キャスリーン・コーベル  2005年5月すこし改訂
Eileen Dreyer の名前で発表した作品でもRITA,RTを受賞している。
HQではキャスリーン・コーベル名義で、SDを8冊、SIMを12冊発表している。
SIMの作品でRITAを4回、RTを2回受賞。
受賞作品が重なっていないので、SIMの6冊が受賞したことになるが、ひとつも
翻訳されていない。。これってほんま、残念すぎっ。。

長い事ERの看護婦だった経験から、彼女のロマンスは人の体と心の痛みを扱った物語が多い。
苦痛、悲しみ、絶望に対する深い洞察と共感、思いやり・・
痛みに満ちているんだけれどハートフル。脇役を含め登場人物の造形がよくて、
あらゆる場面に雰囲気があり、真剣で誠実で、しかも官能的な味わいも消えていない。
沈黙の間もよいし、知らぬ間にドラマにひきこまれる。

「A Rose for Maggie」ほどの作品は滅多にお目にかかれない。断言できるほど、
それくらい完成度の高い、心から信じられるドラマだ。
読み終わったときに、大人の男女の物語にほろほろと幸せな涙を流せる・・

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「Jake's Way」から10年以上経ち、ケンダル家の長女Genの物語が出た。
わたしは最初にGenのほうを読んで、あまりに内容の濃い世界に英語力の無さの悲しさから、
いまひとつのめりこめなかった。
今回Jakeの物語を読み、骨太のドラマ、多彩で生き生きした登場人物たちにすっかり魅了され、
再びGenの話を読み返してみた。すると、彼女の背負ってきたものの重さが以前よりも
くっきりと実感でき、幼い少女が突然の混乱に投げ込まれ、一家の母親代わりのしっかり者と
いう役割を果たしながら一方で無力な自分を恐れ、拒食症へと陥っていく心の痛みが
しみじみと伝わってきた。シリーズロマンスでありながら、ここまで充実した世界を描けるのか・・
恐ろしいほど感情の深い部分にまで物語は踏み込んでいて、揺さぶられるようである。

ときに人生は一人で背負うには重過ぎる重荷なんだが、ふたりで背負えばマシになる。
傷ついた者どおしが手を取り合う。
子供を失った親、親を失った子供、さまざまな苦悩へ作者は手を差し伸べている。。

