THE SECRET OF WOLF
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レベッカ・フランダースの人狼3部作
この話の面白いのは、
werewolf 社会に上手にオオカミの習性・特性をもたせているからだ。
ただの狼男の話ではない。
人間社会とは違う規範で生きているwerewolf社会とwerewolfの感覚が
3冊を全部よむと、じゅうぶんに伝わってくる。
読むならぜひとも3冊続けて読んでほしい本である。


werewolfたちは現代社会のなかでしっかりと生活している。
彼らは全員が巨大なコングロマリット、セントクレア・コーポレーションで働いている。
もちろん人間の従業員もいるが、幹部たちは全員werewolfである。
この企業のトップであり、彼ら全員の長、pacの長がセバスチャン・セントクレアである。
セントクレア家はwerewolf社会で400年続いてpacの長を出している。

さてさて、このなかでオオカミの習性・特性とはなんぞや?

そう、オオカミというと荒々しさが強調されがちだが、 かれらは群れで行動する、とても集団性の強い動物なのだ。 オオカミはひとり歩きをしないとさえ言われている。 群れには必ずリーダー(アルファオス)がいて、 つよいリーダーシップの下に、集団としての順位がある。 たとえば食事をするのも通常は上位からである。 また、繁殖も上位の雌雄しかしない。 オオカミは常に集団の利益のために行動し、集団で狩りをして 集団で子育てをし、集団を守るようにできている。 かれらは知能が高く、好奇心も強い。そしてすばやく学習する。 オオカミの生態についてはこちらのページがとてもわかりやすくまとめている。 【resident of forest】
そう、werewolfたちにとってpac(群れ)は、ひとつの巨大ファミリーで、 pacのために忠誠をつくすのだ。 そしてオオカミは鋭い嗅覚と聴覚をもつが、werewolfもまた 人間の何百倍も嗅覚と聴覚にすぐれていて、 さきほどまで誰がこの部屋にいたか、なんてことは残り香ですぐにわかるし、 ビルの地階から8階の会話が聞けるものすらいる。 さて、人間社会のなかで、高い知能と感覚、強烈なリーダーシップと忠誠心で 着実に勢力をのばし、現代企業の一角に根をおろしているコングロマリット、 それがセントクレア・コーポレーションであるが、 セバスチャンの息子のマイケル・セントクレアが次代のリーダーだろうと 誰もが期待していた。セバスチャンもそう望んでいた。 マイケルはカリスマ性をそなえた文武両道、見目麗しい優れた男だった。 (どうでもいいことだが、werewolfでは長子相続ではなく、末子相続である) マイケルは実は、werewolfの社会の中で生きる事につねづね疑問を抱いており リーダーとなることを拒否したいと悩んでいた。 彼は自分のしたいことがここにはない、という思いに常に駆られていて、 この重責からふと逃れようとしたのだが、追ってきたものとの争いになり、 逃げてハイウエーで自動車とぶつかり、、記憶喪失になってしまう。 pacから離れたいと願うマイケルは、上にのべたオオカミの習性を考えれば わかることだが、大変異常なことである。 彼が姿を消したということをセバスチャンが病気であるかのように重く捉える様子も、 人間的に考えると、おーげさな、、と思うかもしれないが、おおごとなのだ。 当夜の雨のせいで匂いを追跡しがたく、少しの手違いで、マイケルは 自動車を運転していたアギーのもとに身を寄せることになるが、 セバスチャンはノエルらにマイケルを連れ戻すことを厳命する。 ノエルはマイケルの従兄弟であり、企業のなかでもナンバー2の位置にいる。 彼はwerewolfであることを誇りに思っていて、人間を一段低い存在にみる、という 傲慢な奴だが、基本はとてもフェアな、すぐれた男である。 ほぼ同じ年のせいで、幼いときからマイケルのライバルとされていたが ノエル自身はマイケルを尊敬し愛し、一度もマイケルに勝ったことがないのを それほど妬みに思っているわけではなかった。 ただ、人間社会に理解を示すマイケルのことが理解できなかった。 物語はこの時点でしっかりと3冊目までの伏線がひいてある。 マイケルの身元を調べようとするアギー(シアトルの新聞社に勤めているコラム担当)は ニューオリンズで起こっているwerewolfキラーとよばれる男のニュースなども読んでいる。 病院のベッドで彼は、地下のモルグの匂いや、数部屋はなれたクローゼットの中の 上着についた香水の香りに気づく。「あれは、、オネスティだ」 自分が香水の名前を思い出したことに、すこし嬉しくなる。 そして、廊下の向こうからやってくる彼女の髪の匂い。。 「君は洋ナシのグラッセのような香りがする」 え?たしかに洋ナシの花の香りのリンスをつかっているけれど、昨晩は事故騒動で それどころじゃなかったし、だから髪を洗ったのはおとといなのよ。。。 新聞の人気コラムニストのヒロインは、彼が記憶を取り戻す過程を、 都会に生きるシングルの人生とアイデンティティに絡めて記事にしたいと申し出る。 上にたつ者のオーラを感じさせる彼。知性と教養と富と権力を感じさせる彼。 それほど重要な地位にいるのなら、行方不明になって心配する者がいないはずがない、 それなのに警察には捜索願いがでていない。 一体かれは何者なの・・ 血液検査のトラブル、医者がスタッフに怒る、 「一体全体、何をやってるんだ。サンプルがおかしいじゃないか! こんなもの人間の血じゃないぞっ!」 でも翌日ヒロインがもう一度医者に訊くと、 「あぁ、今日、サンプル取り直したが、別に異常はないよ。 