2005年その3                  ラテンアメリカ映画リストへ


タイムライン Timeline (2003年 アメリカ)

マイケル・クライトン原作の映画だが、かなり原作ファンを怒らせている。
ま、脚本が悪いのか監督が悪いのか、、とんでも映画になってしまった(笑)。

行きたくないのに通訳が必要だと、無理矢理14世紀に連れて行かれたフランソワなど
ついてすぐに殺されちゃうし、、をいをい、そりゃあんまりだ・・と呻きたくなった(爆)。
歴史を変えちゃいかん、といいながら、むちゃくちゃするし(笑)。
なんで博士ひとりを助けるのに、あれほど必死になったのか、も、
最後まで分からなかった(爆)。

でも、ジェラード・バトラーを見るだけの映画だと割り切れば
これは観る価値のある映画だ!(笑)。

むちゃくちゃ格好よい。っていうか、このとんでも映画が彼のおかげで救われてる。
戦う考古学者といっても、インディージョーンズ型のカウボーイ学者とは違って、
彼はまさにウォーリアー。
チームプレイを完全に無視して、ハートを射抜いた美女を助けるために駆けてゆく(笑)。

ほんま、長髪と無精ひげとぞろりとしたコスチュームで幅広の剣を振るうのが
これほど似合う奴はなかなか居ない。
まさにほれぼれする偉丈夫ぶり。
日本でいうなら、時代劇がやたら似合う奴ってかんじだ。
ズラと着物のほうが格好よくみえた松平健とか(をいをい)。
(2005.02.07)
 
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タンゴーガルエルの亡命  Tangos, l'exil de Gardel(1985年アルゼンチン・フランス)

フェルナンド・ソラナス監督作品。音楽はピアソラが担当している。

「ダンゲディア」タンゴと演劇のミックスされたものを作ろうとしている男たちがいる。
タンゲディアは「ガルエルの亡命」というタイトルで、1930代に活躍した
伝説的なタンゴ作曲家、歌手のガルデルを題材にとりながら、それは同時に
アルゼンチンの軍事政権を逃れてフランスに亡命した者たちの物語でもある。

一夜にして人が連れ去られ拷問、虐殺される軍事政権の悲劇的状況を
知識としてでも知っていないと、この深刻さはなかなか理解できないかもしれない。
「誘拐された」という字幕が頻繁にでてくるが、「デサパレシードス 失踪者」なのである。

さて、完成されたタンゲディアを見てもフランス人は「まぁ素晴らしいわ、
あとは完成させるだけね」という。
亡命を主題としたドラマは終りがなく苦悩が続いているのだが
それがフランス人にはわからない。

「亡命とは「不在」ということだ。そして永遠の不在はすなわち「死」なのだ」

ちょっと国を離れているという事とは全然違う。
祖国から切り離される事、祖国を失う事はアイデンティティの喪失にまで通ずる。
彼ら亡命者は死の世界に取り残され、前にも後ろにも進めない。
再び完成させた「タンゲディア」を披露すると、
「結末がわかりづらい」「わたしたちには関係ないことだから」

祖国の現実が、ただの物語になってしまうという悲痛な叫びのドラマである。

ソラナス世界の不可思議な、幻想か現実か?過去か現在か?
混沌とした曼荼羅でもある。
いくつもの話が錯綜する。
登場人物たちそれぞれが、みな愛する者を失って、その傷が癒えないままで
映画は終ってしまう・・・
(2005.02.11) 
 
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王様の映画  La Pelicula del Rey(1986年 アルゼンチン)

19世紀パタゴニアに王国を作ろうとしたフランス人の男の話を
映画にしようとしている監督ダヴィがいる。

(パタゴニア王国は実話で、1860年にフランス人Orellie Antoine de Tounens が
Kingdom of Araucania and Patagonia と王国の王を名乗ったそうだ。
映画とは関係ないが、どうもパタゴニア王国を夢見た男の話というのは、
世界の冒険・旅行ものでは有名なロマンのようだ)

