2006年その2


ロングウェイ・ホーム Doing Time on Maple Drive (1992年 アメリカ)

TVドラマである。ジム・キャリー見たさに借りてみた。
話はよくあるストーリーで、出来の悪い長男、長女に失望し、優秀な末息子を溺愛した両親。
亀裂を内包しながらもなんとか保たれていた家族が、末息子の婚約をきっかけに
壊れてゆく。

父親の期待に答えられなかった挫折感で人生をダメにしてる長男(ジム)が
なんともいい味だが、主役ではない。
(2001.01.03)

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クイルズ Quills (2000年 米・独・英)

マルキ・ド・サド侯爵の晩年を描く。
ごめん、面白いのか面白くないのか、ゲテゲテだった。
元は舞台劇だというのだが、ユーモアあふれるタッチで描いた、という映画の謳い文句に
納得できず。芸術に取り憑かれた人々の狂宴が、断頭台に熱狂する民衆の描写とあいまって
やっぱり西洋人って肉食民族だなぁ〜・・・とつくづく思ったのだった。

芸術とは、排泄物と表裏一体なのだ! 美は醜なり、醜は美なり! ということかな。

#かわいらしくて自己主張があり反骨精神の持ち主に、ケイト・ウインスレットほど
はまる人はいないんだが、さすがにコスプレ、多すぎない?
(2001.01.03)

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日陰のふたり Jude (1996年 UK)

トマス・ハーディの「日陰者ジュード Jude the Obscure」が原作。

無知だったものでハーディの原作を知らず、うっかり見てしまった。悲惨な話に落ち込む。
「テス」よりも悲惨じゃないだろうか?

19世紀末、学問の道に進みたいと願いながらも肉欲に負けて村の娘と結婚し、
結局石工の職人となるジュード。美しく進歩的な従姉妹のスーと愛し合い、同棲するが
世間の因習につぶされていく・・・う〜ん、、輝いていたスーがだんだん罪悪感に
押しつぶされていくのを見るのが辛い。

美しい風景、コスプレがぴったりのケイト・ウィンスレット(ピカピカ輝いている)、
陰鬱なジュード(うへぇ〜、不幸顔なのだ、、「28日後」のあの少佐の人だった)
(2001.01.03)

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ウィンブルドン Winbledon (2004年 UK・仏)

ピーター・コルト(ポール・ベタニー)はかつて世界ランキング11位までいった
テニスプレイヤーだがこのウィンブルドンを最後に引退を決意していた。
ホテルの予約間違いで入った部屋では、テニス界の新鋭アメリカ娘のリジー・ブラッドベリ
(カースティン・ダンスト)がシャワーを浴びているところだった。

どはは・・いまどきHQでもそんな恥ずかしい設定、使わないぞっていうお話(笑)。

ま、なんちゃってロマンスを楽しめばいいんではないでしょーか。

#ベタニーの弟役を演じたジェイムズ・マカヴォイが、ひねてるけど憎めない弟を
自然な雰囲気でこなしていた。早く有名になって、日本語表記を統一してほしいな〜
(2006.01.08)

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シャフト Shaft (2000年 ドイツ・アメリカ)

テーマ曲がイケてた「黒いジャガー」(71年のオリジナル)のジョン・シャフトの甥が
今作の主人公で、NY市警刑事のサミュエル・L・ジャクソン。
人種差別主義者の大金持ちのボンボンを演じるクリスチャン・ベールが、はまっている。
ま、お話は可もなく不可もなく・・
ラストなんて、をいをい、これってどうなの?一種のリンチと思わなくもないが。。
(2006.01.12)

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Happy Accident ハッピー・アクシデント (2000年 アメリカ)


「ワンダーランド駅で」のブラッド・アンダーソン脚本・監督。
マリッサ・トメイ演じるルビーと、ヴィンセント・ドノフリオ演じる
サムの奇妙な恋の物語。

B・アンダーソンは、「エターナル・サンシャイン」のカウフマンと並ぶ
脚本の腕前じゃないだろうか。

ルビーは男運の無い女だ。いっつも「負け組」のような男を好きになっては別れを繰り返す。
なんでわたしはいつもダメな男ばかり好きになっちゃうの?!とセラピストにかよう日々。
ある日、公園のベンチで奇妙に和む男サムと知り合う。
ちょっといい感じの人だったけど、今のわたしは誰かと付き合うつもりは無いの。
そう思っていたんだけれど、ルビーの家に、ベンチに置き忘れた本を届けにサムがくる。
届けてくれた本ってのがアナイス・ニンのエロティック短編集「DELTA OF VENUS」ってのも、
ロマンスにお約束な展開(笑)。

そして、強引なのに優しそうで不器用な、ほんまなんていうか奇妙なサムと恋に落ちる。

ロマンスの話では王道だが、恋に落ちる時は細かい説明を必要としないで人を理屈ぬきで
好きになるのに、関係が始まるとしばらくして相手の事をなんでも知りたくなりだす。

サムはだんだん奇妙ぶりが強くなる。見ているわたし達も、こいつ、ほんまは
ヤバイ奴なんじゃないかと不安になってくる。
このあたりのドノフリオの上手いことと言ったら! 歩き方なんてねぇ、すごいぴったりなのよ。

SF的なバックボーンも面白い。べらべらとまくしたてる未来の話。2470年では
人間はフィリピンにある大工場 Gene Dupes 社から生まれる(生産される?)が、自分は
Biological で、アナクロニストの両親が昔式に子供を作ったとか、恐れを感じる遺伝子が
発見されたので宗教は無くなったとか、チーズマン博士の理論とか、怪しすぎる(笑)。
未来から過去に戻る(back-travel)闇商売があって、ちゃんとお金を払って、ここにやってきたといい、運転免許や社会保障番号、両親の写真なども完備してもらったと言う。

