんけ。
3年前にBFに襲われ、無理やり人狼にされてしまったアンナがヒロイン。
ウイスキー色の髪、青ざめた顔色、やせた娘、男性の暴力による虐待、、群れの最底辺に位置する彼女だが、実は彼女は「オメガ」なのだ。。。

このページの先頭へ
12月13日

Patricia Briggs 「Cry Wolf」(2008)
うわ! パトリシア・ブリッグズのオメガシリーズ、ガツンと来るじゃないですか。

「裏切りの月に抱かれて」の色調とは随分異なり、陰鬱で重くて胸がふさがれて、読んでいて本当に苦しい(褒めてるつもり)。

「裏切りの月に抱かれて」のマーシィの物語では作者はとりあえずエンターテイメント性を重視したが、オメガシリーズの方は、マーシィの時に脇に避けた点を追求している気がする。

ブリッグスの創った人狼世界は群れ単位で普通に現代に暮らしていて、人狼の事を気付いている人もいるが知らない人が大半、という状況である。
法医学の発達、インターネットに監視カメラ、、いつまでも人狼の存在を隠しとおす事は今の時代では無理だと「マロック」(人狼の長)が考えているところだ。

人狼は普段は人の姿で暮らしているが自由意志で変身できる(といっても変身には時間を要し、苦痛も伴う)。 満月の影響を強く受け、その時は「内なる狼」が激しく暴れる。 もともとヨーロッパが発祥の地である。

さて、、まず人狼の女性は子供を産めない。妊娠期間中も満月の影響を母体が受けるため流産してしまう。
人間の女性と人狼の男性のペアの場合は流産率は高いが子供は生まれる。ただし、すべて人間の子である。

では一体人狼はどのように子孫を残すのだろうか。

それは、噛んで致命傷になるほどの怪我を負わせたとき、生き抜いたものが「変化」に成功して人狼になるのだ。

人狼になるには厳しいルールがあり、本人の希望が必要。無理やり人狼化させることはできない。
本人が希望し、大怪我から生還しても、「変化」によって得た狼の凶暴性をコントロールできないものは群れにとって危険になるので、アルファの命令によって殺される。
通常の傷は治ってしまうので、首の骨を折らねばならないのだが、群れのアルファは友人や時には息子や娘さえも殺さなければならない責任を負っている。

一旦人狼になると、どんな傷もすぐに治り、永遠に近い寿命と若さが与えられる。

つまり、つまりですよ、自分の妻や子供を噛んで人狼化しないかぎり、妻や子供がおばあさん、おじいさんになって孫みたいなのが人狼の夫、という事になり、愛する者が老いて死んでゆくのに付き添えず、ひとり残されるわけ。
でも自分の妻や子供が噛んで欲しいと決心したところで、人狼になれるかどうか保証がない(死亡率50%?)。

めでたく人狼になり永遠に近い寿命を得たといっても、こういう人生(狼生?)はよほどの幸運じゃないとだんだん絶望の色が濃くなり、精神が不安定になる。
「内なる狼」をコントロールできなくなった長寿人狼を始末するのも群れのアルファの義務。。

噛むも地獄、噛まぬも地獄、、、マーシィの話で紹介された人狼世界の暗い部分がより悲しく浮き彫りになる。

ストーリーはマーシィの話とほぼ同じ時期で、舞台はブランの統べるテリトリー、モンタナ、アスペン・クリーク(Aspen Creek, Montan)。マーシィの本のラストの部分と重なっている。
長年の友人CWをアルファは手を下さざる得なかった、、CWの葬式は重たい空気が流れる、、アルファを信頼しているが、それでもやはり生殺与奪権を握られている事への不安がうずまく、、CWの孫(人間)が感情的にアルファを糾弾する、、
一方、このアルファを頼りに別の群れから移ってきた長寿人狼Aは妻を亡くした悪夢に悩まされ狂気に怯え、アルファに「自分を殺してくれ」と頼み続ける、、

「人の生死」「責任」、、あぁ、やたらめったら出てくる人々が「孤独」だ。(涙)

前作の短編「Alpha and Omega」(2007) は、この本のプロローグというよりも、第一章といったところ。
短編の終わりの数分後からこの話は始まっている。
短編の決着はあっさりしていたが、人狼の長寿と狂気、愛と孤独を書く気合が感じられた。

挑戦的なのは、こんなヒロイン設定でシリーズを始めて大丈夫なのか?と思わせるヒロイン設定。
ぶっちゃけて言うと、Anna は集団レイプ・暴行を受け続けていたヒロインで、心の傷が非常に深い。 レイプが関係すると日本ではまず翻訳されないので(パトニーのFallen Angelシリーズも集団レイプを受けたヒロインの巻は飛ばされたし)、このシリーズもまず出ないと思うが、ただでさえ男尊女卑と力による支配が基本の人狼階級社会で、最底辺を無理強いされた女性をヒロインにしている。

そういうわけで、本作はヒロインが自己の尊厳を再び確立するまでをもう少しじっくり書いている。
虐待を受けた女性が男性を信頼して受け入れる事、というロマンス的テーマと、人狼の呪われた宿命って感じの、ブランやサミュエルやその他大勢の孤独と、人狼の存在を世間に公表するかどうか、という政治派閥的綱引きと、襲い来るブラックウィッチと、、