で、監督ダヴィとマネージャー、アルチュロの七転八倒の物語だ。

出資者がとんずら?俳優協会は出演料が払ってもらえないからと離脱。
素人を集めて、パタゴニアへ強行ロケ。

愚かなほどのロマンに身をゆだね、狂気の淵をさまよっているのは
パタゴニア王国を夢見た男なのか、それとも監督なのか。。

映像のこだわり、画面を切り取る直線と色の美しさ、モダンな感覚と
未開な状況のアンバランスが可笑しい。

主役の監督も悪くないけれど、わたしはマネージャーのアルチュロ役の
Ulises Dumont が結構気に入ってしまった。
天才肌のダヴィのために資金繰りに四苦八苦して、もう金輪際こんな男と
つきあうもんかっ!と思ったそばから、手助けをしてしまう。
狂気のドンキホーテと良識のサンチョパンサというわけなのだが、
このサンチョがかなり良い奴でね、額の汗を拭き拭き、後始末をしてくれる・・

一つの企画がボツになっても、、どうだ!全然懲りてないぞ!!って
ところが、人の業というべきか、人間の強さというべきか。。

Ulises Dumont は、「 El Mismo amor, la misma lluvia 」でも、
人の善さそうな編集長を演じていたが( って書いてるけど字幕もないので
実は編集長ではないかもしれん )、いい味なんですよねぇ。
(2005.02.11)
 
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カランジル  Carandiru(2003年 ブラジル)

ブラジルのサンパウロにある国内最大だった刑務所で1992年10月2日に
起こった事件を元にしている。

ストーリーはカランジル刑務所に赴任した医師を通して囚人たちの人生、
刑務所の中を描く。
予想と違って、バイオレンス描写はほとんど無く、前半はペーソスさえ感じられたが、
しだいに緊迫が高まり、空気が不穏になってきて、悲劇が起こる。。

巨大な刑務所は4000人ほどの定員に7000人以上収容されていて、
擬似社会、擬似家庭を作っている。外では悪人、犯罪者な男たちも
中では奇妙な責任感で生き生きしている。
もちろん、胸の詰まる不運もあるし、逆にどーしよーもない奴もいるが、
塀の内側も外側と変わらぬ人間たちの集まりだというところが
しっかりと描かれている。
だからこそ、のちほど起こる悲劇の悲惨さがより強く伝わってくる。


#へへ、みーはー的には主役のお医者さん、「ビハインド・ザ・サン」の
サーカス兄さんなんだけど、ちょっとどきっとしてしまった(すぐこれだ 爆)。
知的でセクシャルで素敵なんだ。

ロドリゴ・サントロが、粗悪なシリコンを胸にいれた男娼なんだけれど
とても初々しくていいのよ(2000人以上相手にして、初々しいってのも変だが)。

それにしてもネットで調べると、実際2001年の6月には63組の
受刑者カップルの合同結婚式があったそうだ。なんとも不思議な・・。
また、この惨劇のときの機動隊を指揮した大佐は、懲役632年!を
言い渡されたという。意味あんの??

そして、ラストにハッとしたのは、実物のカランジル刑務所の解体シーン。
あれ、この解体シーン、ニュースで見た記憶が・・
まさか、それがカランジルだとは思いもしなかったが。
(2005.02.17)
 
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オペラ座の怪人 Phantom Of The Opera (2004年アメリカ)

このミュージカルが見たいというより、ジェラルド・バトラーを観に行った。
みーはー丸出し。
一応、彼がミュージカルをやったことがない事も承知していたし、
ハートが伝われば良いと本人も言っていたので、わかっていたつもりだったのだが、
ううむむ、、つらい、、わかっていたけれど、、つらい。

ヒロインが「先生」と慕い、彼の音楽に魔力のように引き寄せられる・・・って
をいをい、そいつはとても信じられないぞ〜。
音楽じゃなくて、その「燃える目」に引き寄せられたって言うのなら信じる!!
「お前は俺のものだっ」という問答無用のフェロモンにひっぱられたのなら信じる!!

だが、彼の歌にひきよせられたってのは・・・(笑)

情念たっぷりの演技で魅了するバトラーなんだが、歌の魂を伝えるほどの
音楽の天使って声じゃないのがほんま残念だった。
バトラー、がんばってるなぁ、がんばってるなぁ、という気分で見てしまったわ(爆)。

声の弱さは舞台じゃないんだから気にすべきじゃないのだろう。
たぶん、映画として、そこを補う魅力があるのだから。
だが、この映画ならではってとこが、また、ちょっと弱いんだよねぇ。
なんか、平板な流れで、映画ならではの意外なショットというか、そういうものが
無くて、少々だれる。

たぶん、隣の席の女性が途中でトイレに立ったのも、興をそがれた原因なのかも
しれないけれど・・・(爆)
(2005.02.20)
 
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エバースマイル、ニュージャージー Eversmile, New Jersey(1989年 アルゼンチン・イギリス)

カルロス・ソリン監督。
ダニエル・ディ・ルイス主演の怪作?

