HQ虫食い翻訳についての考察


オークションなどで値が張るレア本を、仕方なく原書で買ったのが
そもそもの始まりで、てっきり最初は同じ本を読んでいるつもりだったが、
どうも、翻訳と違うぞ、と、しばらくたってから気づいた。

たかがHQといえども、虫食い訳をされて作品として向上した、なんてものは無く、
情感が消え、ドラマが単調になり、キャラクターの深みが減る無念さだ。

この無念さをブツブツこぼしてきたけれど、
ここで、ちゃんとデータとして調べてみることにした。

まず、本の種類であるが、わたしがよく買うのは原書のSIM、SSEで、
これらは日本でSIM、SSE、LSシリーズとして出版される。

原書は分量に大きなばらつきがあるが、日本の上記3つシリーズはすべて
220ページ。上下2段組。17行、23文字(1行)である。
本文は5ページ目から始まるので、実効ページは216ページ

他のシリーズ、アメリカン、テンプテーション、デザイアも
ページ数は違えど、1ページの構成は、
上下2段組。17行、23文字(1行あたり)と統一されている。

  翻訳HQ
SIM型(SIM、SSE、LS) 216ページこれを100とすると
アメリカン214ページ99
テンプテーション184ページ85
デザイア170ページ79
一方、原書は本文の部分の総ページ数と、1ページあたりの行数を調べた。 全体行(ページ数×行数)の数字を計算しているが、実際は空行もあるし段落もあるから、 この数字ですべてが説明つくわけではない。 省略度を知る目安、指針と考えたい。 青色の本は未訳のもの。 全体行の大きい順に並べてみた。 一番長いものと短いものの差は、1ページ35行に換算して80ページにもなり、 240ページほどの本なら3分の1の量に匹敵するのだから、 どれほど本によって違うか、わかるだろう。
タイトル 邦題 ページ 全体行
SIM SHADOW'S FLAME 246 40 9840 アリシア・スコット
SIM LOVING EVANGELINE 誘惑の湖 242 40 9680 省略だらけ
SIM WALKING AFTER MIDNIGHT 245 39 9555 アリシア・スコット
SIM Sweet Anger 失意の向こう側 246 38 9348
SIM Bittersweet Rain 哀しみの雨 245 37 9065 ちょこちょこ省略
SIM Dreams of Evening 愛の迷路 246 36 8856
A LOVE BITES 245 36 8820 M・セントジョージ
SIM All That Glitters バラのざわめき 244 36 8784
SIM Come Lie With Me 夜明けのフーガ 246 35 8610 ラスト4ページ無し
SIM TEARS OF THE RENEGADE ダンシング・ラブ 244 35 8540
SIM A Game of Chance 危険な駆け引き 293 29 8497
SIM White Lies カムフラージュ 247 34 8398 省略自然
SIM Tender Loving Care 思い出の夏にしないで 246 34 8364
SIM ALMOST FOREVER 美しい標的 244 34 8296
SIM The Renegade and the Heiress 244 34 8296 ジュディス・ダンカン
SIM Duncan's Bride ダンカンの花嫁 246 33 8118 省略自然
SIM AGAINST the RULES 美しい悲劇 245 33 8085 省略多し
SIM Summer Games 夏の恋はミステリアス 245 33 8085 省略自然
SIM Bedouin Bride 恋ふたたび 244 33 8052
SIM EXPECTANT FATHER 二人の奇跡 244 33 8052
A A WISH AND A KISS 244 33 8052 M・セントジョージ
SIM HEARTBREAKER 瞳に輝く星 242 33 7986
SIM Jesses Girl 白い風の中で 246 31 7626 ビリー・グリーン
SIM A Special Man 春のとまどい 245 31 7595 ビリー・グリーン
SIM Time after Time ドリーム、ドリーム 245 31 7595 ビリー・グリーン
SIM That Boy Ffrom Trash Town 少女のころを過ぎたら 247 30 7410 ビリー・グリーン
SIM The Cutting Edge 裏切りの刃 245 30 7350
SIM Voyage of the Nightc 月あかりに揺れて 245 30 7350 ビリー・グリーン
SIM SARAH'S CHILD 流れ星に祈って 244 29 7076
SIM型は8000行以下だと完訳だと言える。
グレイゾーンは8200行あたりだ。そこで
【完訳指標】というものを考え、8200行をSIM型の完訳指標とした。

