2007年その1


カサノバ Casanova (2005 アメリカ)

ヒース・レッジャーって不思議だよねぇ。

写真だけだと、え?HUNKって騒がれるほどなのぉ?おでこがどんどん広く
なってるしぃ〜、、とか思うのに、映画のなかでひとたびじっと見つめられると、、

あぅっ、どうしてそんなに素敵なの?

ウイスキーみたいな瞳の色のせいなの?
口元が「待ち」に見えるから? キスを誘っているように見えるのはわたしだけ?!

少年の面影を残す笑み、頼まれると誰も断れない、ちゃっかり屋かもしれないのに、
頼まれた人間の方が、自分を頼ってくれたことを嬉しく思ってしまったりする。

映画は、、ややドタバタめいたコメディ、楽しいおとぎ話のひとときってとこかなぁ。

映像はとても美しく、ラッセ・ハルストレム監督ならでは水気と優しい光。
ドタバタコメディを品良いおとぎ話に仕上げたのは、この映像の美しさなんだろうな。

わたしは無知で知らなかったんだが、カサノバって実在の人物だったのねっ!
んで、調べてみると、「回想録」ってのが並じゃない。
岩波書店から出た「カサノヴァ回想録」は全20冊という大著だった。


(2007.05.08)
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ナチョ・リブレ Nacho Libre (2006 アメリカ)

ま、ジャック・ブラックが主演だから借りたってことで。。

驚いたことに、モデルとなる人物が存在するらしい。

メキシコのセルジオ・グテレス・ベニテス神父は、覆面レスラーとして、過去23年間に
4000を越える試合を闘ったんだそうだ。
もちろん、ファイトマネーで孤児たちを援助する目的で。 事実は小説より奇なり。

ジャック・ブラックは人情長屋噺が似合うオバカヒーローにぴったりだったが、
個人的な好みから言うと、もう少し毒があるほうが好きだったかも。
呆けたオバカで、噛み付き所がなかった。

(2007.04.24)
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歓びを歌にのせて Så som i himmelen (As it is in heaven) (2004 スウェーデン)

誉めてる感想や感動が多いんだが、、実は、わたしにはどうもこの映画が
それほど良いものとは思えなかった。もちろん、悪くはないんだが。。

主人公の、功成り名を遂げた指揮者が心臓の発作を機にタクトを下ろし、
子供時代に住んでいた(あまり良い思い出があるように見えない)田舎の村に移り住む。
彼の存在は一見おだやかに見えた村の人々の暮らしに波紋を投げかける。

あからさまにしたくないもの、見えないフリをしていたいもの、誰もが持つ秘密や
憎しみや怒りや妬み、孤独などなどが、リアルに赤裸々に描かれ、かなり胸をつく。
考えさせられるというより、正直重くて重くて、気が滅入ってしまったが、
そこが減点ポイントなのではない。

この映画、どうにも、脚本というか、編集がまずくない?

あれ?この人、このあとどうなったの?
え?どうしてこの人、また来たの? 

フィルムのつなぎ方が悪いのか、思い切った削除をためらったのか、
中途半端に残した場面がありすぎるって感じで、
見ている人間は、ま、いいか、なんかが途中であったんだろう、、と思って
見るしかない。

うまくいかない人生の救いの無さ、つぎはぎ感のある編集、
人間だれもが固有のピッチを持つ、という最後のシーンはとても美しかったが、
個人的には、大変気の滅入る映画だった。。

(2007.04.24)
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パヒュームーある人殺しの物語 Perfume: The Story of a Murderer (2006 ドイツ、フランス、スペイン)

原作を読まず、テレビCMも知らず、予備知識なしで映画館に出かけた。

をを、前半はほんま、圧倒された。。
匂いというもの、汚泥、はらわた、血、せせらぎ、小石、シダ、
お白粉と鬘のむせかえるしつこさ、皮とタンニンの胸焼けする熱気、
すべてがエキサイティングでスリリングに迫ってくる。

評価がやや下がってしまったのは後半、きゅうにスペインホラー調になってから。
ごめんねぇ、わたしはスパニッシュホラー風味がどうもなじまない体質で、
おどろおどろしく盛り上げられると、引いてしまうんだ。

とはいえ、どろりとした獣脂に溶ける欲望、ぺたりぺたりと塗る手の淫らな感触、
湿った髪の束・・・ げに「香り」とは恐ろしきものなり。 

「愛」を香りというエッセンスに凝縮した男。
「ワインはわたしの血で、パンはわたしの肉体である」キリストの影絵のように
死から解放された彼は、すべてを人々に与える。

#ロケ地にバルセロナの旧市街地が使われている。中世の雰囲気をそのまま
残しているゴシック地区、もう一度行きたいなあ。


(2007.03.11)
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ラストキング・オブ・スコットランド The Last King of Scotland (2006 英)