なんていったら良いの? 奇天烈全開じゃない?
コメディなのか、シリアスなのか、ラストなんて、もう、これだよ、
虫歯を撲滅するには歯を全部抜いて入れ歯にしたら良いんだ! (爆)。
つまり、この世の悪は人類根絶以外解決方法がない?

 DFDDC (the Dubois Foundation for the Development of Dental Consciousness)
「デュボア歯の健康意識向上財団」とでもいおうか、そこから派遣されて
アルゼンチンの南部パタゴニアをバイクでまわる、トラベリング・デンティスト。 
「虫歯は世界を滅ぼす」と、エバースマイル印の歯ブラシを配ってまわる。

歯の健康に取り付かれている男を演じるルイスのおとろちいこと!

そして人間社会の醜さや不条理を知ったのちも、愛の力で立ち直る。
愚かな挑戦と言われようが、愛を信じる者は強しってことかなぁ?

いや、ほんと、ヘンな映画なんですよ。

#ちょっと嫌なのは、トラベリング・デンティストのハイテク版がね、
日本人ってところ。主人公をうちのめす役どころが、なんだかなぁ〜。。
デリカシーもへったくれもない図々しい東洋人って描き方が悲しいわ。。
 
 
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El hijo de la novia  The son of the bride(2000年アルゼンチン)



英語字幕で見た。
秀逸な脚本、心を掴む演技、とても素晴らしい映画。

これは単に仕事中毒の男が家庭を大事にする男に変わった、
という物語ではない。
アルゼンチン経済破綻の影響を受けて、代々の家業が続けられなく
なっていく悲哀や怒り、堕落した教会にたいする皮肉など、
ホームドラマでありながら社会派ドラマでもある。
しかし、けっして湿っぽくも重くもならずに、笑いたっぷりに描いている。

42才の主人公(リカルド・ダリン)は、親からひきついだイタリアレストランを経営している。
妻とは何年も前に離婚、週に一回だけ8才くらい?の娘と過ごす約束になっている。
ワインが届かない、チーズが無い、銀行は金を貸さない、年がら年中携帯電話に追われ、
娘と過ごす間も電話は鳴り続け、恋人と過ごす間も電話はなり続け、
トラブル続きで神経の休まる時がない。
そんなときレストラン売却を持ちかける大企業がやってくる。

彼の母親(ノルマ・アレアンドロ)はアルツハイマーにかかり療養所で暮らしているが
父親(エクトール・アルテリオ)は毎日彼女に会いにゆく。
彼は44年連れ添った妻を愛して止まない。
母は息子の顔ももはや認識できないのだが、夫のことは笑顔で迎える。

父親は教会で結婚式をあげなかったことが心残りでしかたがなく、
息子に「かあさんと教会で結婚式をあげたいから力になってくれ」と頼む。
故郷のイタリアに旅行しようと貯めていたお金を使って、豪華な結婚式を
あげたいという父親に、
「イタリアに旅行しろよ! 結婚式をあげたって、どうせ顔も覚えていないんだぜ」

彼は心臓発作で倒れ、ICUで自分の人生を考える。
そうだ、レストランを売ってしまおう、売った金でメキシコに行くんだ。
なんにもせずにぶらぶらと過ごすんだ。

いや、お話は決してそんな風にはならない。
父親の結婚をめぐり、恋人との間は微妙にすれ違ってゆくし、
そこに娘や親友が絡んで、家族って何?愛って何?生きるって何?と
山ほどの命題がふりかかってくる。

レストランは彼にとって何だったんだろう。
その答えを主人公と一緒にわたしたちも探すことになる。

いやぁ〜、こんな風に真面目に書いているけれど、
ほんま、ギャグが笑えて笑えて、とぼけた笑いと泣かせるツボが絶妙のバランスなんだ。
親友とのアホな絡みが、ベタにならずいいんだよねぇ〜。
(親友エドゥアルド・ブランコ、サイコーだよ)

ロマンスの入れ方も上手くて、胸きゅんだし、
老夫婦のノルマとエクトールの老いたふたりの愛が、呆れるほど上手い!

泣かせるなぁ・・となったところで、ジエンドか?と思ったら、
謎の男「ディック・ワトソン」がエンドロールにようやく登場。
なんてくだらないんだぁ〜っと大笑い。
(2005.03.07)
 

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