(to be continued..)。

このページの先頭へ
12月15日

アンソロジー「Strange Brew」(2009)を買ってしまった。
魔女やヴァンパイヤ、人狼など9つの短編が入っているそうだが、お目当ては Patricia Briggs の「Seeing Eye」 。
アルファ&オメガやマーシィと同じ世界設定で、ヒロインは盲目の白魔女、ヒーローが人狼だそうだ。
前にも書いたが、Fictionwise ではこの本を半額セールしているんだが、クレジットカードがアメリカで発行されたものじゃないとダウンロードできない・・・ 
しかたなく別の店から定価で買うが、9つ全部読まないのに定価約13ドルはちょっと高いにゃ。

読まなくてもいいや、と一旦は思ったが、アルファ&オメガの3番目「Hunting Ground」にこの短編のペアが姿を見せるらしくて、、、えぇい、商売上手めっ、ポチ、というわけ。

さて、読み終わった「Cry Wolf」

ふぅ、、ハッピーエンドのはずなのに、幸せをあまり感じられない。。
吹雪のなか手足の感覚を失い、ただ足を前にだす事を繰り返し、やっと山小屋に着いた。
扉をあけて人が思うのは「到着」した幸せよりも何も考えずにただ眠りたいだけなんじゃないか。

ちょっとおおげさだけど、そういう感じに似ている。

なんか読み終わると重たい疲労感が・・・(爆!)
Bran, 幸せじゃなくて切なすぎるなぁ(涙)。

まさかブランとサミュエルがここまで年をとっていたとは。。ブランなんて1200歳以上ですぞ・・。しかもとんでもない過去を持っているし。。。
この話、ロマンスというより、父と息子の物語だよねぇ・・・

チャールズはどこまで父親を守り続けられるんだろう。
Charles や Anna が群れのなかの単なる駒になってほしくないけど、Branの存在感がでかすぎる。

このページの先頭へ
12月17日

Patricia Briggs のアルファ&オメガシリーズがすっかり気に入ってしまい、ただ今「Hunting Ground」(2009)を読んでいるところ。
ブリッグズはプロットがしっかりしているし、登場人物たち(主人公に限らず)に厚みがあるし、「mateだからメロメロ」の欲望ロマンスにしない慎重さがあるし、安心できる常識があるし、読んでいて気持ちがいいわ。

「Seeing Eye」は面白かったけれど、短編なのであっさり終わってしまった。他の8編は読まずに放置して、「Hunting Ground」へ。

werewolfの存在を公表するというMarrok(人狼の長という意味)ブランの決心に揺るぎはないが、公表する前にヨーロッパの人狼たちにも一言ことわりをいれるため、シアトルでサミットを開く事になった。

げげ、同じ部屋にアルファが二人居合わせただけでも血を見そうなヤバさだっちゅうのに、イギリス、フランス、ロシアからそれぞれアルファがやってくるとな!
しかも、ヨーロッパ狼はごっつ性質(タチ)が悪そうで、若い人間の肉が大好きだとか・・・

当然出席を予定していたブランをチャールズが必死に止める。嫌な予感がする、、、ってわけで、チャールズとアンナが北米人狼統括長ブランの代理として、ヨーロッパ狼達との話し合いに赴く。。

会合のオーガナイザーはGray Lordの一人Danaが労をとってくれるのだが、、、

どーなるんだ、フランスのアルファは「ジェボーダンの獣」通称ビーストだぜっ。
一体、Seeing Eyeのモイラやトム(この作家さんの数少ない欠点、、、名前がしょぼい)はいつ出てくるんだっ。(to be continued...)

マーシィの方も一応4番まで入手してしまった。なぜなら5番目「Silver Borne」(2010年4月予定)でサミュエルを幸せにすると Ms.BriggsがDear Authorで書いていたのでねぇ(爆)。

このページの先頭へ
12月22日

公私ともに何やかにやとあって全然本が読めていない。

この間、上の息子がちょっと帰ってきたり、下の息子の所属する吹奏楽部の定期演奏会があったり、急ぎの仕事が入ったり、職場の急な停電があったり、、

本を読む時間が無い時に限って、無性に本を買いたくなる。
一種のフラストレーション解消方法か?

Mary Jo Putney のクリスマス関連作品を過去のものも含めて集めた「Christmas Revels」をポチ。
"Sunshine for Christmas"と"The Black Beast of Belleterre"がお勧めらしい。残念ながらeBookでは販売していなかったので本が届くのはずっと先か。

Connie Willis のクリスマス短編集「Miracle and Other Christmas Stories 」、こちらはeBook。
コニー・ウィリスの作品は大森望さんがばんばん訳しているので、翻訳があるかも、と調べてみたら、この短編集と他の短編集とを混ぜて取捨選択した日本独自の短編集「マーブル・アーチの風 (プラチナ・ファンタジイ) 」として翻訳されているらしい。
ロマンスサイトで奨められていた「Miracle」は「マーブル・アーチの風」に収録されているようだが、2100円でねぇ。。 原書のeBookは700円前後で買えるため、ま、こちらのほうを。

Melissa De La Cruz のBlue Bloodsシリーズ4番「The Van Alen Legacy」が10月に出ていた。3番の最期で明かされた真実とか、無罪を証明できず追われる事になる主人公やら、ジャックやオリバーのいらいら絶望的な愛の行方やら、非常に今後の展開が気になる終わり方だったので、これもどうしようかと。。