ったく、うちのスタッフときたら」 瞳の形が縦に細長くなったり、彼女に惹かれてはっと気づくと 手が獣の肢になりかけていたり、、、 彼らwerewolfは満月とは関係なく変身する、普段はヒューマンフォームで生活し、 変身をコントロールしている。 だが、記憶を失ったヒーローは、自分が何者か、わからない。。。 荒ぶった強い感情が起こると自分の内側の何かが目覚める気がして・・ 俺は何から逃れようとしていたんだろうか? 自分のうちにある「受け入れがたい自分」とは? マイケルと、そしてアギーにとって、それぞれの人生で何を求めているかが 語られ、2面性を持つ自分自身を理解していくことになる。 ノエルらはマイケルの場所をつきとめ、アラスカにいるセバスチャンの下に 連れていこうと考えるが、記憶喪失のマイケルは拒絶する。 だが、ノエルに会ったことで次第に記憶が戻り始める。 ノエルと同行したwerewolfが拳銃でマイケルを殺そうとするが、 そのwerewolfをかみ殺す狼の姿のノエル。 「奴は、我々のおきてを破ったのだ。  人間の姿では闘わないこと、敵を殺さないこと、という決まりを破り、  人間の姿のままで、しかも銃で、おまえを殺そうとしたのだ」 アギーは、人の姿に戻り平然としているノエルを野獣のごとく嫌悪するが、 「ほう、人間社会には殺人なんてものはないのだね。 安心したまえ、マイケル。2回もChangeするエネルギーは残っていないよ」 オオカミは生きるための狩りはするが、むやみに殺戮をしない。だが pacの掟は絶対なのである。 ( 人間社会よりずっと犯罪が少ないと言われても、目の前で喉を食いちぎられた男を みてしまうと、感情が先にたつ。アギーはノエルをしょっぱなから好きになれない。) ノエルの言葉を聞き、Changeを見て、自分の本当の姿を思い出すマイケル。 何から逃れたかったかを思い出すマイケル。 アギーと一緒にいるわけにはいかないと、狼の姿に変身し去ろうとするが・・・ これまでwerewolfとhumanではmatingはできないと思われていた。 werewolfは自分の意志でChangeできるが、強い感情によってもChangeが起こる。 そういうわけでmatingは human form ではできず wolf form でのみ行われる。 ・・はずだったが、マイケルとアギーの間に存在する強い愛情が ふたりのmatingを可能にした・・
オオカミは大変夫婦愛のつよい動物として知られている。 (シートン動物記で「おおかみ王ロボ」の話を読んだことがある人なら、すぐに 思い浮かぶ、ロボが妻のブランカを救うために罠に陥る、あれね。) 夫婦になると、つまり、いったんmatingすると、オスはメスのそばから離れず、 つねに守ろうとする。 オオカミは生涯、一夫一妻を守るんである。 野生の動物でオオカミのように長期にわたる一夫一妻はきわめて珍しいという。
ノエルにとって、「人間の女に愛情を抱く」なんざ、想像もできないこと。 ましてやmatingなんて。 だから、ノエルはマイケルの友人のアギーを誘拐してアラスカに連れて行けば マイケルはきっと追ってくる、、くらいにしか考えていなかった。 だが、薬を嗅がせて連れ去ってみたあとで、アギーの匂いに気付く。 「まさか! woman!おまえはマイケルとmatingしたのか!」 (ノエルは人間の名前を覚えようとはしない 笑) アラスカに連れてこられたアギーは、セントクレア城が異様な興奮に 包まれていることに気付く。 服をぬぎだすノエルに、「なにをするのよ!きゃー!」 「勘弁してくれ、おまえは気でも狂ったか? まさかレイプするとでも? 申し訳ないが、我々は人間の女にはまったく魅力を感じないのだ。 そもそも、われわれwerewolf社会には性犯罪はひとつも無いんだぞ」 じゃあ、なにをするの?なんなの?いったい、 友人を誘拐したのなら、マイケルとは戦えばすむことだった。 だが、彼のmateを誘拐したとなると、ぼくとマイケルはどちらかを殺さなければならない。 マイケルの心配をする必要はないよ。これまでぼくは一度もマイケルに 勝った事がないのだからね。 やめて、そんなばかげたこと!なぜ、なぜなの。 まるでコロセウムのような場所でこれから行われようとしているのは、、、 マイケルとノエルの戦い。 次期リーダーの座を争う戦いという形になってしまった。 女よ、これ以上ぼくに恥をかかせないでくれ。 騒ぎたてるアギーを黙らせ、しなやかなシルバーの毛皮の狼となり 頭(こうべ)をあげ会場にむかうノエル。 これがわたしたちのやりかたなのよ。 アギーを押さえるマイケルの母、現リーダーの妻、pacではgrand-mereと 呼ばれるクラランス。 あなたがわたしたちの者と一緒になるのなら、黙ってみなければだめよ。 向こうの扉から入ってきたのは、美しく黒びかりした毛皮の大きな狼だった。 ・・・ くくく(^m^) ここでのマイケルとノエルの戦いはとても美しい崇高な感じすらします。 さて、このあともオオカミをつよく意識した作者の冒険は続き、 2冊目では、werewolf社会での幼少期の思い出や順位と忠誠と慣習などが ヒロインの体験によって語られ、 3冊目では、pacから不幸にも離れて生きるはめになったwerewolfについて 語られます。 そうなの、ロマンスと無関係に面白い話なんですよ。 そうそう、マイケルとアギーの間に流れるセクシャルでどきどきものの感情も いいのですが、アギーとノエルのあいだの敵愾心、口喧嘩も悪くないんです。 本音をぶつけているうちに、好きじゃないけど、敬意を払う、みたいな関係に なっていくんです。(やっと3冊目でね 笑) 2冊目に行く 戻る