※ただし、時間の流れに疑問がある。本の中ではせいぜい3年か4年しか経っていないのに、
Jakeたちに「Jake's Way」で登場しない娘が生まれている。Jakeの話のエピローグで
7才の息子と3歳の娘が登場するが、彼らとは異なる名前の生後5ヶ月の娘が登場するんである。
これは一体だれ?(笑)
カテゴリー 題名 過去 出版 ジャンル ヒロイン、ヒーローの名前 感想 一言
SIM-191 Worth Any Risk ヒーローは5年前に離婚 May-87 命を狙われるヒロイン 人質に3回もなるヒロイン  医者アナスタシア・フィッツェジェラルド(アビー 30)、 巡査マイケル・ヴィヴィアーノ(35?) 麻薬密売の捜査に巻き込まれたヒロインを守りぬくヒーロー、警官とは絶対に恋をしない!と心に誓ったのに、ヒーローの熱愛にほだされちゃった(ウフ)。ふたりの愛と信頼がとても素直でアツアツ。事件の進行、DEAとの軋轢もなかなか上手くまとまっている。  
SIM-276 Perchance to Dream ヒロインの夫は6年前に交通事故で死亡。 ヒーローの父親はアル中だった。 Feb-89 RITA 命を狙われるヒーロー 心理学者リンゼイ・マクドナフ(32?)、 特捜部ジェイソン・ミッチェル(35) 高所恐怖症が原因で、ヒーローはパートナーを救えなかった。山小屋にこもるヒーローを、カタキのように険悪な仲のヒロインが救いに行く。実はヒロインも過去の罪悪感と闘っている。 特捜部から情報が漏れている、誰が密告屋だ?ドラッグバイヤーの魔の手が二人に迫る・・・ 独特の詩的描写が冴えている。 うふ
SIM-309 The Ice Cream Man   Nov-89 RITA まだ      
SIM-396 A ROSE FOR MAGGIE ヒロインの夫はマギーが生まれた4日後に家を出てしまった Jan-91 RITA ダウン症の娘 編集者アリソン・ヘンレイ(26)、マギー(6ヶ月) 作家、大工、サックス奏者ジョー・バージェット とても真剣で心の奥底まで問いかける。人間はとても弱いけれど、愛の力は驚くほど人を強くしてくれる。ヒーローの愛の深さに涙。そしてこの優しいラストは、予想を超える。 うるる
D-421 君をひとりじめ ヒロインは2年前に離婚 Aug-91 生き方模索 画家リビー・マシューズ、 報道写真家デボン・ケーン セリフの上手いことと言ったら。読めばわかるが、彼女の資質はDじゃないねぇ。題材の生真面目さ、ふたりの関係の真剣さが良く出来てるんだけど、薄いデザイアのホットなお約束には、ちょっと無理があるんだよねぇ。  
D-474 貴族の館の恋物語 fine madness Sep-92 幽霊 ロマンティックコメディ 古い屋敷の修復家クイン・ラトリッジロンドン警視庁警部補イアン・マシューズ う〜ん、ま、幽霊屋敷とシンデレラ物語ってとこかなぁ〜・・
SIM-413 Jake's Way ヒロインは17才の時、鉱山事故で両親・兄を亡くす。  ヒーローは12才で父が死亡、17才で母が死亡 Jan-92 傷ヒーロー 小説家アマンダ・マーロウ、 牧場主ジェイク・ケンダル(30?) 心の弱点を衝くのが上手いのよ。思わず泣かされてしまうわ。人間描写が確かだから、ドラマの世界が生きている。秘密を抱えたヒーローの苦悩が生々しく伝わるよ〜。ユーモアを忘れずにがんばるヒロインも好きだわ。 表紙絵がホンマ好き!! うる
SIM-457 A Walk on the Wild Side ヒロイン6才のとき父(戦闘機パイロット)死亡。母あとを追うように死亡。 ヒーローは妻と乳児を失っている。 Nov-92 RT 愛することのリスク 命を狙われるヒーロー 弁護士ローレン・テイラー(28)、 DEA捜査官J・P・オニール、 裁判所からの逃亡はサスペンスフルで良かったが、事件の黒幕やら真相があっけない。ディテールは上手いし、二人のロマンスは悪くないんだけどねぇ。。変装が得意なヒーローの逸話が笑える。
SIM-571 Simple Gifts   Jan-94 命を狙われるヒロイン 傷ヒーロー 脚本家アマリリス・ジェーン・ケンダル(リー 23)、 刑事フランシス・ザビエル・アロイシウス・オコナー(ロック 33)ヴィヴィアーノ警部の部下 児童虐待事件に心ボロボロのヒーロー、ううう、彼自身の過去が可哀想なんだよねぇ。。穢れないヒロインの体当たりの明るさがヒーローを救う。 いつも夢見てるようなヒロインなんだけど、不思議と本質が見えるんだよね。  
SIM-602 A Soldier's Heart 20年以上前のベトナム野戦病院で瀕死のヒーローを叱咤した看護婦。  ヒロインの夫はPTSDで自殺している。ヒーローの妻は15年前に離婚。 Nov-94 RITA PTSDヒロイン 看護婦、B&B経営を目指すクレア・ヘンダーソン(43?)、 建築業アンソニー・リオダン(トニー 44) ベトナム体験を見つめなおして区切りをつけたい、ヒーローは忘れられない看護婦を探し出す。。ヒーローの訪問は、思い出したくなかった悪夢をヒロインに呼び覚ました・・ 恐ろしいほど真摯な物語。戦争体験を自分の中で昇華し、同時に子供に語り伝えてゆかねばならない・・ ロマンスというより見事な人間ドラマ!! うるる
D-705 その瞳が忘れられない 16で出産したヒロイン   正体を隠すヒーロー 濡れ衣ヒロイン 牧場管理人ダルシー・マッキャン(23)、 映画スターキャメロン・ロス(33) ぶすっ。コーベルはやっぱ、短いのは向いてないなぁ。牧場のトラブルの影に潜む陰謀ドラマがちょっと駆け足で消化不足。ドラマとしては良いんだけどロマンス的にはイマイチかもねぇ。  
SIM-1237 Some Men's Dreams ヒロインは6才で父が死亡、12才で母が死亡、一家の母親代わり。 ヒーローは妻を5年前に自動車事故で亡くす Aug-03 RT 愛を寄せ付けないヒーロー 拒食症 小児科医師ジュヌビエーブ・ケンダル(ジェイクの妹 ジェン28) 小児科医長ジャック・オニール 繊細で他人の気持ちに気付き、深く同情するヒロインとヒーローは、最初から惹かれあうが、事が終わった朝に、あまりにも鬼畜にヒーローは去ってゆく。カバカバ!!ところがヒーローの娘が拒食症であることにヒロインは気付き、、あぁ、胸から血が流れるような痛みに満ちている・・・ 最後のエピローグがジェイクの物語の最初と重なる映像である・・ うるる
Harpercollins A MAN TO DIE FOR (Eileen Dreyer) ヒロインの父は12才のとき死亡。 4年前に離婚。 Dec-91 RT RITA シリアルキラーサスペンス 傷ヒロイン ER看護婦Casey McDonough 殺人課刑事Jack Scanlon ロマンス色はあまり無し。 新任の産婦人科医をシリアルキラーではないか、と疑うヒロインと、限りなく怪しい産婦人科医の間に張りつめる緊張がリアルでものすごく怖い! 同時にヒロインの心の傷の物語でもある。刑事ヒーローはあまりにも司祭でちょっと出来過ぎかなぁ。 物凄くこわいっ
ヴィレッジブックス 見えざる報復者 (アイリーン・ドライアー) ヒロイン7才の時母親は自殺。 共同謀殺 戦うヒロイン スワット隊の医療隊員、ER看護婦、マギー・オブライエン(26) セントルイス市警の殺人課刑事ショーン・ディレイニー ヒロイン父はちょっと型通りで、意外と情けない。ユーモアセンスとリアルな描写と、ヒロインを支える思いが、読後感を明るくしてくれる。安心できる上手さだ。


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