このページの先頭へ
12月24日

17日に読み始めたPatricia Briggs「Hunting Ground」をやっと読了。

これまでの中で一番ロマンス色が濃い(といっても具体的シーンはあまり無い)。
人狼間の勢力争いやGray Lordとの確執など全体のストーリーは悪くないが、もっと荒れた展開を想像していたのに意外な陰謀系だった。
大勢のヴァンパイヤや人狼やヒトや妖精が死んだり大怪我を負ったわりに、血なまぐさくなく、悲劇性が薄い。

前作「Cry Wolf」で漂っていたダークな、血や暴力や宿命や理不尽な運命などが今回はなくて、一種「正義は勝つ」系の物語になっていた。

個人的にはもう少し辛めの方が好みだが、今回はアンナとチャールズの関係を確かなものにする巻だとみなすべきか。
保護欲を抑えてアンナの自由を尊重するチャールズが、実によくできた男で・・(羨ましすぎっ>アンナ)
いやいや、アンナも強くなりましたヨ。
見ていて幸せになれるカップルなんですよねぇ。どちらもが強くてしなやかで正直で相手を信じていて。

こうして長短合わせてアルファオメガを4つ読んでみると、短編が密接に長編に繋がっていて、長編だけを読むと面白さ半減なのが分かる。「Seeing Eye」 のモイラとトムが この本では助っ人として活躍するが、モイラの過去を知っていると知っていないとでは、味わいが違ってくる。
それにしても、だんとつ「Cry Wolf」が良すぎましたねぇ〜。。こういうテイストをもっと書いてほしいなぁ。
ちゃっちゃとサムの話を書き上げて、アルファオメガの続きを書いてくださいませ! >Ms.Briggs

読み始めたのは Robin McKinley 「Deerskin」(1993)

あぁ、ロビン・マッキンリィの語り口って独特・・・
気付かぬうちに呪文にかけられて、暗い何かが体に絡みつく。

前に読んだ「Beauty」は「美女と野獣」を下敷きにしたファンタジーに分類される話で、読者を恐がらせる話ではなかったが、それでもなんというか、リズムなのか何なのか、英語を分かっていないのに催眠術にかけられたような気分になった。

この Deerskin がどういう話なのかネットを通じて知っている。
でも、知らなくても同じだ。
1ページ、2ページと読み進むと、もうやばい、、この、光り輝く美しさの王妃と国王の、自分しか愛せない人たちの物語が、どんだけおそろしいか。。

無粋に作者のストラテジーを考察すると、例えば、『Ash(仔犬の名前)との2年間が一番幸せな時だった』と書いてあれば、読者は、あぁヒロインの幸せは2年しか続かないんだ、と思うわけで、素晴らしく幸せなエピソードがあれこれ書いてあっても、もうすぐやってくる不幸をドキドキと待ってしまい、ひたすら落ち着かない気分になる。。

で、ただいま幸せな2年間を読んでいる所、、先に進むのが恐くて恐くて。。(to be continued...)

このページの先頭へ
12月31日

やれやれ、やっと一息。

窓やベランダをきれいにして、換気扇や風呂場を掃除して、煮しめをつくり、加えて朝昼晩の支度(上の息子が帰省してくると途端に量が増える)や洗濯や、、普段仕事している時のほうがずっと楽ですね。

今年のお節は、洋風お惣菜を作っているお店のセットをお願いしたので、自作は煮しめと雑煮とあとはちょっとしたつまみのみ。
レンコンや大根、きゅうりを手製ピクルスに。今回は黒砂糖で甘酢をつくったので野菜が全部真っ黒になりました(爆)。
オーガニックワイン赤白購入、ヴィタメールのチョコクッキーと坂角のおせんべい、蜜入りりんご、アイスクリーム、みかん、あられ、スナック菓子、、、ふっふ、三が日はもう動きませぬゾ。

遅ればせながらガンバが天皇杯決勝に進みましたね!
今年は全然観戦できなかったので、もうねぇ、ご祝儀としか言いようがないのだけれど、来期のシーズンチケットも継続振込みしました。

ちょっと今年を振り返ってみると、今年はロマンス本をeBookで読むことが格段に増えた年でした。買ったのに放置していたシルエットボムシェル7冊を読んで以来、予想以上にさくさく読めるのに気をよくして、新刊も再版もモビポケット形式で買える場合はeBookとして買うようになりました。
手持ちのロマンス本も地道にスキャンし続け、好きで取って置いた原書はほとんどスキャン終了、日本語の方がまだ残っていますが、数えてみると2009年大晦日時点で日本語のHQのpdfがなんと305冊です。
無駄に偉いぞ>自分(爆!)

今年読んだロマンス本の中で印象に残った作家さんは?というと、ジョージエット・ヘイヤーとロビン・マッキンリィ(ロマンスじゃなくてファンタジー?)。
シリーズの続きを買う予定の作家さんは  Joanna Bourne, Patricia Briggs, Kresley Cole, Carla Kelly, Nalini Singh 、新作が出てくれたら嬉しい作家さんはEvelyn Vaughn, Kathleen Korbel, Tess Gerritsen 、翻訳が待ち遠しい作家さんはジョージエット・ヘイヤーって所かな。

マッキンリィ 「Deerskin」は残りあと少しなのですが、慌てて読みたくないんですよねぇ。
あぁ、Ossin、あぁ、Moonwoman、、切ないなぁ。

わたしにはこの話は、虐待を受けた娘や狂った父親の特殊な物語じゃなく、誰にでも起こる、誰もが犯す過ちの物語に感じられて、読んでいて本当に胸が詰まります。
マッキンリィの物語は月の光のように美しいのですが、悪夢の禍々しさが、もう。。。