上のほうで書いたように、テンプテーションはSIM型の85%の分量、
デザイアは79%の分量なので、
それぞれの完訳指標は
8200×0.85=6970 6970行
デザイアも同様に計算して、 6478行 である。

【考察】
「美しい悲劇」は計算値から見ると、完訳区域なのだが、省略が多い。
つまり、段落が少なくて、空行もあまり無いということか。
それとも翻訳家の工夫の無さで、本当なら完訳できたはずなのに虫食い訳に
なったのだろうか?
訳者は「入江真奈子」さん。他にHQでは以下の本を訳している。
「すれちがい」 リンダ・ラエル・ミラー
「いつか、あなたと」 ジリアン・ブレイク
「デッドライン」 ノーラ・ロバーツ

一方、ダンカンの花嫁、カムフラージュなどは手堅く省略が気に障らず
訳されている。
訳者は「中原 聡美」さん 「平江まゆみ」さん。
お二方とも多くのHQ翻訳がある。
 翻訳数は少ないが「安藤 智子」さんの夏の恋はミステリアスもとても
自然に省略をいれて訳されている。

また、見たらわかるように、作家でかなり異なり、ビリー・グリーンは判で押したように
同じぐらいの長さの短めな本を出すが、リンダやエリンは長いものが多いし、
アリシア・スコットに至っては、翻訳されなかったのが幸せだったかもしれない。


次にテンプテーションを見てみる。先ほどの計算で完訳指標が6970行と
出たので、おそらく「君がいなければ」は省略部が多いだろう。
翻訳はさらっとしか読んでいないので、いつかキチンと読み比べてみようかな
T A Pocketful of Dreams 君がいなければ 213 36 7668
T Haunting Secrets 214 35 7490 G・サンダース
T A Human Touch 217 34 7378 G・サンダース
T Not this Gal! 209 33 6897 G・サンダース
T What Might Have Been 213 32 6816 G・サンダース
T Lover's Secrets 215 30 6450 G・サンダース
最後にデザイアを見てみる。
SIMから類推して計算した完訳指標は6478行である。
なんだ、どれも楽勝じゃないか、と思ったのに、読んでみると
「シルクの言葉」は途中の8ページがばっさりないし、
「なにも言わないで」は気になる省略が多いし、
「恋愛劇場」は最後の山場を9ページばっさり省略しているし、
「眠れない夜」もラストのかなりよい場面を4ページもばっさり省略だ。。

もし完訳指標を6000行にまで引き下げると、逆算してSIM型指標は
6000わる0.79=7594 なんてことになってしまい、
持っているSIMのほとんどは完訳が無理ということになってしまうが・・


「シルクの言葉」は「青山遼子」さん。
HQでの翻訳は多いベテランだ。
「なにも言わないで」の訳者は「清水民恵」さん。
翻訳はHQではこの1冊だけ。ペンネームを変えたのか?ネット検索では
何も見つからない。
「恋愛劇場」の訳者は「山木 恵」さん。
ほかに数冊翻訳がある。
まとめてばっさり省略というのが手っ取り早い方法なんだろうと、思うが、
それにしたって、ラストに近い部分を大量に省略するのはいかがなものだろうか。。
D Eye of the Tiger 眠れない夜 183 34 6222
D Words Of Silk シルクの言葉 178 34 6052 省略多し
D Rawhide and Lace なにも言わないで 183 33 6039 省略多し
D Loveplay 恋愛劇場 180 33 5940 省略多し
D Wild About a Texan 176 33 5808 ジャン・ハドソン
D Diamond Girl ダイアモンド・ガール 179 32 5728
D Her Texan  Tycoon 178 32 5696 ジャン・ハドソン