この映画は結構封切りを待っていたんだよねぇ。

思えば2004年10月にジェイムズ・マカヴォイ君っていいなぁ〜って思ってから、
2005年の5月に、本作に出演するニュースを知り、ここまで足掛け3年(笑)。

やっとこうして、大画面でがんばってる姿を・・・母ちゃんは嬉しいよってな心境だ。

さて、ウガンダのアミン大統領といえば、子供の頃にニュースでよく流れていた名前だが、
ふと気づけば、名前を聞かなくなった。
正直いって、サッカーにハマルまでは、わたしにとってアフリカは遠い遠い場所で、
独裁や虐殺どころか、何もかもが遠い話だった。

アミンやリビアのカダフィ大佐といった、ニュースで取りざたされた名前も、
いつの間にか聞かなくなると忘れてしまい、「え?まだ生きてたの?」と思ったりする。

映画は、主役であるアミン演ずるフォレスト・ウィッテカーが、人の良い役を
やる時とは想像もつかない、迫力のカリスマ性を体現しているが、
彼及びアフリカを際立たせるのは、ジェームズ・マカヴォイ演じるニコラスである。

医学校を卒業したばかりの彼は、若く理想に燃えているが、無責任で愚かだ。
政治に意見を求められると、大物になったかのように権力に酔い興奮する。
不注意なセックスの結果にうろたえ、中絶させようと焦る。

薄っぺらな彼の姿は、リビングのテレビで遠い国のニュースを聞き流している私であり、
アフリカ、ウガンダ、アミンを扱う西洋社会、先進国社会である。

革命を礼賛し、武器を与え援助し、都合が悪くなってくると、途端にうろたえる西洋社会。

文字通り「吊るし上げ」の制裁を受けたニコラスの、救う価値もない命を、
ウガンダ人医師が自分の命とひきかえに救う。
ニコラスがこれから背負っていかなければいけないものは重い。

アミンは1971−79年が大統領在位だが、そのころわたしは何をしてただろう。
独裁や虐殺は彼に限った話でもないし、70年代に限った話でもない。


(2007.03.11)
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Jane Eyre (2006 英)


ヒースロー空港で買ったDVD。BBC製作。
全4話から成り、233分という見ごたえ十分なものである。

今までに映像化されたジェーン・エアはいくつも見たが、
これはイマドキ風でロマンティックな味付けが濃厚。
監督が女性だってことが、関係してるんじゃないかなぁ。

まず、ジェーンを演じた女優さん Ruth Wilson がはまってる。
82年生まれというから、24才か。
(原作の)18才といってもそれほど無理がない顔立ちで、
初々しくイノセントではあるが、頑なで強情な面もある。
ひっつめ髪をしているといかにもガバネスという感じなのに、
髪をほどくと、はっとする若やいだ艶がある。

わたしのなかのジェーンのイメージにこれほどピッタリの人はいなかった。

そして、ロチェスター卿を演じた Toby Stephens は、
原作のイメージからすると、ちょっとハンサムすぎるし、
ロマンチックすぎるんだけど、へへ、まぁ、いいじゃないですか(いいのか?)
エキセントリックな雰囲気はよく出ていたと思う。

彼は主に舞台で活躍している俳優で、両親はともに SirとDame の称号をもつ有名な俳優さんである。

ドラマは、ジェーンの子供時代をばっさりカットして、ジェーンとロチェスター様の
胸の奥の思いが燃え上がっていく様子をメインにした作りで、
美しい風景に切ない思い、、まじでハーレクイン的なんである。

ふたりが心を通わせてゆく時間をしっとりと描いているところはおおいに嬉しい。

だが、後半、ムーアハウスやセントジョンの部分から先は、、

どうしてこういう脚本にしたんだろう?
あの「ジェーン!ジェーン!」と呼ぶ声に何も答えないジェーン。

「いま行きます」「どちらにいらっしゃるのですか?」が無い!!

神秘と驚異の、魂の呼ぶ声が聞こえるという名シーンがないばかりか、
焼け落ちたソーンフィールドの館にたどり着いてからの展開も足早で落ち着かない。
とどめが

「わたしは妻が欲しいのだ!」 のセリフのあとに抱き合ってしまう。

えっ! 「あなたを最も愛する人をお選びなさい」「わたしは、わたしが最も愛する人を選ぶ」
これが無いなんて。。

そう、再会してからの描写が即物的で現代的、ロマンチックコメディに成り下がっている。

この「ジェーン・エア」は、最初に書いたようにイマドキでロマンチックバージョンであることを、
心得たうえで鑑賞する必要がある。
結局、原作の何をカットするか、人それぞれに思い入れのある箇所が違うため、
おおいに文句がでてしまう人もいるだろう。

(2007.02.26)

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