自分の失った若さや栄光を子供を手段にして取り返そうとしたり、
他人に自分の果たせなかった夢を押し付けたり、余所者だと排除したり、、
どれもが、人をその人自身として見ない事なんですよね。

その人の外見の下にある価値を見ずに、自分の見たいものをそこに見る、、というシーンがこの物語には沢山出てくるんです。
そのたびに、胸がきゅっと痛みます。
(to be continued...)
さて今日は嵐のために紅白歌合戦からジャニーズカウントダウンコンサートまでずっと録画予定。
「嵐」くん、今年は貢ぎましたよ。出たCDやDVDを全部買っちゃいましたからねぇ(赤面)。

このページの先頭へ
 1月 2日

明けましておめでとうございます。(侯爵くん、カメラ嫌いで不貞腐れデス)

さて2010年最初に読み終わった本は、こちら。Robin McKinley「Deerskin」(1993)

あぁ、すごいです。
人間の卑しさと美しさ、邪悪と絶望、無私と献身、色々なものが全部入っていて、読んでいる時は大変苦しいけれど、あらゆるものが体をかけめぐって、深くしみこんで、最期に癒しと励ましを分けてもらえます。

主人公は「七つの王国一美しい王妃と偉大な王」のひとり娘。
七つの王国一美しい王妃は若さと美が失われることに耐えられず、病の床につき、自分の肖像画を描かせた後この世を去る。
国民も国王も王妃の死を嘆き悲しむが、もとより王女のことは気にもかけない。
唯一、隣国の王子が慰めにと贈ってくれたFleethoundの仔犬だけが彼女の友となる。

王女が思春期に入り美しい娘に成長すると「王妃に生き写し」の美しさは国民を喜ばせ、国王を喜ばせる。
17歳の祝賀舞踏会が開かれた夜、王は娘を片時も傍から離そうとせず、舞踏会の翌日に重大発表をする・・

誰ひとり王女を助けようとしない。
心がよじれるほど苦しく、叫ぶ声が枯れるほど残虐で、体に残る血が無くなるほど痛々しい。

愛犬に死の淵より呼び戻された時、あたまは思い出すことを拒否し、心の奥に記憶を封じ込める。
ひたすら夢中で城から逃げて遠くへ遠くへ遠くへ。

雪山の小屋での過酷な生活のなかで機械のように毎日を生き延び、ようやく少し自分を取り戻したとき、みつけたものは・・・

あぁ、なんという物語でしょう。
彼女はどこまで苦しめばよいのでしょう。

月の女神が言う。お前に「時間」という贈り物をあげよう。

ヒロインは鹿革でできた服をまとい、愛犬と共に狩をし、裸足で山野に暮らす。
人々は彼女を「Moonwoman」と呼ぶ。
傷ついた魂と子供を助けるという言い伝えの”Moonwoman”、人間以上の力がある「自分たちとは違う存在」としてしかヒロインを見ようとしない。

彼女は屋根の下で眠ることを嫌い、できるだけ戸外で眠る
彼女はベッドでは寝られない
彼女は自分が誰であるか思い出せないのに、自分が誰かを忘れる事ができない

作者は、最期の最期まで手綱を緩めず、とことん、と・こ・と・ん、ヒロインがどうやったら自分に幸せを許す事ができるかを追求するが、それは全く簡単ではなく、痛ましいし厳しい。

大変不器量な王子Ossin。
目はやや小さすぎ、鼻はややごつすぎ、顎はやや大きすぎ、背は高くなく小太りで手足が大きい。
ややもすると間抜けに見えるこの王子が、どれほど素晴らしく見えるか、
もう信じられないほど自然で、泣けるほど優しくて、あるがままを受け容れる英知に満ちている。

100%ハッピーエンドとは言えない所を含め、半端なく良いです。

このページの先頭へ
 1月 4日

今年のお正月はあっけなかったですねぇ。三が日が土日ってものすごく損した気がしますよねぇ。

欲求不満になると(値段が手ごろな)本を買ってしまうのが常で、前に注文した本が届いていないのに、またもやポチポチとネット購入。
さらにぶらっと入った古本屋さんでロイス・マクマスター・ビジョルド「戦士志願」を見つけて、読み始めました。

やばっ! これ、面白いですね〜!

つい数日前までビジョルドという作家を聞いたこともなかった私ですが、マッキンリィの「Deerskin」の読者レビューつながりで、興味を抱き、彼女のファンタジーをネット注文しました。それから今日ぶらっと入った古本屋さんの棚に彼女の人気SF作品である「戦士志願」があったわけで、何か運命を感じましたヨ(笑)。

極度に骨の弱い、身長150cmにも満たないマイルズが主人公で、彼を表現しようとすると差別用語だらけになります。「せむし」で「びっこ」をひいたりします。骨格がエビのように変形していて、左足が右足よりも4cmも短くて、足の固定具をついていてもぎこちなく不安定に歩きます。

この彼が実に魅力的なんです。
17才で、若い野心と夢は人並み以上、知力も勇気も人並み以上。
心と体の痛みを生まれた時から知っているし泣き言も時にはこっそりと漏らすけれど、頑固なハートを持っている。

摂政の暗殺を企んだ者が毒ガスを仕掛けたとき、母(摂政の妻)の胎内にいた彼です。
兎唇の嬰児を殺すような世界に生きています。

このページの先頭へ
 1月 5日

うは! ビジョルド、ナイスです。
こんなに面白い本は久々と言ってもいいほど感心しました。上手いわ〜。
いっとき宮部みゆきに感じたものと似ている気持ちよさ。
女性作家的な「ジェンダー」の視点もはっきり存在するけれど鼻につかないし、辛さや醜さと爽やかさが絶妙のバランス。痛快だけど苦いとこもあって、悲しいけれど爆笑するとこもあって。