もちろん、ルビーは信じない。嘘を言ってる、なにかごまかしている、、、いくらサムが
「愛してる」と言っても信じ切れない自分がいる。
「そんな理屈に合わない事を言って。。わたしは本当の事を言ってるのにフェアじゃないわ」

このお話はSFとか、彼が未来から来たタイムトラベラーかどうか、とか
そういう問題じゃないんだよね。でも、この揺れ動く気持ちがとっても上手いの。
ルビーの両親や親友たちなど、脇の部分もよく出来ていてこれまた奇妙な味がある。

さて、
信じるという感情エネルギーが、新しい未来を作る・・というチーズマン博士の理論は
はたしてどうなるか!

ドノフリオって、呆れるほど不器用に見えるんだけど、これが彼の演出だとしたら
すごく器用ってことか。鋭い知性を感じる時とやばいほど頭がオカシイと感じる時が
あって、なんと言っていいか、ヒロインが彼をぶん殴ったそばから抱きしめるシーンが
あるんだけど、その気持ちがすごくよくわかるよ。
もったいないほど過小評価されてる俳優さんじゃないだろうか。

優しさに満ちたコミカル&サスペンス&ロマンティックファンタジー。
「ワンダーランド駅で」を好きな人なら絶対にこれ気に入るだろう。
(2006.01.14)

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この胸のときめき Return to Me (2000年 アメリカ)

最愛の妻を交通事故で失ったヒーローと、その心臓の移植を受けたヒロインの物語。
ヒロインの親友役の女性を演じているボニー・ハントが脚本・監督をしている。
で、驚いたことに、このボニー・ハントが、読んだばっかりの本「オンリー・ユー」の
映画で重要な役(義姉ケイト)を演じた人だという。
こういう偶然のつながりって不思議だ。

さて、この映画はお約束の展開を、多数の脇役が絡んだ人生泣き笑い系ドラマに
仕立てた感じなんだが、ちょっとめりはりが弱くてクサイとこがある。。

デビッド・ドゥカブニーとミニー・ドライバーは悪くないし、脇役たちも悪くない。
でも、全体を通してみると微妙にリズムがない。
そして、心臓移植に前世とか魂のような意味を持たせすぎた演出が少し気に障った。
妻になついていたゴリラや犬がヒロインにすぐになつくとか、そういうトコが
無かった方がよかったなぁ。
妻を愛した事と君を愛する事は別なんだ、って話じゃなくて、神様のおぼしめしに
導かれた二人、ってことになってしまったのね。。


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ディア・ウェンディ Dear Wendy (2005 デンマーク・仏・ドイツ・UK)

まさしくラース・フォン・トリアーの世界だった。脚本だけで、監督は別の人だったが
それでも、これはトリアーのつむいだ物語だ。

世界に対峙するときの不安を、武器の携帯が打ち消す。ポケットのなかの
拳銃に触れるだけで自信がみなぎる。
社会不適合者という少数派集団の、儀式・虚構による陶酔。

だが陶酔を持続させるためには、現実が虚構にヒビをいれるのを防ぐためには、
ポケットのなかのピストルをリアルにしなければならない。
もはや拳銃はポケットのなかに留まっていられなくなる。

わたしがこの映画で最大の「恐い!」と思ったポイントで、おそらく、おそらくだけど、
脚本のトリアーが一番描きたかったんじゃないか、と思ったポイントは、

主人公ディックとは相容れない現実の象徴であるセバスチャンが、ラストで
ディックの虚構に引きずられるところだ。ふらっと引きずられる、そこがとても恐い。ばかばかしくてやってられない、と
思っていたはずのセバスチャンが、虚構の陶酔に引き寄せられてしまう。

力による正義、抑止力による正義、悪の枢軸と戦う正義、そういう虚構に・・

#ミーハー的感想は、、うぎゃ〜、男の子の声変わりってサ、どーにも衝撃だよねぇ〜。
ビリー・エリオットのジェイミー・ベルがあんな声になっちゃうのねぇ(笑)。
ハーレイ・ジョエル・オスメントの声変わり以上に驚いたっ。
(2006/1/26)

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Bolivia (2001 アルゼンチン)


Adrían Caetano監督 の 「Red Bear」(Un oso rojo)を買おうとして
同監督の作品をついでに調べた際にみつけた映画。
こちらのほうが数段評価が上だったので、一緒にポチしたのだ。

これは75分という短さ、白黒映画という低予算映画であるが、
社会の中下層に生きる人々の重苦しさをゆるぎない目で描いている映画だ。

ストーリーはほとんどが一軒の安レストランで進行する。

アルゼンチン国家経済が最悪の状況で、不法労働者を雇う安レストランと
そこに食事にやってくる人々。
ボリビア人の男は、妻子をボリビアに残しブエノスアイレスの
安レストランでコックとして働く。その店にはパラグアイ人のウエイトレスが
働いている。

生活にあえぐ人々は、レストランの支払いにも事欠き、苛立ちは人種差別と
いった格好のスケープゴートにぶつけられる。。

名も無い俳優たちだと思うが、それぞれのやり場のない怒りや無力感、
だらしなさ、狡さ、寂しさ、無関心、そう、人間が感じられる。
将来への不安や貧困に直面するとより下層の労働者に憎しみの矛先が向くのは
為政者にとって都合よいことだろう。それが不法移民なら誰もが口をぬぐい
黙して語らない。
(2006/1/19)


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