ロビン・マッキンリィ Robin McKinley 2010年1月初まとめ
一貫して、「少女が大人になること」をモチーフにファンタジーを書いているが、
「痛み」と「血」にとりつかれているように感じる作家さんだ。

無垢で純粋な「命のほとばしり」のような「血」から、業火のように流れる黒い「血」まで、
叫びのように口から、てのひらから、産道から、全身から、
ヒロインは誓いの「血」を流し、暴力の「血」を流し、死産の「血」を流し、穢れと再生の「血」を流したりする。

作風は独特の詩情があり、透明で純粋だが同時に不安定で不安にかられる時がある。
Watts の「希望」の絵を思い出したりする。

彼女の描くヒロインは、いつも運命の重みを担わされる。
予備知識もないまま、非常に重い運命を担わされ、どこに導かれるのかわからぬままに必死に戦い続け、望む以上のことを学ぶ。

作品の多くがロマンスの色濃いファンタジーなのだが、本当の意味でロマンスといえるかどうか分からない。
例えるならば、友情ある結婚をして夫を大事にするうちに愛は育つでしょうと言われているみたいな、
ホルモンが一度も荒れ狂わないまま親友と結婚するみたいな、
やさしい友情はあるけれど、身を震わせる恋はなく、友情と恋を同一人物にまとめる事がこの作者はできないような気がする。
(ふたりの男性を登場させるのもそのせいではないだろうか)
とはいえ、マッキンリイの描く友情は掛け値なしの超一級品で、一片の曇りも無い心と叡智に満ちている。
TorやOssin王子やメルのような人間はいるはずがないからこそ、癒されるのかもしれない。
カテゴリー 題名 過去 出版 ジャンル ヒロイン、ヒーローの名前 感想 一言
Harper Collins Beauty 母はヒロインが2歳になる前に四女の産後に死亡 Nov-78 美女と野獣 忠実な馬 Beauty(Honour) ディズニーのアニメよりもこちらの方が古い。生き生きとしたヒロイン、不思議な魔法の語り口。 うふ
ハヤカワ 青い剣 ヒロインは6年前に母死亡、1年前に父死亡。 Oct-82 ファンタジー 滅びゆく王国 いにしえのケラー アンジェラード・クルー(ハリー) ダマール王国コールラス 鉱山が発見され本国人の征服が拡大する。北方族が迫っている。 希望という運命を背負わされた少女。もの哀しい調べがあるのに妙に明るいハッピーエンドになり、若干とまどう。指輪物語を彷彿させる。 うふ
ハヤカワ 王冠と英雄 母は異国の出、ヒロイン出産時に死亡 1984 苦難と成熟 消えた王冠の行方 イーリン姫、 第一ソラ、トー(11歳年上) 尽くす甲斐のないものに尽くしているようなイーリンの忠誠が痛々しいが、 愛が彼女を守っているんですよねぇ。 すべてを受け容れて愛するトー、ありえないほどの叡智に心が癒されるわ。 うる
Ace Deerskin 母はLissarが14歳のとき死亡。 Jun-93 癒しと再生 人間の本当の価値 忠実な犬 Lissar  胸をえぐる、厳しく感情を追求する物語。 暴力、渇望、血、強姦、飢え、凄惨ともいえる過去に加え、世間も自分自身もどちらも愛せない苦しさ。 語り口が呪文のようでとりこになる。 魂が震える
扶桑社ミステリー サンシャイン&ヴァンパイア 両親は6歳のとき離婚。母の元で育つ Sep-03 戦いと成長 自分を受け容れる レイ・セドン(レイヴン・ブレイズ、 通称サンシャイン 25) チックリットが苦手なので一人称ぐだぐだが煩い。 体の関係をもっていても全く縛らない友人メルと、異物なのに(死体なのに?)頼りになるコンスタンチン、ワケのわからない魔物対策部隊、、世の中は見た目と同じものは一つもない。  


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