「戦士志願」があとちょっとで終わってしまうっ!やだやだ! 慌てて「名誉のかけら」「バラヤー内乱」をポチりました。

このページの先頭へ
 1月 7日

WEB本棚って使えますねー。

読んだ本の感想はこのHPや自分のPCに全部保存しているから、今更すべてをWEB本棚に載せる事はしないけれど、読みかけの本や気になる本をまとめておく場所として利用するのにちょうどいい。

これまではアマゾンの買い物かごにいれてから「今は買わない」にしたり、別の書き捨てブログにメモしておいたり、散漫にやっていたんですが、読まないけれど気になる、面白そうだけど新刊じゃ高い本ってのが誰しもあるじゃないですか。

今回登録したブクログでは、アマゾンのページを見ながら、「あ、これ面白そうだな」とお気に入り(ブックマーク)するだけで(お気に入りに登録されるんじゃなくて)自動的に自分の本棚に追加されるんです。

試しに夜につくってみたのがこれ

右側の「読書状態」が「指定なし」の本は 買ってないけれど気になる本。
右側の「読書状態」が「読みたい」の本は、買ったけれどまだ読んでいない本。

どしゃっ! 買ったのにまだ読んでいない本が27冊もある!

見なきゃよかった・・・・、これはプレッシャーになりますねぇ。。

このページの先頭へ
 1月10日

「名誉のかけら」(Shards of Honor)(1986)
最初は変てこに思えたのに、今では「Vor」がついた名前に何の違和感も感じない(笑)。
Lois McMaster Bujold の宇宙は、ロマンスとSFがミックスされたエンターテイメントの中に「命の尊重」とも言える「芯」があって、スリルやアクション、運命の皮肉の人間ドラマに魅了されて十分楽しんだあとも、何か強い問いかけを残してくれる。

Barrayar は満州に軍を進めた日本ってとこだろうか。
国内インフラは遅れており、軍国主義的拡大が国の発展を支える急務。
野蛮な軍国主義者だと先進諸惑星の人々から怖れられている。
見方を変えて、神経破壊銃やプラズマ・アーク銃を自動小銃に換えて、舞台を宇宙からアフリカの内戦に置き換えても何ら不都合がない。
劣悪の衛生環境や旧弊な政治体制でも高性能兵器でドンパチできるのはいつの時代になっても変わらないのかもしれない。

一方のBatan は合理的な情報管理社会だが、すべての危険因子は遺伝子解析と精神分析で予防・治療できると信じている節があり、永久避妊具を体内に埋める事が義務づけられている星である。
ベータ殖民惑星の天文調査隊艦長コーデリア・ネイスミスは調査中の惑星でバラヤーの軍人貴族アラール・ヴォルコシガンと鉢合わせになり、予想もしない権謀術数の渦に巻き込まれる。

封建主義専制社会も先端科学的管理社会も一長一短であり、みなそれぞれに真実や理由や偏見がある。白黒に分けられない灰色のバランス感覚がビジョルドは冷静で絶妙だ。

ヒロイン33歳、ヒーロー44歳、どちらも部下がこの人にならついてゆくと思える艦長である。
組織のなかで一個人が出来る事なんてたいした事ではないかもしれないけれど、これだけは人として無くしちゃいけないってモノを主人公たちは必死で守ろうとする。それが「誇り」というか「仁義」というか「人の命の価値」というか、性根のすわった覚悟と言うようなものがあって清々しい。

簡単にはまとめられないほど色々な事が起こる。

「命」の扱いも難しい。
助けても脳や身体に重い障害が残る兵士を救うべきなのか。
敵側の兵士にレイプされて出来た胎児たちを救うべきなのか。

物語の未来は混沌としているけれど、最終章、好きです。

内容とは関係なく、あぁ、翻訳って難しい。。
惑星コマールの虐殺事件の首謀者だと喧伝され、「コマールの殺し屋」というあだ名がついているアラールは、原文では「the Butcher of Komarr」という。
日本語だと「殺し屋」は虐殺系じゃないスマートな響きがあって、ブッチャーのイメージじゃない。真相を知らない他の惑星人が汚らわしいように呼ぶのだから「コマールの屠殺屋」とでもすべきだったんじゃないかな。 他にも英文だとさっぱりした感じなのに日本語だとまわりくどく感じる点も多かったが、翻訳してもらえるだけで感謝すべきなんだろう。

さて、いつも愚かな失政の尻拭い役を引き受け、いいわけをしないアラール大佐。
「きみには最高のものがふさわしい。わたしは君も今ではわかってるとおり最高だとはいえないが。だが少なくとも、自分の持っている最高のものは差し出すことができる」 なんて、惚れ惚れするほどいい男!
マイルズ・ネイスミス・ヴォルコシガンが並外れているのはこんな素敵な両親だからなのね。。

ファンが作った惑星Barrayar の仮想地図を眺めたり、ワームホールツアーを楽しんだり、ウィキを全部読んじゃったり、つぎは「バラヤー内乱」を読む予定。

(原書は グーグルでブック検索するとこんなふうに文が出てくる。 ほかにも YouTubeの本版という Scribd に「Shards of Honor」を載せちゃってる人がいる、、、う〜む)

このページの先頭へ
 1月11日

「リトル・ドリット」第一話。

債務所監獄であるマーシャルシー監獄、、うひゃーー! こういう施設だとは想像もしていませんでした。簡単な台所もあるんだ。。

このページの先頭へ
 1月13日

やばっ、ラベンダーブックスから「Reforming Lord Ragsdale」の翻訳が出るんですね。

うっうっう、、嬉しいやら悲しいやら、かなり複雑です。
絶版になっているカーラ・ケリーを翻訳してくださるなんて、本当にありがたい事だけれど、この原書、読まずに取ってある最後の1冊なんですよねぇ。
カーラの本はほとんど読んでしまい、もう勿体なくて勿体なくて、この一冊は手をつけずに、ぎりぎりまで取っておこうと保管してたんですよねぇ。
切断用と読書用、2冊も買って、切断とスキャンだけはやったんだけど。
(っていうか、カーラの本はほとんど2冊ずつ買ってしまったわけですが 爆)

翻訳が出る前に読んでおこうかな。あぁぁ。
死ぬ前に読みたい本って感じだったんだけどなぁ(おーげさ)。

このページの先頭へ
 1月14日

ロイス・マクマスター・ビジョルド 「バラヤー内乱」 (1991)
あぁ、揺さぶられます、、う、上手すぎる。。
重くて切なくて腹立たしくて苦しくて、痛快で逞しくて温かくて強くて。

ハードSFが好きな人は物足りなく思うかもしれませが、冒険活劇ヒューマンドラマ+ジェンダーSFが好きな人には、これは超おすすめ。
(っていうか、男性読者より圧倒的に女性読者のツボをつくと思う)

コーデリア、、マイベスト1ヒロインかも。
コーデリアとアラールはクレアとジェイミーに匹敵するカップルで、、
とにかく好きすぎるわ、このふたり。

ふたりだけの時に、アラールはコーデリアの事を「大佐どの」って呼ぶんだけど、原文のおかしみが日本語では伝わりにくいよね。
もともと「名誉のかけら」で 捕虜のコーデリアを、ディア・コーデリアとファーストネームで呼びそうになったアラールが、ディア・コ、コ、、コマンダー、って慌てて言い繕って、それ以来の愛称なんですよねぇ。その戦争中に Commander(中佐)から Captain (大佐)に昇格して、ディア・キャプテンと。

さてさて、マイルズを読むべし!と「ヴォルゲーム」と「無限の境界」をポチ。。

このページの先頭へ
 1月17日

読んだ本。
マーク・ハッドン「夜中に犬に起こった奇妙な事件」

ノット・マイブックでした。世界中で賞賛の嵐の本ですが、読み終わった時とても残酷なギャグを読んだみたいに苦くて空しい気がしました。どうやっても分かりえない人の物語を読んで、どうせぇと言うの?
自閉症の事がよくわかるようになりました、とか、主人公の冒険に感動しました、とか、それはさすがに空々しいですが、「あわれで滑稽で、それでもいとしい」という角田さんの帯も、どうなんでしょう? この本読んで「いとしさ」が伝わるのかなぁ。そういう「いとしさ」を主人公が拒否してるのに。

アスペルガー症候群という生まれながらの障害を持っている主人公クリストファーにとって、世界は彼の論理の理解できる姿でしか存在しない。とりわけ「感情」が理解できない彼は、自分がそれを「好き」か「嫌い」か、人の言ったことが「真実」か「偽り」か、でしか物事を見ない。その「真実」にしても、人の気持ちを論理で説明できるわけじゃないので、「犬を殺したのには深い苦悩と非理性的な激情が背景にある」という動機Whyの真実はクリストファーにとっての真実ではなく、「誰だれが犬を殺した」という事実Whoの真実しか「真実」にならない。

クリストファーを深く愛し、彼の事を思いやって必死で守ってきた(たとえ間違った方法だとしても)父親が犯してしまった過ちと嘘を、彼は最期まで許さない。
この父親は、読んでいて涙がでてしまうほど献身的で、肩にかかる重みで我慢の限界だろっという状況でもクリストファーを愛し続けているのに、クリストファーは父親が近寄ってきただけで悲鳴をあげ、口をきかず、最期まで一切の寛容が無い。

一方の母親は、厄介な子供との関係に疲れ果て、子供が原因の夫婦げんかに疲れ果て、男と逃げてしまったにも関わらず、クリストファーにとっては「嘘をつかなかった人」である。

さらにいえば、献身的だろうとそうでなかろうと、クリストファーにとってはどうでもいいようで、世話してくれる誰か知ってる人がいればいいのだ。将来学者になってお金を稼ぐことができたら世話してくれる人を雇えるし、世話してくれる女が現れるかもしれない、と考えているくらいだから。

この本を読むには、読む側も「感情」を切り離さないと読んでて辛すぎる。
異質な論理で世の中を切り取ることで、読者に知的スリルを提供する、このSF的アイディアを純粋に楽しむつもりで読むべきだった。
ちょっと父親に肩入れしすぎてしまいました。
(わたしは、この家族の再生を全く信じていません)

このページの先頭へ
 1月18日

「お母さんが好きそうだから」と下の息子は気をまわして録画予約をしてくれるので、知らない間にハードディスクには録画番組がたまっている。

「コレ、何?」と訊くと、「アンダルシア地方への旅みたいだったから」との答え。お正月に放送した「暮らしてみる旅」という番組をわたしのために録画したと言う。

「えー!?今井翼って書いてあるよ。うげ、ジャニーズ、旅番組にまで進出かぁ〜(すみません、これが正直、最初の反応でした)」
ま、見てみようじゃないか、と今井翼くんと小豆島でオリーブ漬けを作っておられる香さん(私と同年齢ぐらい?)のスペイン旅行を見始めた。
すると、、
翼さん、なんという清々しい好青年(白い白馬でござんすね)。
ジャニーズという色めがねで見てしまって申し訳ない!!
気負わない自然さと礼儀正しさが気持ちよく、旅慣れた様子も頼もしい。

どしゃ、スペイン語を始めてまだ1年ぐらいだと言うのに、自然に会話してるわ。
本当にスペインが好きなんだね。

オリーブ畑を守り、オリーブ畑と共に暮らす人々、、グラナダでもマラガでも、おかずのお皿に山盛りのオリーブが出たことを思い出した。

画面から伝わる翼くんは、おおらかでまぶしい。
この番組を見た人は皆、翼くん株がずずずーーんと上がったんじゃないだろうか。

このページの先頭へ
 1月22日

航空便って速達扱いでしたっけ?朝の8時過ぎにピンポーンって、一体誰よ(汗)、、慌てて玄関に出ると、郵便配達員さんが、アマゾンのマーケットプレイスで注文した洋書古本を届けてくれたのでした。
急いで読むわけでもないのに、こんな早い時間に配達してくださって申し訳ない。。

ビジョルド「ヴォル・ゲーム」、途中休憩中。
やっかい問題だらけでフラストレーションが溜まり、もっとあっさり単純な話が読みたくなってしまった。
メッツォフ将軍(General Metzov) がぁ、、イライライライラ、、

ブリッグズ「ドラゴンと愚者」(2002)
あっさりしすぎて物足りなかった。(ワガママな読者だ>自分)

サブキャラはみな興味深い設定で登場するが、書き逃げ状態。「なぜそうなったの? このあとどうなったの?」何も分からないまま終わってしまう。

主人公の成長物語としてはとても面白いのだが、小説としては未熟な感じ。

特に不満に感じたのは、出てくる女性キャラがどれもこれもワケがわからず、つまらない事。

呪われたヒューログの地で暮らすと誰もがおかしくなる、と言われる国で、主人公の父は城主である。この父は狂気に冒され、妻や子供たち(主人公を含む)を虐待する。主人公の母は心の病に冒される。妹は口がきけなくなる。弟は国外に逃げてしまう。。 で、主人公の叔母(母の妹)がいるのだが、いっときこの父親と愛人関係になった事もあるというが、ぴんしゃんしていて、軍隊の武道指南役を引き受けている。
主人公も勝てないくらい剣の達人でいつも学校の先生のような事を言う。

は? 理解不能だ!

異常に暴力的な義兄と心を病んだ姉がおり、甥や姪が悲惨な状態にいる崩壊家族のなかでしれっと第三者の顔をしている。

ほかにも、サディスティックな性向の女魔術師、この人もひたすら自分勝手でよく分からない。
唐突にでてくる神殿の聖獣(人間の姿をとるときは女性になる)も、「ではごきげんよう、坊や」
って感じで、思わせぶりで終わってしまう。やれやれ。

さて、解説(三村美衣)を読んだら、ブリッグズの一番好きな小説のキャラクターはマイルズ・ネイスミス・ボルコシガンなんだそうだ。
あらま、わたし、偶然にも今それを読んでるんです(笑)。

並行して読んでいたのは「騎馬民族は来なかった」佐原真(NHK出版)

騎馬民族が来たのかどうか、はどうでもよかったが、西洋・西アジアの文化を畜産という観点で捉えた点がとても面白かった。
映画や本などでキリスト教や西洋人について色々思っていた事を説明してもらった気分。米・ご飯の代わりは小麦・パンじゃなくて肉なんだなぁ。

こういう本を読むと思う事なんだが、文化・風習の比較研究だけで民族の移動を明らかにするのは無理ではないだろうか。
極端な話、明治維新で急激に西洋化した日本だが、だからといって占領されたり植民地化されたわけじゃない。 考古学的資料は文化の影響は測れても、現実の移動を証明するのには十分ではない。

現在、ミトコンドリアDNAやY染色体の多型比較により、母性と父性の系統分布が調査できる。
ミトコンドリアDNAは卵子の方しか残らないので、母の娘の娘の、、、娘に受け継がれる。
Y染色体は男性にしかないので、父の息子の息子の、、、息子に受け継がれる。

ブライアン・サイクスの「アダムの呪い」に書かれていた事だが、スペインが一番最初に入植した南米の地アンティオクイアでDNA調査をしたところ、住民のミトコンドリアDNAは先住民型が主なのだが、Y染色体は男性の94%がヨーロッパ型だったそうで、征服者がどんだけ子供を作ったんだー!ってな事は置いておいても、ミトコンドリアDNAの型は被征服者を表わし、Y染色体の型は征服者を表わすとおおざっぱに言える。

で、日本人なんだが、これが実に不思議で、ミトコンドリアDNAの型は中国や韓国とほぼ同じなのに、Y染色体の型は、超めずらしい型なのだ。
D型といってチベットと日本にしか見られない古いタイプの型があり、アイヌや沖縄ではDが主流。本州でも4〜5割の男性がD型なんである。

図はこちらをみると見やすいかも 異父兄弟である日本人と韓国人(蔵琢也さんのHP)

母性系統と父性系統が大きく違う時に使われる説明は「父性系統が征服者だから」なのだが、日本の場合、アイヌ・沖縄系が征服者という事になる。
おやおや、朝鮮半島から騎馬民族が征服に来たのか、とか言ってる場合じゃない。

縄文人はアイヌに近いと考えられているんだそうで、そうだとすると、本州に元々住んでいた縄文人が移民してきた渡来人をバンバン手なずけたというイメージだろうか?
大陸から大量に移民してきたが、男性の多くは地元の男にやられてしまった、という意外な古代史なのかもしれない。

このページの先頭へ
 1月23日

面倒見のよい下の息子が「anan」を買って帰ってきました。

うっひゃー。なんて気が利く息子なんだ!(よく買えたなぁ・・・)

このページの先頭へ
 1月25日

ビジョルド「無限の境界」
ヴォル・ゲームを中断して、中短編集に手をつけた。

あぁ、感心するほど上手い。
SFか?と問われると微妙だが、ジャンルが小説の良し悪しを決めるわけでもなし。

「喪の山」では、普遍ともいえる命題がほろ苦い事件のなかで問われる。
ビジョルドが好かれる理由は、ただ上手いってだけじゃなく、暗くなりがちなテーマにも瑞々しい希望を抱かせることができる所じゃないかな。

久しぶりに映画館へ。
「アバター」を見てきた。

いやいやいやいや、、、す、すごいわ!! 

もう、何が本物で何が作り物で、何が生きていて、何が生きていないのか、全くわからんほど、どっぷり浸った。 すごすぎ。。

映像もストーリーも主人公を演じたサム・ワーシントンも、とっても満足した、と言いたいところだが、一つだけ、とても不満だった事が、、

それは3Dめがね。 これはいただけないわ・・・

基本は右目と左目が青と赤の、セロハンめがねと同じだもの、全然ハイテクでも何でも無い。
しかもごついゴーグルのようなめがねをかけ続けていると(3時間近いんですよ)、鼻梁が痛くなるし、頭も痛くなってくる。
さらに、めがねをかけると偏光フィルターを通して見るからか画面が暗くなり、細部が見えにくくなる。

だからと言って、めがねをはずすと、画面は3D処理されているため、輪郭が二重になり、見ていて幸せじゃない。

調べてみると、3Dめがねにも方式が色々あって、TOHO系は最悪らしい。っていうか、最悪だった。(IMAX3D>>>>RealD>Dolby3D>>XpanD )
TOHOは XpanD なわけ。orz

アバターを見るには、3D方式の種類を調べて映画館を選ぶ事が重要だ。

このページの先頭へ
 1月31日

本ばかり読んでいました。

ロビン・マッキンリィ「サンシャイン&ヴァンパイア」(2008)

非常にマッキンリィらしいのに、中途半端で曖昧な終わりかた。
彼女のベスト作品ではないです(よね?)。

自分の力量を超えるものに立ち向かわなければならない少女(女性)がいて、立ち向かう過程で知りたくないものを知ったり汚れてしまったりする。世界が単純ではなくなる。

土くれのような色と錆びた鉄の匂いのするヴァンパイア種族、他の生き物とは全く異なる次元に生きて(?死んで)いて、「悪」としか言えないものなんだけど、「悪」はすべて滅ぼさなくてはいけないのか? 「正義」って何なのか?

考え出したら簡単には答えが見つからないことを、ひたすら考えて考えて考えて、体制側も反体制(ヴァンパイアやかつての魔法使い)側ももやもやしていて、過去の真相や正体が分からないまま、終わってしまったー!

苦痛の女神?! お父さん?! メル?! ワケのわからない人たちにワケありな事をさせて読者を煙に巻いて、終わってしまったー!

まじで途方にくれてしまいました。
小さくていいから、どこかに調和を求めていた自分がいたのですが、その小さな調和すら見つけられなかった感じなんです。
確かに現実は白黒で分けられないし、答えなんて視点に寄るんでしょう。でも、桃太郎が鬼が島に行って、そのまま帰ってきませんでした、、みたいなのはねぇ。
鬼を悪者と決め付けていいのか、桃太郎は宝物を持ち帰る権利があるのか、力で力を制したら自分も鬼と同じではないか、とか、そういう現代版「桃太郎」もアリなんでしょうけど・・・

マッキンリィらしい異世界や独特の痛々しさは嫌いじゃないんだけれど、ヒロインの一人称が少し饒舌すぎて、、チックリット系はわたし苦手なんですよねぇ。うーん、並の作家さんに比べたらそもそものレベルが上なんだけれど、マッキンリィはもっと書ける人だと思うから、採点が厳しくなってしまいます。

さてさて、マッキンリィですが、この人の隠れテーマは「母親」じゃないですか?
どの本も「母親」が意図的に切り捨てられているんですよね。(Beauty、Deerskin、青い剣、英雄と王冠)
父親のほうは、普通に居るだけの場合もあれば、ひどい悪行をする場合もあるんだけど、どちらにしても真の意味で重要じゃない、というか、上手く説明できないけれど、「母親」こそが根本の問題って感じがするんですよね。

主人公の少女が成長過程で母親と上手く関係を結べなかった、それが血だらけになって大人に成長する事と必ずセットになっている。
母親は主人公を温かく包む存在じゃないし、記憶のなかでも希薄。。何がマッキンリィをそうさせているんでしょうね。

他にヴィンジの「琥珀のひとみ」やアンソロジー「スペースマン」を読みましたが、また今度。

このページの先頭へ
更新の記録履歴へいく

ホームに戻る